第122話 神楽詩葉
きのうはすみませんでしたっ!
◾隆臣
上野駅交番にて、俺は超人見知りなミレイの代わりにお巡りさんにカプセルの情報を伝え、落し物として届いていないか尋ねてみた。
どうやらこの交番にはカプセルらしき落し物は届けられていないらしい。
しかし親切にもお巡りさんは近くの交番にもかけあってくれるみたいだ。ありがたい。ミレイも喜んでた。
放課後もう一度立ち寄って、みんなで報告を受けることになっている。
◾隆臣
放課後、俺たちは再び上野駅交番へ訪れ、報告を受けた。
しかし上野の交番のどこにもミレイの探すカプセルはなかったという。
「……」
ミレイは俯いてしまった。かなり落ち込んでいる様子だ。
「大丈夫だよミレイちゃん! わたしがついてるからねっ!」
凛はまるで妹を慰める姉のように、あるいは母のようにミレイの頭をなでなでした。
ミレイは凛に抱きつき、小さく頷く。凛もミレイのことをぎゅっと抱きしめる。
そのときのミレイは、目を瞑って必死に涙をこらえているように見えた。
ミレイは泣き虫だな。カプセルにたどり着く方法が完全に途絶えたわけじゃないのに。
小さいからだけでなく、こういうところにも擁護心をくすぐられるんだよな。俺は。
俺もぎゅーっしてなでなでしたいけど、ミレイは先着1名様限りだから、今回は凛に譲ろう。
そんなことを思っていると
「あのー、すみません」
と、一度だけ聞いたことのある声が聞こえてきた。
交番の入口の方を見てみると、そこにはごく一般的なセーラー服に身を包んだ中学生くらいの少女が立っていた。ごく一般的とは言っても、この子にはとてもよく似合っている。というか顔がかわいいから何着ても似合うんだろうけどな。
つややかな黒髪はもみあげだけ伸ばしており、その髪型もまたかわいらしい。
この子は俺たちがミレイを追いかけていたときに偶然出会った女の子だ。
その子は俺たちの顔を一通り見て、
「この前はどうもありがとうございました」
と、丁寧にあいさつしてきた。
「ああ、あのときはこいつが迷惑かけてすまなかったな。今は反省しているみたいだ」
俺はミレイを親指で指さして言い、
「ちゃんと面と向かって謝っとけ」
と、ミレイの頭の上に手を置く。
ミレイは俯いたままちらっとだけ少女のことを見たが、すぐに怯えるように自分より小さな凛の背後に隠れた。臆病だなぁこいつは。
しかし、
「ミレイちゃん、悪いことをしたらちゃんと謝らなきゃダメですよっ!」
と、凛に指を立てて叱られると、
「(あの……この前は…………ご、ごめ、んなさい)」
呟くような声だったが、ちゃんと謝った。凛にだけは懐いんでんだな。凛より歳上なのに懐くって表現は変かもしれないけど。
「いえいえ、お気になさらないでください!」
少女は首をぶんぶん振った。それに伴って触覚もみあげもひらひらと靡いた。風鈴の短冊のように。
「よくできましたっ! ミレイちゃん!」
凛はミレイの頭をまたなでなで。ミレイはうれしそうにほほえむ。
するとお巡りさんは、
「おお詩葉ちゃん、どうしたのかな?」
と、少女に言った。
どうやら知り合いみたいだ。
それとこの子の名前は詩葉というのか。かわいい名前だな。
「今日は落し物を届けに来たんです」
詩葉はそう言ってバックからあるものを取り出した。
「それはっ!」
ミレイは今までで一番大きい声を上げた。
その理由は明白だ。今詩葉が手に持つそれは、きれいな蛍光水色の液体の入った筒型の容器……すなわちミレイの探していたカプセルだからだ。
To be continued!⇒
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