第146話 ジャック・ザ・リッパーの再来
本編、進みます
◾隆臣
それから数日が経っても、爺さん目白が襲撃されることはなかった。どうやら魔剣の蔵はかなりの気分屋で、日時を変更した可能性が高いと魔女隊隊長のアイラ・ハンプトン=ローズから報告されたとナディアが言っていた。
とはいえ、またいつ気が変わって日本に襲来してくるかわからないので、気が抜けない日々が続く。
さらに2日経ったある日の夕方。ここ数日間息の根を潜めていたミンチ事件が再び発生した。
今回の被害者は8歳と10歳の女児2人で、これまでと同様、全身をミンチにされた状態で発見されたという。
現場のミンチの山には、月島恭平が撮影したと思われる被害者の写真が刺さっており、そこには恐怖に顔を歪めた2人の少女が写っていた。
その日の夕方。月島から警視長官宛に手紙が届いた。
以下がその内容だ。
――親愛なる警視長官へ。警察やMMAは俺をもう捕まえられると言っているようだが、偉そうに捜査をしているだけで、何もわかっていないから笑けてくる。外部の関係ない人間に頼って、俺の正体を特定したお前たちの無能っぷりは、ほんとに笑えたよ。俺は人間が嫌いだ。他人も自分も。特に何も考えずに日々を浪費する子どもが大嫌いだ。だから捕まるまでミンチにする予定だ。今日の仕事は本当に大仕事だった。まずは片方をミンチにして、もう片方にそれを食べさせて、どれくらいの量で胃が破裂するかを観察したんだからな。ま、そいつも例外なくミンチにしたけど。警察やMMAはどのように俺を捕まえるかな。俺はこの仕事が大好きだ。またすぐやる。近々また俺の楽しいゲームを耳にするだろう。前の仕事のとき、真っ赤な液体をビール瓶に入れて保存しておいた。それで手紙を書こうと思ったが、ノリのように固まってしまって使い物にならなかった。赤いインクで我慢してくれ。次の仕事からは12歳以下の幼女の体の一部をミンチにせずに切り落として、警視庁にジョークとして贈ろうと思う。もう少し仕事をするまでこの手紙は表には出さないでくれ。俺の相棒はたくさんの人をミンチにしてきた。チャンスがあれば今夜にでも仕事に取り掛かりたいよ。親愛なる、ジャック・ザ・ミキサーより。追伸:手に赤いインクがついたまま手紙を投函することになってしまった。まだ取れていない。副業を思い出して憂鬱になる――
このサイコパスな手紙は報道機関にも公表され、世界中にミンチ事件が知れ渡った。
欧米では手紙の文面や猟奇的殺人方法から、月島を日本のジャック・ザ・リッパーと呼称している。
月島は戸籍上20年以上前に死んだとされており、現在は有明武人という名前で生活している。
月島……有明武人は東京大学医学部を卒業し、その後は東大医学部病院で研修医を務め、素早く医師になったエリート中のエリートで、病院からだけでなく、患者からの信頼もかなり厚かったようで、数年前には高難度の手術を幾度となく成功させ、若きゴッドハンドと呼ばれるまでになった。
普段の様子は至って普通で、連続猟奇殺人をするような男には見えなかった、と病院側は供述している。
この胸クソ事件……きっとまだまだ被害者が増え、歴史上最悪の事件になるだろう。
これは他人事じゃない。夜、親と一緒にいたはずの子どもがどういうわけか連れ去られ、殺害された。
つまり誰でも被害者になりうるのだ。そう、凛だって例外じゃない。実際にノエル戦では凛は誘拐されているし、凛はちょっとした有名人だ。十分被害者にはなりうる。
相変わらず怖い。凛がミンチにされてしまうのではないかという恐怖に押しつぶされそうだよ。
けど俺は以前決めたんだ。何があっても凛を守るって。もし月島が凛に手を出そうとしたら、逆にミンチにしてあの世に送ってやるぜ。
To be continued!⇒
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