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第115話 第一小隊長代々木響

きのうはすいませんでした!

◾隆臣


 アリスに20分くらいレクチャーをしてもらい、エースはようやくP320を制御できるレベルまでになった。


 ――パァン! パァーン!


 しかし、撃ち出された銃弾は的を通り過ぎていく。


「あぅ〜手が痛いよぅ」


 エースはちゃんとセフティをかけてから、涙目で俺を見上げてきた。かわいいなぁもう。なでなでしたい。


「大丈夫か? 痛いの痛いの飛んでけー!」


 俺はエースの手をやさしく取り、はげましてあげる。

 エースの手はすっごく小さくて、俺の第二関節くらいまでしかない。加えて指もかなり細いので、強く握ったら骨が折れてしまいそうだ。


「ありがとう隆臣。私、鉄砲苦手かも」


「みたいだな」


 全然反動を制御できてないし、10メートルの大的なのに豪快に外していた。


「まだまだ人前では撃たせられないわね。危険すぎるわ」


「うぅ」


 エースはうつむいてしまった。


「大丈夫大丈夫。俺が撃てるんだから問題ない」


 俺の手は止まらなかった。エースの頭をやさしくなでなでしてしまっていた。

 かわいい女の子が落ち込んでいたら、どうしてもなでなでしてしまうのだ。

 でもエースの顔がほころんだ。よかった。俺はエースの悲しんでいる顔は見たくないんだ。こんなことに気負わず、常に笑顔でいて欲しい。


「私の能力はとっても変だから、サポートしかできない。いつも隆臣に守ってもらってばっかりだから、自己防衛くらいはできるようになりたいんだよ。もっと隆臣の役に立ちたいんだよっ!」


 エースはそんなことを思っていたのか。

 たしかにエースの能力は明らかにサポート系だ。他のガイストに比べたらかなり珍しい。

 だからロザリオ事件ではガイストであるエースではなく、ガイスト使いである俺が主に戦っていた。

 でもそういう関係が俺とエースだから、どうとも思ってなかった。エースはこのことを気にしていたのか?


「だからもっと鉄砲練習させて?」


 エースの夜空色の瞳は輝いていた。まるで夜空に煌めく星のように。

 エースは本気なんだ。俺のために本気で強くなろうとしているんだ。


「エース……」


 アリスに目をやると、アリスは大きく頷いてくれた。


「わかった。一緒に練習しよう」


「ほんと!? やったーありがとう隆臣っ」


 エースはP320をテーブルに置いてから俺に抱きついてきた。エースの顔の高さはちょうど俺のみぞおちくらいだ。


「私、がんばるよ!」


 そしてそのまま俺のことを見上げてくる。か、かわいすぎる! ぎゅーってだっこしたい!


「お、おう! 一緒にがんばろうぜ」


 俺は親指と人差し指でエースのほっぺたを両側からぷにり、桜色のちいさなくちびるをすぼめさせた。ほんとにかわいい顔してるよな。


「ふふん」


 エースはおもしろそうに笑った。


◾隆臣


 「練習を再開する前に、17時から会議がある。お前たちも来い。小隊のみんなに挨拶しに行くぞ」と言われてアリスに連れられ、地上25階の会議室へやってきた。きのうの部屋とは別の場所だな。

 15分前なので、まだ1人しかいなかった。


きょうさん、こちらが明日から本隊に合流する協力者の品川隆臣とエースです」


 アリスが俺とエースのことを紹介してくれた。


「隆臣くん、エースちゃん。待っていたよ」


 と、いくつかの勲章がついたMMAの制服に身を包んだ背の高い男性が、イスから立ち上がって話しかけてきた。どうやら俺たちの話はすでに聞いているようだ。


「はじめまして。僕は第一小隊長の代々木よよぎ響。よろしく」


 なるほどこの人は小隊長だったのか。通りで俺たちのことを知っているし、勲章もたくさんついているのか。

 響さんは俺に右手を差し出てきた。

 俺も右手を出し、互いに握手をする。


「はじめまして。品川隆臣です。こっちはガイストのエースです」


「エースだよ……です。よろしくね……です」


 俺に続いてエースもカタコトの敬語で自己紹介した。


「すいません。こいつ敬語が苦手で」


「ははは、僕は全然いいよ」

 

 エースは普段、誰に対してもタメ口だからな。いざ敬語を使うとなるとどうしてもこうなっちまうんだ。

 エース自身もそのことは理解しているようで、ちょっと顔を赤くしている。今度ちゃんと敬語を教えてやらないとな。


「響さんはすごいんだぞ。24歳の若さで小隊長まで登りつめた実力者で、武装した銀行強盗犯の能力者集団をたった1人で沈めたり、薬物を密入した能力者の組織だって壊滅させたんだぞ! それにな! 響さんは……」


 アリスはそう言って響さんの武勇伝次々の語りだした。なんかすごい愛を感じるぞ。ひょっとしてファンなのか?


「お、おう」


 なんとなくすげー強いってのはわかった。さすがは小隊長だな。相手が集団でも1人で全滅させられるなんて、一体どんな能力を保有しているのやら。


「隆臣くん、エースちゃん。君たちは安心して犯人の足取りを探ってくれ。いざとなったらこの僕が君たちを守る」


「ありがとうございます」


「(ありがとう……です)」


 エースは恥ずかしそうに小声で言った。そんな姿もすごくかわいい。


◾隆臣


 時間になると30人ほどの隊員たちがこの会議室に入っきた。その中には亮二や篝、石沼の姿もあった。

 俺とエースは響さんに紹介され、自己紹介をして明日から調査に参加する旨を伝えた。

 エースは敬語を気にしてかなり小さい声で名前をつぶやいていたのだが、みんながやさしく接してくれたので、途中からはいつもの愛らしい笑顔をみせていた。

 やっぱエースには笑顔が一番だな。まるで天使の笑顔だ。


◾隆臣


 その後、18時30分までエースと射撃練習をした。

 エースは涙目で手が痛くなるのをこらえてがんばってくれたが、結果はすぐには出なかった。エースは筋金入りで射撃が苦手なようだ。こりゃあ大変だ。



 To be continued!⇒

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