とあるOLの心中
朝の混み合う車内にて
とあるOLは密かに想う
以下、とあるOLの心の内
「ああもう最悪。」
「昨日遅くまで動画漁ってたらこのザマですよ。」
「あぁダルいぃ。」
「寝不足でオマケに胃がもたれてる。」
「深夜の菓子パンはあれほど危険だって分かってんだけどなあ。」
「もうこの歳になってくると太るとか太らないとか以前に胃もたれがくるんだよなあ。」
「そして太る。」
「もう深夜に飲食シーンのあるアニメ流すのヤメて欲しいわ。」
「寝不足により化粧のノリも最悪だし。」
「いくら長年の経験で培われた匠の技巧でも隠し切れない寝不足の跡でした。」
「なんということでしょう。」
「…へへっ。」
「…ヤバイな。おかしなテンションになってきたぞ。」
「ていうか。」
「管理人のエロジジイ。」
「いつもイヤらしい視線ばっか送ってきやがってマジでウザい。」
「てめえがアタシの臀部に突き刺さる程の視線を送っている事にこっちが気が付いてないとでも?」
「今朝だって『おはようマミちゃん。アレェ?今朝は元気ないみたいだねえ?どうかしたのかなあ?」とか言いやがって。」
「余計なお世話だっつうの。アタシは年がら年中元気じゃなきゃいけねえのかよ。」
「『昨日ちょっと寝付けなくて』って言ったら『いけないなあ。夜更かしはお肌の天敵だよぉ。』って。」
「てめえに女の肌の何がわかんだよ!テカテカのオヤジのクセに、知った口きくなっての!」
「思い出すだけ気分悪いわっ!」
「ああもう最悪。」
「あっ。」
「やだっ。」
「……」
「また目が合っちゃったよぉ。」
「今朝はもう二回目だよ。」
「いつもは大体一回なのに。」
「もしかしてこっち、見てるのかな?」
「そんなっ。」
「そんなワケないって。」
「でも赤の他人と二回も目が合うなんて。」
「全く何もないってわけじゃない、かも。」
「でもダメ、ダメだよマミ。」
「もう勘違いしないって、決めたんだから。」
「アタシにできるのはさりげなく視界に入れるだけ。」
「まあそりゃあ、向こうから声かけてきたら話は別だけど。」
「そんなこと、あるワケないよね。」
「映画やアニメじゃないんだから。」
「それにしても管理人のジジイとはエラい違い。」
「生物としては同じ項目になるのになあ。」
「ホント、男はあれくらいの時が一番良いのよねえ。」
「もうアレ以降になると廃れてく一方っていうか。」
「なんかちょっと顔つきとかイヤらしくなるし。」
「なんかちょっと臭いとか出てくるし。」
「なんかちょっとエラそうになってくるし。」
「まあもちろん例外もいるけど。」
「あぁスゴイ良い。」
「ふわふわの髪の毛。」
「みずみずしい肌。」
「澄んだ瞳。」
「そしてなにより青臭いピュアな感じ。」
「見てるだけでこんなに幸せになるなんて。」
「やっぱ最高だわ。」
「男子高校生サイコーだわ。」
「あっ、美形の男子高校生サイコーだわ。」
「文庫本なんか読んじゃって。」
「何読んでるのかなあ。」
「あっ。」
「また目が合っちゃったよぉ。」
「ヤダ、ビックリして目逸らしちゃった。」
「すごい恥ずかしい。どうしよう。」
「ヤダもう。」
「アタシ、男子高校生にしか心トキめかないのかなあ。」
「……」
「犯罪じゃんそれって。」
「もう最悪。」
「……」
「ちっ。」
「てめえはこっち見てんじゃねえよ。」
「右にいるリーマン!」
「てめえだよリーマン!コラぁ!」
「そのイヤらしい視線に気づいてないとでも思ってんのかよ!」
「あーあと少しでも近づいてきたらガンとばして威嚇してやんのになあ。」
「毎朝毎朝ナメるよに見やがって金払えっつうの。」
「話かけでもしてきたそっこう大声だしてやんのにな。」
「『この人痴漢です!』ってね。」
「そしたらあの男子高校生が助けに来てくれたりしないかな?」
「なくはない。」
「そうなるとあのリーマンにはいっそ行動に出てもらいたいね。」
「でもアイツヘタレそうだしなあ。」
「絶対そんなことしてこないだろうな。」
「ああ。」
「どうして男ってみんあんな奴らばっかりなんだろ。」
「そりゃアタシの婚期も遅れますよ。」
「やべ、すげえ眠くなってきた。」
「あっ、次で降りなきゃ。」
「仕事したくねえ。」
「ああもう最悪。」
つづく
まだ続きます。次でラストです。




