第156話 地球の意思たるガイア
◾隆臣
少女のその言葉が、しばらくの静寂を生んだ。
ガイア? 地球? 何を言っているんだこの子は。イタイ子なのか? そう思わざるを得なかった。
しかし、ガイアと名乗った少女は、
「何を不思議そうな顔をしておる。我はこの地球の意思そのものなのじゃぞ? 地球の意思が具現化し、我という星の意思――意思たる星が生まれたのじゃ」
ガイアは薄っぺらな胸をめいっぱいに張って言った。とっても元気いっぱいだね。かわいい。
しかし、
「けほんけほんっ! むぅ……最近体調が優れなくての。咳き込むのじゃ。他の意思たる星々たちはみんな元気なのに、我だけはこの有様じゃ……」
ちいさなおててをちいさなおくちに当てて、ガイアは咳をした。
とはいえガイアの言うことが信じられない俺たち。
「そんなバカげた話、絶対嘘に決まってますわ! あなたが地球だっていう証拠はありますの?」
と、エーリン。
たしかにガイア理論というものは存在する。それは地球を生命体と見なす仮説であるが、それを裏付ける決定的証拠はないだろう。
と思っていた俺たちだったが、
「信じてくれないのか? ならば仕方がない」
ガイアは口を尖らせ、
「あの天空樹を見よ」
窓から見えるスカイツリーを指さす。その瞬間、空からスカイツリーに向けて一筋の稲妻が走った。少し遅れてゴロゴロという音が聞こえてくる。
今は晴れている。にも関わらず雷が落ちた。しかもガイアが俺たちにスカイツリーを見るよう促した瞬間。偶然なのか? それとも本当に?
「そ、それがあなたが地球だって証拠にはなりません! 魔法や能力かもしれませんもの!」
「むぅ……それを言われると弱ってしまう。それならばアレをやるのもやぶさかでないのぅ。空を見よ」
続いてガイアは穴の空いた天井を指さす。
すると、
「こ、これは……」
無数の流れ星が煌めいていた。昼間にも関わらずはっきりと。
「これで信じてくれたかの? 意思たる星々にとって、この程度のことはたやすいことじゃ」
ガイアはドヤ顔で腰に手を当て胸を張った。
するとナディアは、
「魔法や能力にしては規模が破格すぎる。概念的ではないにせよ、流星群を発生させる――つまり大量の隕石落とすなんて大魔法に匹敵するぞ。
そもそも魔法は地球外に作用することはできない。時間を止めるにしても、宇宙全体の時間を止めているわけではない。局地的に――せいぜい地球内の時間を止めているに過ぎない。上級感覚やガイスト能力でも同じこと。その効果が及ぶ範囲は全て地球内に限られている。
それはなぜか。ガイア理論から考えると、魔法や能力は人間から生まれたもので、その人間はガイアから生まれた。人間には英智があるが、それはあくまでガイアから与えられたもの。故に魔法や能力は地球の範疇でのみしか作用されない。
魔法や能力で天候を操ることは容易い。しかし地球の範囲の解釈にもよるだろうが、宇宙の何かに作用することができるのは意思たる星々か神霊程度だろう。だからこいつは正真正銘地球なんだ」
先ほどまでとは違って冷静にそう言った。
To be continued!⇒
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