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乙女ゲームの世界

乙女ゲームの舞台にあがったのに攻略対象が不在ってどういうことですか?

作者: あみにあ

辺境の地、転生令嬢は王都にはいきませんから!を読んでいなくてもわかると思います!

私は、前世の記憶もちである。


なぜ前世の記憶を持って生まれたのかはわからないが、私の前世は普通の女子高校生だった。


毎日学校へと通い友達とバカやったりして楽しく生活を送っていたはずなのに・・・

気が付いたらこの世界に生まれていた。


前世の記憶を持ったまま新しく授かった人生を歩んでいた。

父と母は優しく、街で洋服店を営んでいた。私はスクスクと育ち将来はこのお店を継ぐわ!と息巻いてた。


しかし10歳になったある日、街中を歩いていると聞き覚えのある名前が耳に入った。

それはこの国の第一王子・カレヴ殿下の噂話だった。


カレヴ?どこかで聞いたことあるような、そう・・・ずっと昔・・・。


私は立ち止まり、噂話に耳を傾ける。


「子供ながらカレブ殿下は大変聡明で慈悲深いお方よ!あぁこの国の将来は明るいわぁ!」


「それだけじゃないわ、彼の周りには秀才と噂されるガゼル様・若くして剣の実力が認められたグラクス様・策略家のヴァッカ様とルーカス様がおられるのよ!皆容姿端麗で目の保養だわ!」


「まぁでも私たちには手の届かない存在よねぇ~。」


カレブ・ガゼル・グラクス・ヴァッカ・ルーカス・・・・


あ!!!!

ここは・・・私が前世にやっていた乙女ゲームの世界だ。


どっと脳に膨大な過去の知識が蘇る。

高校の友達と、この乙女ゲームの押しキャラについて語ったわ・・・。

ふと道にできた水たまりが私の姿を映した。

この顔は・・・乙女ゲームの主人公マリアじゃない!

まさか・・・前世でやっていた乙女ゲームの主人公だなんて!

やば、顔がにやける・・・。

挙動不審のまま、私は急ぎ足で家へと走っていった。

家に着くと自分の部屋へ飛びこみ、ベットへダイブする。

マクラに顔をうずめ、足をばたつかせた。

やばい!乙女ゲームの世界とか、しかも主人公に生まれ変われるとか!


興奮が少しずつ収まり、私はこのゲームの事を思い出そうとベットに仰向けに寝そべり天井を見上げた。


確かこのゲームは・・・私が王都一番の学園に16歳になると入学し、そこで1年間攻略対象と関係を深めていくよくある乙女ゲームだったはず。


攻略対象一人目はガゼル様

王子の側近であり、プラチナの髪をなびかせ、いつも爽やかな笑顔で登場する。

しかし心の底では自分よりも頭の悪い学生達に対し小ばかにしており、笑顔や容姿、地位や金によってくる男、女を利用し学園を掌握している裏のボスだ。

しかし王都の学園に入学した平民女性(私)が普通の者とは違い知的で彼の容姿、地位、金に見向きもしない彼女に次第に興味を持っていく。


二人目はグラクス様

王子の護衛騎士の一人、赤い目が特徴で寡黙である。

彼は父や母から常に女性は守るべき対象だと教え込まれ育つ。

しかし彼が女性に優しくしようと行動や言葉を発すると、女性が泣いてしまったり、怒ってしまたり、ひどいときには逃げて行ってしまったりとそんな過去の経験から女性に対して苦手意識をもつ。

そうして彼は常に沈黙を保ち女性を遠ざけるようにしている。

しかし、平民である彼女(私)がどんなに虐められようとも、泣いたりせず、毅然とした態度で貴族に立ち向かう勇ましさを目の当たりにし徐々に彼女へひかれていく。


三人目はヴァッカ様

これまた王子の護衛の一人執務もこなす優良株、人懐っこい笑顔で周りを明るくするムードメーカだが、

実は二重人格で常にニコニコ優しい笑顔を絶やさないが、一度切れると誰にもとめれないほど暴れまわる。

普通の者が彼の怒りに触れると、恐怖の表情を浮かべ逃げ出す中、彼女は彼の怒りを正面から受けようとするその姿に次第に興味がわいていく。


最後はルーカス様

女とみればすぐに手をだすチャラ男だが、女性に対して常に一線を守っている。

彼は叶わない恋をしていて、その恋をどうにかして埋めていこうと女性に手を出していくと後半になるとわかる。そんな彼に献身的に寄り添うのが主人公であり、そんな彼女の心にひかれ叶わない恋を忘れていく。


そうして4人を攻略することで、隠しキャラの攻略が可能となる。

この国の第一王子、カレヴ様。

私たちよりも1つ年下なので学園で出会うことはない。

容姿鍛錬、運動神経もバツグン、民衆の支持もあつい完璧王子である。

彼とはどうやって出会うんだっけ?

あれ・・・彼の内容は思い出せないな・・・。

私は彼を攻略する前に死んだのかしら?


