第125話 捜査開始! ミンチ事件現場犯人を特定せよ!
◾隆臣
事件現場は台東区浅草2丁目27番地。花やしきや浅草寺にほど近いこの場所で、残虐なミンチ殺人事件は発生した。
第一発見者の新聞配達員曰く、早朝路地を行って朝刊を届けていると、赤い水溜まりの中に大量の挽肉があり、そこに無数のハエやゴキブリがたかっているのを目撃したという。
その新聞配達員は正気を失いかけて吐いたそうだが、通りかかった第二発見者である学生が警察に通報したらしい。
警察とMMAが現場に駆けつけたが、遺体はミンチにされているため身元を特定することができていない。
そして最初の事件発生から1ヶ月以上経ったにも関わらず、未だに犯人の手がかりはほぼゼロ。
その原因として考えられるのは、ベルリンの魔力源の復活により空気中の魔力濃度が上昇し、測定機諸々が効かなくなっているから、というものだ。現在調整中らしいが、まだ時間がかかるという。
しかし犯人はそんな都合に合わせてくれない。
だからエースの能力が必要なのだ。エースの能力さえあれば、測定機なしで犯人の魔力粒子の構造を記憶することができる。
日本では、生後2ヶ月で行われる予防接種の際、乳児から血液を採取する。そのときに体内由来の魔力粒子の素粒子構成などが個人データとして魔法庁に保存される。
なので、エースが記憶した魔力粒子の構造と国のデータとを照合すれば、犯人を特定することができるのた。
ミンチ事件解決の要はエースだ。エースはMMAからかなり期待されている。
しかし現場に近づくにつれて、エースはプレッシャーにどんどん押しつぶされていくのが見てわかる。
さっきまでは俺のことを笑顔で慰めてくれていたのに、今は緊張で呼吸が少し荒くなっている。今度は俺が慰める番だな。
俺はエースのもちもちほっぺをぷにぷにしながら、
「大丈夫だ。エースはいつも通りののことをするだけでいい。緊張するなんてらしくないぞ」
するとエースは俺の頬をにょーんと引っ張り、
「私、こんなにたくさんの人に期待される初めてだから……どうしても頑張んなきゃってなっちゃう。でもそうだよね。緊張なんて私らしくよねっ!」
そう言ってちょっとぎこちなく笑ってみせた。
◾隆臣
現場に到着した。
俺とエースの他にはアリスと代々木小隊長を含め、数人のMMA隊員がおり、刑事や探偵の姿も見える。
ミンチは取り除かれているが、アスファルトは未だに生々しく染っている。
エースはそれを見て強く目を瞑って俺の腰に抱きついてきた。
俺はエースの頭に手を置いて、
「頼んだ」
とだけ言う。
本当はこんなことさせたくない。こんな気持ち悪い場所にいさせたくない。けどエースの双眼に助けられる人はたくさんいる。がんばれエース。この事件が解決したら何でも好きなもの買ってやるからな。
「……うん」
エースは抱きついたまま頷いて、第九感を発動させた。
まぶたが開かれると、夜空色だった瞳が青空色に変わっている。エースはその瞳で赤く染ったアスファルトをじっと見つめた。
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