第127話 かっこよく登場!
◾隆臣
やばいやばいやばい! マジでやばいぞッ!
エースは第九感――分割高速演算の分割数を最大まで上げて処理していたせいで、生理機能が全停止し、失禁してしまったのだ。
おしっこをがまんしていたのか、かなりの量が足を伝って地面を濡らしている。靴下も靴もびしょ濡れだ。
エースの解析を妨げないようにと、近くには俺以外いないが、それでも周りには人がたくさんいる。
基本的にポジティブなエースだが、 9歳の女の子の精神では耐えられないことだってあるだろう。もし今の状況が他人にバレたとエースが知ったら、きっとエースは立ち直れなくなる。
エースは気を失っているので、霊魂化して俺の中に戻ることもできない。どうすればいい! 考えろ! 考えるんだ俺! エースを守る方法をッ!
するとそのとき、
「あっれ〜じゃあこの辺かなぁ?」
「そっちはダメですよ田島さん! 今ガイストの女の子が残滓粒子解析をしているんです! 田島さんが行ったら正確な解析ができなくなるでしょう!」
2人の男の声がこちらに向かってきた。
こうなったらもう逃げるしかない! 俺はそう思い至り、エースをお姫様抱っこして路地を走った。とにかく誰にも見られず誰も来ないようなところへ逃げなくては!
しかし、路地の向こう側からも何人かの捜査員がこちらに向かって歩いてきている。
クソッ! 挟まれた! 本格的にまずい状況だ。さあ俺、この危機的状況をどう切り抜けるッ!
そうだ。あれを使おう! 残滓記憶喚起とかいうあれを!
本来は第七感や第八感の覚醒者が、能力発動時の記憶を呼び起こして、そのときのほんの10分の1程度の身体能力を得るという代物だが、 俺はエースのガイスト能力が付与されたときの記憶を辿り、残滓記憶喚起を行おうとする。
体が軽くてあらゆる筋肉が活性化されたあの感覚……久々だが思い出してきたぞ。でもあともう少しだけ足りない。
「ちょ待ってくださいよ田島さん!」
「いやでもよぉ」
男たちの声がさらに近くに聞こえてきた。あともう少しで完全に思い出せそうなのに、焦りで感覚が弱まってきた。集中しろ俺! エースを守れるのは俺しかいないんだぞッ!
「田島さんそこ水溜まり!」
「ん? おっと危ない」
「最近晴れてたのに……誰かが水撒いたんですかね?」
よし来た! これなら屋上までジャンプできる!
俺は足に力を込め、思いっきり跳躍した。
しかし、クソッ! 全然ジャンプ力変わらねぇじゃねーか! 残滓記憶喚起に失敗してしまった。絶体絶命だ。このままではエースが心に深い傷を追ってしまう。それだけはなんとかして避けなければ。
前方からはMMAの捜査員が、後方からはS1Sのバッジをつけた警視庁捜査一課の刑事が迫ってくる。
「はぁ〜やれやれだわ」
聞いたことのある声とフレーズが聞こえてきた。
周りを見渡すが、刑事とMMAの捜査員以外近くには誰もいなかった。
しかしぽかんと頭に何かが当たった。
その瞬間、俺の目の前にとある少女が現れた。ロザリオ事件で知り合い、何度も命を救ってもらったかの美少女――特級の魔女ナディア・イェルヴォリーノその人だ。
To be continued!⇒
ご閲覧ありがとうございます!