いつの間にか眠っていた私は、翌朝すぐに行動を開始した。

今の現状では彼らに会える学園へ入学できるはずがない・・・。

だってまったく勉強していなかったもの。

私は攻略対象に会うため、必死に勉強を頑張った。

神様は私に前世の知識はくれたが、一切のチート能力授けてくれなかったようだ・・・。

ただただ机に向かいペンを走らせ地道に頑張るしかなかった。




そうしてようやく・・・学園の入学である。


私、頑張った・・・!ついにやり遂げました!!!神様ありがとう!


学園の既定の制服を広げ、真っ白なブラウスに袖を通し、紺色のワンピースを重ねる。

皮の手提げかばんを持ち、父と母にいってきます!と告げるとはやる気持ちを抑え学園まで向かった。


学園へ到着すると、貴族や平民が混ざりあう学園の門を抜け、入学式の会場となる場所で私はお目当ての攻略対象者を探し歩く。

人の多さでなかなか見つからない。

まぁ入学式が始まれば必ず一人は会えるものね、ふふふ。

入学式が始まると、学園の代表者であるガゼル様が壇上にたち、入学制への挨拶が行われるんだから。


私は胸のトキメキを抑えきれず、終始ニヤニヤした表情で壇上を見上げる。

会場の雑音が消え、ライトが消され壇上に光が集まる。

舞台の袖から優雅に歩いてくる一人の男性の姿が見えた。

やっときた・・・!

ライトに照らされた舞台でこちらを見据えるのは、平凡な容姿の貴族らしき少年の姿。

えっ誰・・・?あれ?おかしいなここで彼が登場するはずなのに・・・。

平凡貴族少年は簡単に挨拶を済ませると壇上を後にした。

次ね、きっとかれは前振りなのよ。

ゲームで彼の登場は省かれていたのかもしれないわね。


しかし次に登場してきたのはピシッとスーツをまとった50代ぐらいの男性だ。

え・・どうして?ここで彼との最初の出会いが始まるはずなのに。

えええ・・・なんでなんでなんで!!


そうこうしているうちに入学式は終了し、会場が慌ただしくなった。

放心状態の私は気を取り直し足早に会場を抜け、次の攻略対象と出会う為この学園で一番大きい木がある校庭裏へと急ぐ。


はぁはぁはぁ・・・よかったまだ誰もきていないようね。

木のほとりで腰かけ、ゲームにも登場していた黒猫を見つけ抱きかかえる。

これでバッチリよ!

ここで始業式の始まりの鐘が鳴り響いた後、学園を見回りをしていた彼に発見されるの!


学園の始まりのチャイムが鳴り、そろそろ彼がくる・・・

猫を抱きしめドキドキして待っていると・・・

清掃のおじさんのようなデップリとした体格の人がこちらへやってくる。


「君、もう始業の鐘が鳴っただろう、はやく教室へ戻りなさい」


私は唖然とその言葉を聞く。

ちょっとまって・・・その言葉を言うのはあなたじゃない!!!

彼なのよ・・・、ちょっと・・・どうなってるのよ・・・。

私は下を向きすみませんと謝罪した後、デップリしたおじさんをすり抜け教室へと走っていった。


どうなってるの?なんでなのよおおおおおおお!

と走りながら心の中で叫び声をあげた。


次こそ、彼は同級生だから教室にいけば会えるはずよ!

私は入学生が集まる教室の前へとやってくる。

ゆっくり教室の扉を開けると、シーンと静まり返った生徒たちの視線が私へと集中する。

すみません、道に迷ってしまって・・・と先生へ伝えると俯き加減で足早に空いている席へと腰かけた。

窓際の後ろから2番目、ここは乙女ゲームの主人公が座っていた席で間違いない!

彼は私の席の隣になって、眩しい笑顔を見せてくれるのよ!

隣にいるはずの彼の姿を確認するため、私は恐る恐る隣の席へ目を向けると・・・

そこには・・・平民をバカにしたような視線を私へと送る、傲慢な態度の少年の姿があった。

絶望で目の前が暗くなる。

うそでしょ・・・彼はどこへいったの・・・?

私は焦って教室内を見渡すが、彼の特徴であるオレンジヘアーが見当たらない。


ちょっとまって・・・いったいどうなってるの?

私は入る学園を間違えたのかしら・・・?


放心状態のままホームルームは終了し、皆帰宅の準備を始める。


私は何とか気力を奮い立たせ最後の希望、上級生の彼に出会うために、旧校舎へと走っていった。


人のいない旧校舎へ足を踏み入れると・・・

ピアノの美しい演奏が鳴り響く。

整備されていないボロボロの廊下を歩き私は音のするほうへと足を向ける。

よかった、このピアノの音がならなかったらどうしようかと思ったわ・・・。

彼との出会いはこの旧校舎だ。

美しいピアノの音を聞きつけ、彼が演奏している部屋で彼と出会いが始まる。

次第に聞こえる音が大きくなり、ピアノが置いてあるであろう部屋の前で立ち止まった。

私は息を大きく吸い込むと、静かにドアを開けた。


ピアノの音がとまり、

鍵盤を見つめながら演奏していたブラウンの髪が目に入った。

あぁ・・・やっと攻略対象にあえた!


