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ゲームキャラの現実世界転生記  作者: 矢野 光輔
13/21

勉強会

いのとくわが≪WEO≫時代の仲間だったと知って驚いた。

ルナに続いて再び仲間と出会えて私は喜んだ。

2人はそうでもなかったようだったが。

要約すると、いのとくわは「今を見ろ」「モテる男には腹が立つ」と言いたいらしい。

いのの冷静な考えとくわの私情まみれの意見だったが、心に刺さった。

いのの考えだけが刺さった。

ルナにも過去は過去だと言われた。

私は自分が思っている以上に≪WEO≫のことが心残りなのだろう。

何かの本に、「過去はもう無い。未来はまだ無い。私には今しかない。」という言葉があったと思う。

私こそが冷静に現実を受け止め、未来を考えるべきなのかもしれない。

私はそう思い反省した。


個人的に衝撃的な再会から気を取り直して、ルナに話を切り出した。

高校受験についてだ。

「ふむふむ。なるへそ。まあ前世が騎士のリックの知力は最低ランクだったろうねー。

まあ、リックは頑張れば普通の高校くらいには進学できそうだけどー。

ちなみに私は中学での成績はかなり良いよー?体育は普通だけど。

前世のステータスは転生してからも大体上昇率が同じだしー、将来的には前世のレベル100時点と同じステータスに到達するかなー。

でも≪WEO≫って、各ステータスの数値、最高で999でしょ?

999がこの世界で、どの程度の基準に達しているのかが、正確にはよく分かんないんだよねー。」

聞くところによると、どうやらルナの<存在解析>のスキルでは、腕力は筋肉量、体力は肺活量などに置き換わり、器用さ・敏捷性・知力・運は測定できないらしい。

体力テストやIQテスト、工作などをさせれば、敏捷性、知力、器用さはある程度は判明するだろう。

運については科学的に証明不可能だろう。

ただ、憩さんの時のような「勘」として作用するのかもしれないが。

ちなみに、依然述べた通り私は当たりつきお菓子で当たりを当てる確率が高い。

これも多くあるお菓子から何となく選んだものが当たる。運とはそんなものなのだろう。

あまり気にしていなかったが、今の自分のステータスを割り出すというのは、今後の学業のためにも重要かもしれない。


大雑把だが計算することにした。

たしか≪WEO≫時代の私は腕力・体力・器用さ・敏捷性は最低800を超え、運も400程度だった。

知力は100程度だったと思う。

ルナは、腕力・体力は300程度、器用さ・敏捷性・運は500程度、知力は900程度だったらしい。

私もルナも今は14歳だ。

前世の私たちの生が22歳で終わったので、成長限界は22歳と仮定した。

成長に伴って、個人差でどの程度ステータスが上昇するかは不明だが、今は平均的に上昇すると考える。

前世の私の知力は100程度。今の私の知力を100未満だろう。学校での成績は中の下だ。

おそらく前世の知力100は、今世では高校生の下程度のものだろう。

前世のルナの知力は900程度。今のルナの知力は400程度だろう。学校での成績は上の上。

ならば知力900は大学院か学者と同じレベルかもしれない。

「うーん。となると、知力100未満の今の私の高校進学はギリギリだろうな・・・。」

「私は余裕で90点台取れるけど、スキルを使えばチートみたいに100点取れるしー。」

「・・・。」

別に羨ましくはない。本当に。

「とにかく私の成績では高校進学は心配があるというわけだ。」

「ははーん。分かったー。リックは勉強を教えてほしいんだねー?」

「・・・話が早くて助かる。」

ルナは知力がかなりあるので、かなり期待できる。

「上手な勉強の教え方」というものは、知力が影響するのか、器用さが影響するのかは不明だが、両方高いルナなら大丈夫だろう。

「じゃあ勉強会は、次の日曜日に図書館でやろう。時間などは後で連絡する。」

「わかったー。お土産とか持っていくねー。」

「図書館での飲食は禁じられているぞ?」

「大丈夫ー。食べ物じゃないからー。ふふふー。」

ルナの怪しい笑みにやや不安になった。

約束を交わし、私たちは帰った。


「・・・なあ天城さん。これは一体どういうつもりなのかな?」

日曜日、図書館前。

私とルナ・・・・・・・・・そして憩さんがいた。

ルナが憩さんを連れてきたのだ。

「以前陸くんから頼りになる先輩がいると聞いていたので、今回勉強会で分からないところがあったら教えて頂こうかと思ってお呼びしたんです。勝手なことをして申し訳ありません。」

