表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/3

転生しても俺はFラン冒険者で、って、え?最初からFランク?

「ナック?どのナック・エーフランのことかい?知らない訳がないだろう。」


 おっちゃんは突然身を乗り出して、目を輝かせて語り始めた。

 ナックについて、彼が延々と語ったことによると、


 ・本名はナック・エーフラン

 ・常に冷静沈着で、最強

 ・『建国の12英雄』のリーダー

 ・『栄光のラリア支部』の創設者

 ・ナガイル王国の初代グランドマスター

 ・転生魔法のテストに志願して転生

 ・死後、名誉Sランク、ナガイル王国公爵位 追贈


 らしい。間に、やたらと「うちはナック様が創設者の凄い支部なんじゃ」と何回も自慢されてすこしムカついたが、俺のイメージが今どうなっているかは分かった。

 確かに、一部の情報はあっている。名前はナックだし、ナガイル独立の頃に依頼を受けたし、一瞬だけグランドマスターもやったし、転生魔法で転生した。



 だけど、あまりにも情報誇張され過ぎじゃないか!?



 最強だったことなんてないし、『建国の12英雄』なんて呼ばれたことないし、別に転生魔法のテストに積極的に『志願』したわけじゃないし、Sランクとか公爵とかにされているのは初耳だし。

 なんか、すごいことになっている、ということだけは分かった。絶対に、正確な情報の継承が行われていない。もしかしたら、幹部の間では伝達されているのかもしれないが、末端のレベルでは、伝説にされてしまっている。


 もしここで、俺が「自分はナックだ」と言い出したら、偽物だと言われるか、精神療養院につれていかれるか、あるいは納得してもらったとしても、実物が俺みたいなのでは失望されるのがオチだろう。

 これは、一度、管区本部まで行ってみた方がいいのかもしれない。

 ここは、ラリアの近くなのだろうが、ラリアから王都ナガイルまでは馬車で3日はかかるんじゃないだろうか。ラリアがアスリア帝国との最前線に当たるため、王都との間の道は特に念入りに整備されていたが、それでも早馬で2日かかった。馬車ならなおさらかかるだろう。


 だが、旅費が無い。足らないのではなく、文無しで転生したのだ。正直、今日寝るところすら怪しい。

 だが、幸いにして今は昼間だ。今のうちに依頼をこなして稼げば、宿代くらいは用意できるだろう。


「おっちゃん、冒険者登録したいんだけど。」

「なんじゃ、坊主。ナック様の功績を聞いて憧れたか?」

「いや、まぁ。うん。」


 憧れるも何も、俺が本人なのだから答えに迷う。だが、面倒な話をしないためにも、とりあえず頷いておいた。


「よし。名前は?年はいくつじゃ?文字は書けるか?かけるならサインするんじゃ。」


 名前は、何と答えようか。ナックと言ったら、「英雄の名を借りる不届き者!」などと怒られかねない。だが、もしかしたら、英雄の名前が一般に広まっていて、町中に『ナック』がいて、当たり前な名前なのかもしれない。

 いや、待てよ。なんでわざわざ自分の名前に気を使わなければいけないのだ。どう考えてもおかしな話だ。俺は、誰が何と言おうと、当然『ナック』だ。


「名前はナック。年はさん、いや、えーと、16。文字は書けるよ。」


 36と言いそうになったが、今の自分の見た目を思い直して、16と言っておく。

 俺は、差し出された冒険者登録届にサインして、冒険者登録をした。

 登録届の、最初に貰えるランクの欄を見ると「Fランク」と書いてある。そう、最初は一番下のFランクから、って、えっ!?


 いや待て、なんで届に書かれた登録時のランクがFランクなんだ?

 Fランクは中堅冒険者だ。普通、冒険者登録するときは、一番下のKランクから始まる。

 もしかして、転生したF級冒険者の俺だと分かっているのか?


「なんで、始まりがFランクなんだ?」

「自分は強いと思ってるのは、分かるがなぁ、坊主、最初はみんなここからスタートなんじゃ。それに(じき)に現実を見るじゃろう。」


 いや待て、いくら少数精鋭だといっても、スタートがFからなんてことがあるだろうか?しかも、試験も無しに、一発Fランクである。

 ギルドも随分適当になったものだ。


「いや、それにしても、なんでFランクから?」

「最初は、一番下のFランクから。これは決まりじゃ。お前さんが、兵士出身とかだったならばCランクやBランクでもよいが、お前さんはただの少年じゃろ。いくら自分に自信があるちゅうても、一回F級冒険者としてがんばってみるんじゃ。」


 兵士がBランク?全く訳が分からない。

 一般的なHランク、歴戦の兵士はGランクというのがギルドでの相場だった。それがBランク?全くわけが分からない。

 もし、兵士の強さがかつてと変わっていないとするならば、ギルドの冒険者のランクは5段階ずれて、弱体化している。

 つまり、今のBランクは150年前のGランク相当で、かつてのFランクは今はきっとAランクなのだろう。だとするならば、ここに所属しているというC級冒険者も、Hランク、極めて一般的な冒険者でしかない。

 支部も減り、知名度も落ち、登録者が激減し、そして登録者の質も大幅に下っているとしたならば……、



 今のギルドは、かなりヤバイかもしれない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