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第114話 大英雄品川靖将

◾隆臣


 MMAから帰ってきた俺とエース。凛とジョーカーにミンチ事件の捜査に協力する旨を伝えたところ、2人は俺たちを応援してくれた。

 俺としてはミンチ事件が一刻も早く解決することを望んでいるが、凛とジョーカーに会える時間が減るってのは、それはそれで悲しい。

 体育祭ではいいとこなしだったし、事件解決に一役買って、2人にいいところをみせたい。とは言っても活躍するのは俺ではなくエースなんだが……。




 翌日の放課後。俺とエースは新宿のMMA本部に訪れた。

 エントランスにはアリスがいて、そのまま俺たちを地下1階まで案内してくれた。

 地下1階は巨大な武器庫で、MMAが提携を結んでいるシグザウエル社製の拳銃や小銃が保管されている。

 アリスの話によると、これらの全ては魔性を帯びた特殊弾――魔弾の発射が可能らしい。

 魔弾とは、弾頭に特殊な加工をして術式を刻み込み、バレル内で魔力粒子変換装置コンバーターによる体内由来の魔力粒子を受け取り、術式を展開する銃弾のことだ。

 そして俺たちの目の前でP320のマガジンに9ミリ弾を装填しているアリスこそが、世界で8人しかいない魔弾職人だ。しかもその中でも屈指の才能の持ち主なんだとか。

 そのことが評価され、法院はアリスの魔弾を毎月大量購入しているんだとか。ちっちゃいのにすごいね。

 アリスはマガジンに17発の9ミリ弾を入れ終わると、それをグリップに挿入して、


「護身用に持っておいて。拳銃くらい撃てるでしょ?」


 と言ってP320を渡してきた。


「ありがとう。でもいらんわ」


「どうして?」


 アリスは小首を傾げた。

 てかこいつ本当に俺と同い歳なのか? 背すっげーちっちゃいし、超童顔だし、今の仕草とかも小学生にしか見えねぇぞ。

 アリスを小バカにするのはここまでにして、俺はエースに頷いた。

 すると俺とエースの手のひらの中に、それぞれ一丁ずつP320が現れる。


「この通り、俺たちは拳銃を携帯する必要がないんだ」


「なるほど。それがエースの真のガイスト能力か。ちゃんと弾入ってるのか?」


「そりゃもちろん! 私は何でもコピーできるんだよっ。ふふん」


 エースは薄い胸を張って誇らしげに言った。

 我がガイストながら、今の行動を非常にかわいいと思ってしまった。

 くそっ! どうして俺の周りにはかわいいやつしかいないんだ! いやそれはとってもいいことだけど、俺の頭がどうにかなっちまいそうなんだよ。


「ならこれはいらんな」


 アリスはそう言ってマガジンを抜き取り、自身のマガジンポーチにそれをしまった。


「お前らは魔弾使用許可がないから魔弾は撃たせられない。普通の銃弾で我慢してくれ」


「ああ、充分だ」


 魔弾は周辺環境に影響を与えるものがあるため、使用するには国からの許可が必要なのだ。


「さて、それじゃあお前らの射撃の腕を見させてもらおう。こっちだ」


◾隆臣


 俺たちは地下2階の射撃練習場にやってきた。

 レーンが30列ほどあり、それぞれ最長50メートルまで的を遠ざけることができるようだ。

 俺たちの他にも、数人の隊員たちが射撃練習を行っている。


「ここのレーンを使うぞ。まずは隆臣からだ」


 アリスがそう言うと、エースはP320を複製して俺に渡してくれる。

 俺はP320を構え、アイアンサイトを覗く。


「なかなかいい構えね」


「小さい頃に父さんに教わったんだ」


「ふーん」


 俺は引き金を引いた。


 ――パーン!

 ――カキン!


 9ミリだからかなり反動はマイルドだけど、鋭いリコイルを感じるな。

 それに真ん中じゃないけど、ちゃんと的に当たった。悪くはないな。

 ゆーて拳銃を撃つのはロザリオ事件のボス戦以来なんだよな。

 まああのときは至近距離でストレートの頭を撃ち抜いて、ボスにただただ乱射してただけだが。


「あんたなかなかやるわね。素人じゃないでしょ?」


「中1まで毎年ハワイで撃ち込まされてたからな」


 あの頃が懐かしい。

 小6のとき、ダーティーハリーが好きだったじいちゃんにM29.44マグナム6.5インチ撃たされたのが懐かしいな。

 男はマグナムだっ! と教えられた。手のひらの皮が剥けて痛かったのを今でも覚えている。


「アンタの父さん一体何者?」


 アリスは小さな胸の前で腕を組みながら尋ねてきた。


「元MMA隊員だ」


「え!? まさか品川靖将やすまさ!?」


「おう」


「嘘でしょ!? アンタ品川靖将の息子なの!? かの大英雄品川靖将の息子なの!?」


「そうだって」


「そんな……」


 アリスはそう言って口元を手で覆い隠した。

 たしかに父さんは大英雄だ。

 2年前の夏、俺が中2の頃。

 父さんは京都で起こった朱雀事件にて、神獣たる朱雀の怒りを収めたのだ。

 神獣は魔獣の中で最強格の存在だ。その怒りを沈めることは宮司や巫女であっても困難を極める。

 父さんはたった1人で朱雀に立ち向かい、火の海の中から1人の少女を抱えて戻って来たという。

 その功績は法院から評価され、父さんはその年にイギリスに渡り、法院の捜査員に抜擢された。


「今はそんなことはどうでもいいわ。隆臣は問題なしね。次、エース」


「うん」


 エースはP320をぎこちなく構えた。ちっちゃな手にP320はかなり大きく感じる。


「あーもうダメダメ! エースにはレクチャーが必要みたいね」


 それを見たアリスはため息をついてエースにレクチャーを始めた。



 To be continued!⇒

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