第120話 カプセル
◾隆臣
新橋駅構内。俺、エース、ジョーカーはトレイの前で流れる人々を眺めていた。誰もが忙しなく足を動かしている。俺がもし宇宙人なら、どうして地球人はこんなにも急いでいるのか? と、尋ねずにはいられないだろう。
あの後ミレイを電車の外へ連れ出し、今は凛がトイレで様子を見てくれている。
かなり気持ち悪そうな顔していたが、大丈夫だろうか。かなり心配だ。俺が女なら様子を見に行きたいレベルで。
電車酔いか? それとも人で酔ったのか? いずれにせよ電車は使えなさそうだな。
しばらくすると、凛とミレイが女子トイレから出てきた。
「まだ具合が悪いみたいです」
ミレイに肩を貸す凛が言った。
「そっか」
「……」
ミレイに敵対心をむけていたエースとジョーカーも心配そうにしている。2人は本当はやさしいからな。嫌っているようで実はそうでもないんだよ。
俺はさっき自販でかったミネラルウォーターをキャップを外してミレイに渡す。
「あぅ……」
ミレイはそれを受け取り、こくこく飲んだ。
「ぷはぁ」
するとさっきよりも若干顔色がよくなった。
ミレイは凛の肩を借りるのをやめ、壁に寄りかかった。
「気分はどうだ? 大丈夫そうか?」
俺がミレイの近くに行って話しかけると、
「だ、だいじょばない……。吐いた」
ミレイは左手で前髪を整え、右手の甲で口元を隠した。生意気なくせにいっちょ前にかわいい。
「タクシーも厳しいか?」
「タクシーくらいなら、大丈夫だ……と思う」
腕時計を確認すると、8時ちょっと過ぎだった。ミレイがアレだから電車に乗るわけにはいかないし、バスに乗るにしてもここから上野まで歩くにしても遅刻は免れない。やむなしだな。
◾隆臣
ミレイ、凛、俺(エースとジョーカーが中にいる)はタクシーに乗って上野まで向かった。
4つの窓全てを全開にしてもらった上にミレイはぎゅーっと目を瞑っていたので、具合が悪化することはなかった。
タクシーの運転手に感謝をしつつキャッシュレス決済を済ませ、ようやく上野に到着した。
エースは実体化してジョーカーの車イスを複製し、ジョーカーも実体化してそれに座った。
「ありがとエース」
「どういたしましてっ!」
エースは親指を立ててジョーカーににっこりほほえんだ。
ミレイの方はまたミネラルウォーターをごくごく喉に通していた。
「まだ気持ち悪いのか?」
「少しだけな。でも大丈夫だ。カプセルを探そう」
ミレイはキャップを閉めてそう言った。
「ところで質問なんだが。そのカプセルとやらはどんな見た目をしているんだ? 形とか色とか大きさとか。いつ失くしたかとかも教えてくれ」
「わかった。カプセルはな、細い缶ジュースくらいの太さで、中に蛍光水色の液体が入っているんだ。ハザードシンボルとMPCのステッカーが表面に貼られている」
「何なんだそれ」
「それ以外に何も教えることはない」
「使用用途は?」
「秘密。それを聞いたところで発見する確率が上がるわけじゃないだろ」
生意気だなぁほんと。かわいさに免じて許してやるけどさ。
「まあそうだよな。おっけわかった。じゃあみんなで学園までの道のりで探してみよう」
「うん!」
「わかりました! がんばってミレイちゃんの探し物を見つけましょう!」
「微力だけど協力するわ」
俺の言葉にエース、凛、ジョーカーはそれぞれそう答えてくれた。やっぱりエースとジョーカーも結局は力を貸してくれるんだ。ほんとやさしいよな。
「あといつ失くしたかだが……実は1週間前なんだ」
『え?』
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