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ゲームキャラの現実世界転生記  作者: 矢野 光輔
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攻撃系スキル

「汚物は消毒だ。」

私はそう言いながら廃屋の奥へ歩を進めた。

「何だテメエ・・・!調子に乗ってんのか?何勝手に入ってきてんだよ・・・!」

突然のことで多少混乱していた彼らも私の外見を見て、勝てると思ったのだろう。

漣先輩の順番待ちをしていた男が立ちあがり、こちらに向かってくる。

ポケットから折り畳み式ナイフを慣れた手つきで取り出している姿を見るに、今回のようなことは手慣れたものなのだろう。

そんなことを思いながら私は同時にこうも思っていた。


攻撃系スキルの実験に使える。


相手が左手で私の髪を掴もうとしてくる。

一歩踏み込み、相手の腹部を思い切り殴った。

相手が悲鳴を上げることも出来ず、苦悶の表情を見せながら、くの字になって倒れる。

ナイフが落ち、床に刺さる。

<先制攻撃:上級>と<点穴:上級>のスキルを使ってみた。


<先制攻撃:上級>・・・≪WEO≫では、敵との遭遇時に自分の攻撃を最優先に行えるようにするスキルだった。これは自分より敏捷性の高いボスキャラであっても有効だ。ちなみに、他のキャラもこのスキルを使用してきた場合、敏捷性がより高い者が先制攻撃の権利を得る。同じであった場合は、ランダムとなる。


<点穴:上級>・・・素手の状態でのみ使用可能なスキル。攻撃命中時に敵に多様なステータス異常を与えられる。毒の効果と違い、魔法や道具では治せない。<点穴>と対になる<解穴げけつ>のスキルか、神殿で治療してもらうか、一度死ぬしかない。


今回、明らかに相手がこちらを認識し攻撃に移ろうとしていたが、私の攻撃があっさり当たった。

私の敏捷性が高かったためかとも思ったが、スキルを使用した瞬間妙な感覚になった。

いきなり相手の身体が目の前にあったからだ。

おそらくこのスキルは、「移動」ではなく「転移」に近いのだろう。

正確な移動距離などは分からないが、敵との距離が数m以内でないと発動しないだろう。

倒れた相手に目をやるが、今のところ<点穴・衰弱>の視認出来るような効果を確認出来ない。


<点穴・衰弱>・・・相手のHPを時間経過とともに減少させていく。衰弱死はしないが、瀕死の状態になっても効果は持続する。


「な・・・あ?・・・え?」

私が仲間を倒したことに驚いたようで、他の男たちは茫然としていた。

だが、直ぐに漣先輩の両足を無理矢理広げていた男と右手・右足を押さえていた男が、先ほどの男と同じようにナイフを取り出し向かってきた。


私にとっては次のスキルを試しやすくて有り難い。


<斬撃耐性:上級>・・・剣や斧によるダメージを軽減・一部無効化する。全ての物理攻撃に対応する<物理防御>と違い、斬撃武器を持った敵の攻撃に対してのみ有効。


<刺突耐性:上級>・・・レイピアや槍によるダメージを軽減・一部無効化する。毒針や剣山のような罠にかかった場合も、このスキルは適用される。


相手のナイフを鷲掴みにして、ふと思った。

よく考えれば、ナイフは切ることも出来るし、突き刺すことも出来る。

今の場合は、どちらのスキルが効果を発揮しているのだろう?

