第121話 女の子のためなら
◾隆臣
「1週間前って! そんなのもうとっくに……」
「そんなことはわかっている。だが探さなければならないんだ。でないと……でないと!」
ミレイは今にも泣き出しそうな顔を俺に向けてきた。ダメだこりゃ。とことん付き合ってやらないと俺の方が気がすまなくなっちまった。女の子を泣かせるわけにはいかないからな。
「大事なものなんだろ? 1週間何してたんだよ」
「個人情報がゆえに秘密……ぐすん」
「ったく……。追求はしないけどさ。で、交番は行ったのか?」
「わたしは人見知りがゆえに……行けていない」
ミレイは俺たちにまた背中を向けた。
「やれやれ……」
俺はミレイに近寄り、キューティクルな灰髪の上から頭をなでなで。シャンプーのいい匂いがする。甘くて爽やかな……俺のすごい好きな匂いだ。
「ほんとに困ったやつだなお前。でも大丈夫だ。俺たちがなんとかしてやる。だから心配すんな。笑顔でいてくれ。それが一番かわいいんだから」
どうしてだろう。俺はミレイを抱き寄せた状態で頭をなでていた。その上にこんなクサイセリフまで吐いて。ほんとにどうしたんだろ俺。
すると、
「ぅう……うぇえええん!」
ミレイがいきなり号泣しだしたぞ! 人前だというのに、涙をぽろぽろ流して。
「お、おい! 泣くな」
「……わたしは強い子だから! 泣かない! 泣いてなんかない!」
こんな泣きっ面でよく強がれるな。いつかの緋鞠を見ている気分だぜ。
そう言えばミレイと緋鞠は同い年だよな。けどここまで違うもんかね? ミレイはなんだろ……子どもっぽすぎる。この子の親の顔が見てみたいぜ。まったく世話が焼ける。
腕時計を見ると、朝のホームルームまであと30分程度あった。
「よし、交番に行くぞ」
「ほぇ?」
俺の言葉にミレイは間抜けた声をあげた。
「みんな行くぞ。早くしないと遅刻しちまう」
「はーいっ」
「れっつごー!」
俺に続いて、凛とエースは元気よくそう言ってついてきた。
ぽかんとしているミレイに対してジョーカーは、
「ほら行くわよ。押してくれるかしら?」
と。
「う、うん!」
ミレイは満面の笑顔になり、ジョーカーの車イスを押してついてきた。
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