第166話 情緒不安定な玄武ちゃん
遅れました。
◾アリス
先ほどまでの眠気はどこにいったのか、私は目が冴えていた。
――あーちゃん、同化に成功したわよ
すーちゃんの声がいつものように胸の中から聞こえてくる。けとその声はいつもより遥かに近く感じる。そう、すーちゃんが私と同化したからだ。
私の背中からは朱雀の焔の翼が生え、周りには大量の焔の槍が浮かんでいる。
真っ暗だった視界も、すーちゃんと同化したことにより元に戻っていた。
目の前にはレイピアを振りかぶった状態で、玄武岩色の瞳を真ん丸にしている玄武がいた。
「まさか! 同化した!?」
「ええ、そのまさかよ」
私でもすーちゃんでもない――私たちが同化した存在が答え、焔の槍を手に取り、玄武のレイピアを弾き飛ばす。
「っ!」
玄武は悔しそうに歯噛みし、
「あーめんどくさいめんどくさいめんどくさいっ! そもそもどうしてあたしの邪魔をするの! 酷いわっ!」
目に涙を溜めながら叫んだ。やっぱり玄武、あなたは情緒が不安定すぎるわ。
「酷くないわよ。だってあなたは害獣なんだから」
「ぅうぇん! 害獣なんて酷いわっ! そしたら朱雀! あんたも害獣よ!」
玄武はかわいくほっぺたを膨らませ、私を指さしてわーわー喚いた。
「いいえ。私はあなたとは違う。私はアリスのペットだもの。ペットは害獣じゃないわ」
「うぅぅ……人間風情にペットにされるなんて! あんたにはプライドがないのか!」
「プライド? ババアみたいなプライドはとっくに捨てたわ」
「バ、ババア!? あたしがババアってこと? 酷いよぅ」
「ええ、そうよ。あんたはババア」
幼女の姿をした推定年齢数百歳のババアにそう言う幼女の姿をした推定年齢数百歳のババア。
「たしかに人間は私たちよりも低次元の存在よ。だからといって下等な存在と認識するのはあまりにも古すぎる考え方だわ。もう人間と戦う時代は終わり。今は人間と手を取り合う時代なの」
「そんなの……っ! そんなの変だわ!」
「変なのはそっちよ! それともガイアに消されたいの?」
「ガイア? どうしてあいつの名前が……」
「ガイアはこの地球のルールそのもの。そのガイアが私たち新神と現人類が協力することを望んでいる。それに私も賛同したの」
「……協力してどうなるの?」
「私もそれを尋ねたんだけど、禁則事項って言われたわ」
「なんなのよそれっ! ガイアとあたしたちは敵! 敵の言うことなんて聞くものか! それに人類はあたしたちが作り出したもの。あたしたちがどうしようとあたしたちの勝手でしょ!」
「あなたがそう思うのは勝手よ。けどあなたがガイアに消されて、四神のバランスが崩れて他の2人まで実体化されちゃ困る。残念だけどあなたには八次元世界に帰ってもらうわ」
そう言って私は巨大な焔の玉を形成した。
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