≪WEO≫では、剣は斬撃、槍は刺突の判定であった。

だが、厳密にいえば、剣も槍も斬撃にも刺突にも殴打にも使える。うーん。今後の課題になりそうだ。

そもそも、このスキルの検証は、両親の目を盗めば、自宅の包丁やカッターナイフでも出来た。

自分の間抜けさに苦笑してしまう。

そんなことを思いながら、スキルを使用しながら相手を殴り飛ばした。


<点穴・盲目>・・・相手の物理攻撃の命中率を下げる。スキル使用者の器用さの数値が高いほど、敵の命中率を大きく下げられる。最大で命中率は2割まで下げられる。


「うお・・・!?何だこのガキ!?ナイフを掴みやが・・・ぐぎゅ!」

ナイフを持った2人目は耐性の検証に不要なので、普通にスキルを使いながら顔面を殴った。

血と白い塊が宙を舞った。


<点穴・沈黙>・・・相手の魔法の使用を封じる。また、相手を怯ませる雄叫び・絶叫、仲間を呼ぶ遠吠えも封じられる。


「あ・・・わわ・・・ああああ・・・。」

漣先輩の左手・左足を押さえていた男は尻餅をついていた。

頭を押さえてた男はパニックになりかけているようだ。

撮影していた男も後ずさりして、壁際へと向かっていた。

残り3人は戦意喪失したようだった。

まあ、私には関係のないことではある。

私は淡々とスキルの使用と確認を行っていった。


左手・左足を押さえていた男には顔面に膝蹴りをして、肘鉄を首筋に叩き込んだ。

頭を押さえていた男には腹部を蹴り、スキルを使いながら裏拳を顔面に当てた。

撮影していた男には掌底を腹部に叩き込み、顔面を殴っておいた。


<点穴・混乱>・・・相手を混乱させる。他の敵の逃走・指揮系統の混乱を誘発することもある。


<点穴・麻痺>・・・相手の魔法使用以外の行動を阻害する。また、相手の敏捷性を0にし、全ての行動を最後にする。


<点穴・弛緩>・・・相手の物理攻撃力・防御力を半減させる。武器を装備している敵に使用した場合、戦闘後に装備品を落とすことがある。


<貫通攻撃:上級>・・・対象Aの物理防御力を無視して攻撃が出来る。また、対象Aの背後にいた対象Bにも、対象Aに与えたダメージ値の半分がダメージとして与えられる。


撮影していた男は壁際にいたので、<貫通攻撃>と<点穴・弛緩>を使ってみた。

廃屋の壁が大きな音と共に破壊された。

といっても、ヒビが入ったくらいだが、スキルの効果はあったようだ。

全員制圧できたようだ。

倒れた男たちを観察してみるが、やはりまだスキル<点穴>の効果は分からないようだ。

<先制攻撃>と<貫通攻撃>の効果は確認出来た。

先ほどナイフを掴んだ手を見てみると、傷も出血もほとんどない。

<刺突耐性>と<斬撃耐性>の件については、自宅でヒッソリと行うことにしよう。

そこで、やっと私は漣先輩のことを思い出した。

「大丈夫でしたか?」

漣先輩に振り返りながら傍まで近づいていく。

茫然自失としていた先輩は、私が近づくと身体を起こして私に抱き着いてきた。

「ひ・・・うあ・・・、うわあああああん・・・!」

余程怖かったのだろう。大声で泣き始めた。

先輩を慰めるために、私は先輩の頭を優しく撫でる。

そこで私は思った。


私の人格はどうなっているのだろう?


今回の事件では、

私は漣先輩を心配して行動はしていなかった。

私は男たちに怒りも恐怖も感じなかった。

私は男たちが今後スキルの効果で死のうとどうでもいい。

私は漣先輩を救えて良かったとも思っていない。


≪WEO≫では、キャラを創造する際、普通はそのキャラのプロフィールを設定する。

20000文字まで入力可能なので、事細かに設定する人は多い。

出身・口調・性格を基本に、キャラの悲しい過去話や他のキャラとの絡みを設定する人もいる。

私の場合はこうだった。

「一人称は私。性格は温和で口調も穏やか。超紳士。花と紅茶を愛する男。ちょっとドジっ子だが、いざ戦闘になれば一騎当千の働きをする。敵には容赦無用。女の敵は許さないクールな男。絶対女の子にモテる。仲間のムーンラビットの愛娘ルナと結婚している。愛妻家。ラブラブな2人である。将来≪WEO≫で出産・子育てシステムが確立されたら子だくさん間違いなし。夜が大変熱い。」

とても素晴らしい内容だ。完璧な文章と言える。

ただ、抽象的な部分や設定されていない部分はどうなるのかが疑問だ。

私はボンヤリと思索に耽った。

<点穴>のスキルも、効果は今のところ未確認。

現代医学で<点穴>の効果を消せるかもしれない点については興味がある。

人格設定については、倫理観や善悪についての考え方など多くの部分が不明・未設定。

転生してからの人生で、新しい人格は形成・設定されているのか。


まあ、追々考えていくことにしよう。

とりあえず、漣先輩を家に帰し、男たちを警察に引き渡そうと思う。

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