彼はゆっくりと顔を起こし開いた扉の方へと視線を向けた。

そこには少し皺が見えるブラウンの瞳と目があった。

あれ?イケメンだけどなんか違う・・・。

彼は私より2歳年上のはずだが・・・。

目の前にいる男性はどう見ても30代・・・?

彼じゃない・・・・!!!


私はその場で崩れ落ちた。


どうかしたのかい?大丈夫?と焦ったダンディーな演奏者は私へと駆け寄りと優しく背中をなでてくれる。


誰かしらないおじさまの優しさに自然と涙が出てくる。


こんなに頑張って勉強してこの学園に来たのに・・・

もおおおおおおどうなってるのよおおおおおおおおお!!!!と心で悲鳴をあげたところで、私の意識はプツリと途切れた。


次に目が覚めると、ベットの上だった。

仰向けのまま私は視線を動かし辺りを見渡す。

ここは・・・?真っ白いベットに白のシーツ、壁には液体の入った瓶や薬のようなものが置かれていた。

前世での保健室のようなところだ。

ふと目線をベットのサイドへ移動させると、先ほどのダンディーな男性が私のそばに座っていた。


「突然倒れてビックリしたよ?大丈夫かい?」


心配そうな顔をして私へと問いかける。


「すみません・・・もう平気です、ありがとうございました。」


そうよかったと微笑む姿にうっかり見惚れてしまった。


「女性があんな人気のない旧校舎に来てはいけないよ、では失礼するね」


あ・・・まって!

と声をかける前に彼は出て行ってしまった。

ベットで蹲り一人考え込んでいると白衣を着た女性が入ってきた。


「あら、目が覚めたの?体調は大丈夫?」


優しい声で私へ声をかける。


「はい、お騒がせしました・・・。すみません。」


「そう、顔色がよくなって安心したわ。あなた外部生よね?寮までの道はわかるかしら?」


私は頷き、白衣の美しい女性にお礼を伝えると寮へと足を進めた。


乙女ゲームの設定では寮でライバルキャラになるはずの令嬢と同室になる。

この学園は貴族だろうが平民だろうが入学すれば寮に入らなければいけない規則があるため、私も寮へ入らなければいけない。

憂鬱だ。確か彼女はこれぞ悪役令嬢と言う容姿と性格をしている。

確か辺境の地から聡明さと美しさを見込まれ、王都へと呼び寄せられた貴族の一人のはずだ。

プライドが高く、辺境の地からこの地に来たことで必死になって名のある貴族や王子へとアプローチをかける。そうして邪魔な女を裏でこっそり処分していくとかだったような・・・。こわっ!


寮の中へ入ると人の姿はあまりなかった。

指定された自分の部屋の前まで来ると、私は一度深呼吸をしゆっくり寮の扉を開けた。

きつい目で睨みつけられると予想し、体を強張らせてたが、目の前にいたのは可愛らしいく微笑む少女の姿だった。

あれライバルキャラじゃない?あれ、貴族でもなさそうね。


初めましてよろしくお願いします、と華麗にほほ笑む彼女に私もよろしくです、と微笑みを返す。

軽く挨拶を済ませると彼女は出かけてくると部屋を後にした。

私は、一人となった部屋で呆然と立ちすくむ。

どうなってるの?攻略対象もいない、ライバルキャラもいない・・・

これ乙女ゲーム始まらないんじゃないの?


夜、同室の彼女の安らかな寝息を聞きながら、私はベットの上で座り込む。

今日配布された生徒手帳を見つめ学園の名前を確認する。

学園の名前は私の思い出した記憶と同じ。

攻略対象の年齢も、名前もゲームと同じ。

もちろん彼らの事は乙女ゲームの記憶を思い出したときにリサーチ済みだ。

実際に会ったことはないが存在してるのは間違いない。


彼らがいるはずなのに、この学園にいない。


私はふかいため息をつき、こっそりと自室を出る。

誰もいない寮の廊下をただただ歩き、屋上へとつながる扉を開いた。


冷たい風が頬を冷やし、月あかりがあたりを照らす。

前世のように電気がないこの世界では夜になると真っ暗だ。


暗闇の中夜風を感じ、新鮮な空気をいっぱいに吸い込む。


「もおおおおおおお!攻略対象はどこいったのよおおおおおおおおおおおおおおおお」


と私は誰もいない寮の屋上で叫んだ。




只今、辺境の地、転生令嬢は王都にはいきませんから!連載を執筆中となります。

まだ掲載できるのに時間がかかると思いますので、先にこちらで楽しんでいただければと思います。

お読みいただきありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 誰にも会わないのに、記憶と同じ名前の学園があるだけでココまで一生懸命になれるなんて(頭が)可愛い子なんですね♡ [一言] 一瞬でも登場人物と会えてたらヒロインがココまで勘違いするのも分…
[良い点] 面白かったです 予想が付かない展開で続きが気になります
[一言] ヒロインのズッコケぷりが面白かったです。 誰もいないパターンは新鮮です
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