第145話 ゼロと楽園計画
今回は2話分!
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父の友人であるジョン・タイター博士のところに行き、わたしはニューエデン計画について話した。すると、「ああ、そのことはすでに20年前に聞いた。わたしはこの20年間、君のニューエデン計画のために研究をしてきた。だから心配はいらない」と、冷たく言われた。
タイムトラベラーならではの返答に、わたしは少し安心した。彼はずっと前からニューエデン計画を始動していたのだから、かなり早い段階でニューエデンをつくることができるかもしれない。
ニューエデンの開発に必要なことはたった1つ。ゼロポイントへの到達及びアカシックレコードの解読である。
タイター博士や故スティーブン・ホーキング博士曰く、ゼロポイントは〝全て〟が存在する場所なんだとか。
ゼロポイントはどこかにあってどこにもなく、始まりであり終わりであると、ジョン・タイター博士は言っていた。意味がわからない。
そしてアカシックレコードはゼロポイントのうち〝全ての記憶〟が保存されている場所であり、過去から未来まで、そして全ての世界線の記憶が保存されているという。
「人類はゼロポイントへ到達することはできない。ゼロポイントは神の領域である」と述べる学者が多数の中、タイター氏は全世界に向けて、「ならば神を作ればいい」と言った。
あまりにもバカげた話に、学者のみならず一般人までもが失笑した。しかし数々のタイムトラベルをしてきた彼は、特異点から帰ってきた唯一の人間だ。きっと何か方法があるのだろう。
特異点とは人類が到達できるゼロポイントに最も近い地点で、 アカシックレコードの一部が詰まっているんだとか。
アカシックレコードは、その場にいるだけであらゆる情報が入り込んできて、長くいると様々な真実や莫大な情報量に発狂してしまうらしい。タイムマシンのシステムを使い、これまで何百人もの被験者が特異点を目指した。そして、そんな特異点の情報を発狂することなく持ち帰ってきたの唯一の人がタイター氏なのだ。
そしてタイター氏率いるCERNにより、人工神の研究や開発が行われた。だが研究内容やその結果は全て非公開で、お蔵入りになったと世間で囁かれていた。
しかし半年前、タイター氏率いるCERNは人工天使の開発に成功した。天使とはあらゆるエーテルが宿った亜神のことで、神の一部ともいわれている。その人工天使の名前はゼロ。幼い少女のような見た目をしており、とても神性は感じられない。
ある者は、タイター氏の特異点の記憶を刷り込まれただけの女の子だと言った。
しかしゼロはあらゆる魔法や能力を超越する力を持っていた。常時アカシックレコードにアクセスする能力である。
夢や瞑想により、全ての人間はアカシックレコードに到達することはできる。しかし、人間のエーテルでは宇宙ネットワークにはほんの短時間しかアクセスすることができない。
神性が高い霊や天使はそれよりも長い時間アカシックレコードにアクセスすることができる。
しかし、人間の許容エーテル量を超えると、精神が自己防衛のためにたちまちアカシックレコード離脱する。
だがCERNの人工天使は常時アカシックレコードにアクセスすることができる。
見た目はかなりかわいらしいゼロだが、その瞳だけは虚ろだ。勝手に改造された上に、永遠とアカシックレコードに結合させられ、〝全て〟を受け入れさせられる。残酷だ。こんなにも酷いことはない。
でもニューエデンの開発にはゼロの犠牲が必要なんだ。わたしはそう割り切り、彼女をモノとして見るようになった。
ゼロは何十時間も何百時間も何千時間も機械に繋がれ、アカシックレコードの情報を中継させられていた。ゼロには最低限の栄養だけが管で与えられ、眠る暇などない。
大型タイムマシン内で研究が行われているため、アカシックレコードの情報収集開始から3ヶ月ほどが経っても、地上ではたった3日しか経っていなかった。
わたしは途中でタイムマシンから離脱したが、地上で120日ほどが経過したある日、どっぷり老け込んだタイター氏率いる研究者と、120日前とまったく見た目の変わっていないゼロが、ニューヨーク近郊の山奥で発見された。ゼロとタイター氏以外は全員死んでいることがわかった。
死因は発狂による自害。そう、アカシックレコードの情報量や解明されたあらゆる真実により発狂したのだ。人工天使であるゼロや、その特異点からの帰還者であるタイター氏以外は1人残らず。
To be continued!⇒
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