第153話 ジャック・ザ・ミキサーと魔剣の蔵
これでも休載中なんです……
◾魔剣の蔵
いやー、アキバさいっこ〜ッ! ここだよここ! ここに来たかったんだよ俺は!
「あんたが魔剣の蔵か」
「ん? そうだけど?」
メイドカフェから出て、次なる店に向かおうとした俺の足を、とある日本人の男の声が止めた。
俺の冠名を知っている……ということはそこそここっち方面に詳しいやつだな。
声のした方向を向くと、そこにはパーカーを目深に被った青年が立っていた。
「君は……誰かな?」
俺は尋ねた瞬間、ある違和感を覚えた。それは青年の足下――地面の方から感じる。
うーん……ああなるほど。そういうことか。
「君がジャック・ザ・ミキサー君か」
「ああ」
「カルト教団赤の剣の幹部。本名は月島恭平。たしかアメリカ人の父と日本人の母のハーフだよね。そしてアメリカの第二次スターゲートプロジェクトにも現在進行形で招待されている」
「本名は好きじゃない。てかそれも本名じゃない。親も知らない」
「そうなんだ」
「ああ。まあスターゲートプロジェクトについては本当だが」
青年はフードを手で引っ張り下げて、さらに深く被りながら言った。
この青年の略歴を法院で聞かされたけど、散々な人生だよね。同情するよ。金はやらんけど。
それと超強力なガイストの宿主なんだって。人を一瞬でミンチにする程度の惨たらしい能力を持ったガイストの。おっそろしい! 俺には関係ないんだけど。
「君は俺に何の用なのかな?」
「お願いがあって来た」
「お願いかァ。聞こうではないか」
俺は腰に手を当てる。
「俺には俺の任務がある。邪魔だけはするな」
「ああ、そういうことね。もちろん邪魔なんてするつもりはない」
「あんたがそこに存在するだけで、周りに害が降り注ぐ。そのことを自覚しろ」
「ハハ。困ったなぁ」
俺は笑う。
「俺たち赤の剣、反ブラド過激派、そして穏健派のあんた。この3つはそれぞれ干渉しない。そういうお約束でどうだ?」
「あの鳥仮面の嬢ちゃんにはもう話は付けたのかい?」
「ああ。つつがなく」
「ふーん。じゃあオッケー。それでいこう」
干渉しないお約束。いいだろう。
「ん」
「ん?」
「ん!」
「なんだいその小指は」
「指切りだ。もし約束を破ったら針を千本飲ませるんだ」
「へー、さっすが日本。おもしろい文化だね。指を切断して、約束破ったらさらに針を飲ませるなんて……些か恐ろしすぎるがね」
「指は切断しねーよ。相手の小指と絡ませるだけだ」
「ほーん」
青年は左手の小指を差し出している。なので俺も大量のグッズを地面に下ろし、左手の小指を差し出す。
青年は小指どうしを絡めて、
「指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます。指切った」
と、まるで子どものような無邪気な声音で歌う。
そしてすぐに低い声に戻り、
「それじゃあ」
右手をパーカーのポケットにしまい、左手で手を振りながら去って行ってしまった。
「へんなの」
俺はグッズを回収し、ホテルへ向かった。
To be continued!⇒
休載中なのに2話も投稿してしまった……。
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