無難なストリングス
大学一年になったハルの、最初の1ページです。
「なあハル、サークル決めたか?」
「俺は…まだかな。リョウは?」
四月も中盤に差し掛かろうというこの時期、うちの大学では、ウェルカムウィークが開催される。サークルの新人集め、いわゆる新歓のためのプチ文化祭のようなものだ。
「昨日はどこ行ったんだよ、タダ飯は食ったんだろ?」
「それが、夕方はずっとバイトなんだよ…残念だけど」
『タダ飯』というのは、新歓に来た新入生においしい夜ご飯を奢ってサークルに入ってもらおう、という謎の文化。そもそも、僕は知らない人と一緒にご飯なんて楽しめる人じゃないから、適当にごまかして帰っている。
「まあいいや。今日は俺、応援部行ってくるからよ、また明日な」
「あ、うん。またね」
僕は何のサークルに入るかって?実は1つ気になってるサークルがあるんだ。
エレクトーンサークル『メモリー』
うちの学校唯一のエレクトーンサークルだ。小学生のとき、実は小さな教室でエレクトーンを習ってて…なんで大学生になって今更、って、それを話すと長くなるよ?当時発表会に来てくれた大学生の先輩がいてね…
…とにかくその演奏は、それまで聞いたどんな演奏とも比べ物にならなかった。ヴァイオリンが、ヴィオラが、世界全体を包み込み、そのまま密度を上げて僕らを縛り上げた。僕らが使っていた「ストリングス」っていう音が、本当にちっぽけに聞こえた。音量とも音圧とも違う、後ろから両肩を押さえつけられたような柔らかいプレッシャーが、小学生にも分かった。
結局、受験とか部活とかいろいろあって、中3でエレクトーンはやめちゃったけど「大学はエレクトーン」って、なんとなく決めてたんだ。
それで、この学校のエレクトーンサークル、『メモリー』の人を探してるんだ。でも…
「公式ツイッター、最終更新、2か月前、って…」
すこしづつではありますが高頻度で載せていきます。
ハル君のかわいさを伝えていきたいです。。。
応援よろしくお願いします…!