ルナが殊勝な態度をとる。

私は憩さんのことをルナに言ったことは無いし、憩さんにルナのことを言った覚えもない。

おそらく<存在解析>で私の個人情報や交友関係を探ったのだろう。

思い切りプライバシーの侵害だ。

もしくは舞から何か聞いたのかもしれないが、舞がそんなに口が軽いとはとても思えない。

憩さんに目をやると、普段通りに見える。

少なくとも、怒ったり悲しんだりはしていないように思う。

「あはは。突然家に天城さんが来て、勉強会に誘われちゃった。

ちょっとビックリしたけど、特に予定もなかったし、お邪魔することにしちゃった。」

「そうですか・・・。天城さんがご迷惑をおかけしたようで・・・。」

私はそう言って憩さんに頭を下げた。

「陸くん、気にしないでね。ちゃんと分かってるから。」

「?」

憩さんの言葉が引っ掛かり、頭を上げる。

「ルナさんは前世で奥さんだったんでしょ?全部聞いたから。」

「・・・。」

・・・ルナが憩さんを呼んだ時点で予想はしていた。

ルナの性格なら憩さんの存在を知れば面白がって関わろうとするだろう。

しかし、なんだろう。

とても居心地が悪い。

私がこの場に漂う言い表せない空気に戸惑っていると2人が話し始めた。

「ルナさん。いえ、月子ちゃん。今後ともよろしく。」

「こちらこそよろしくお願いします、憩さん。」

「口調は変えなくていいの?私を誘った時はもっと間延びした話し方だったけど。

もっとリラックスしてね。」

「あら、良いんですかー?では憩さんといる時はこの口調にしますねー。優しいですねー憩さんは。」

「ありがとう。実は私、月子ちゃんと長い付き合いになりそうだと思うと、今日の勉強会とても楽しみで。」

「私もですよー。憩さんはとても魅力的だから仲良くしたいなーって思ってるんですー。」

「あはは。」

「ふふふ。」

え?なに、この空気?寒気がするんだけど。

若干怯える私を置き去りにして、2人は図書館へ入っていった。


当初は心配だった2人の関係も、意外にも良好だということが判明した。

成績の良いルナは教え方も上手く、私は問題集をどんどん解いていけた。

憩さんは学校の成績は中の上らしいが、問題に関係した話を多く知っていて、勉強を飽きさせない工夫が上手かった。休憩時間にはバラエティ豊か話題を提供してくれて、飽きることは無かった。

勉強会には問題は無かった。

問題があるとすれば、2人の水面下での戦いだ。

ルナは家でのキスや会っている時の態度などから、私のことを少なからず異性として見ているようだった。

過去に捕らわれ過ぎるなと言っておきながら・・・と思わなくもないが。

一方、憩さんは以前から私への好意を隠していない。

妾でも良いと言っていたが、本命になる努力を怠る気はないらしい。

まず2人は私を挟んで勉強することを提案してきた。

私は教わる立場なので発言権は無い。即座に可決された。

勉強を始めてから2人は私に密着し、時折足を絡めてきた。

2人とも不自然なほど顔が近かった。

周囲の視線を感じた私が席を変えようとすると脅された。

「リックー。まさか嫌がったりはしてないよねー?

知ってる?個人情報って一度ネットに流出すると削除は難しいんだってー。」

「陸くん。まさか私たちのこと避けたりしないよね?

道場の皆も陸くんがとても良い子だって知ってる。悪いようにはしないから。ね?」

あからさまな脅しと道場での扱いを人質に取られた私は無力は生贄の羊だった。

進学出来るぐらいの学力を早く習得したかった。

今思えば、いののスパルタ教育は優しかったんだと気付いた。

いのの叱責が恋しいくらいだ。

今日も私は学んだ。

この2人は、「混ぜるな危険」という存在だと。

私は心を無にしながら勉強した。

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