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US3000-ニューヨークの町-

作者: 白湯丘 杯戸

ディストピア短編小説です。

受動的消費者階級「COMER」の一人、ジョンは、ニューヨークの町を歩いていた。

無論、公的にこのような階級制度が存在するわけではない。

ただ、所得に応じて政府による扱いが違う、ということなのである。

グランドセントラル駅に差し掛かったその時、轟音が胸を突いた。

飛来する破片と白煙。

ジョンは本能的に今までとは逆に走り出した。

(死が迫っている)

由緒ある駅舎は粉砕された。

グランドセントラルが崩壊したのは今年で何度目だったであろうか……。

駅舎は壊されても、微粒子レベルで復元され続けているのだ。

白煙の中から躍り出たのは、平均身長270cmの美男美女。

肉体労働者階級、通称「BOT」たち。

政府は事実、何一つやましいことはしていなかった。

単刀直入に言えば、運動神経や体質の良い者同士の交配が何世代にも渡って続いた結果に過ぎない。

BOTはしばしばこのような武装蜂起を行うが、恐ろしいことにBOTの法定居住地域はCOMERのそれの隣にあるのだ。

腕力や脚力でBOTに勝つのは極めて困難なことである。

ジョンは地下鉄に飛び乗った。

はるか上で、「PENGOV」を乗せた高架鉄道が走っていることを思っている暇はなかった。

車内の画面のニュースが、政府がBOT暴動を鎮圧したことを告げていた。

ニュースキャスターとて山高帽を被ったPENGOVである。

ジョンは、PENGOVはいつも偉そうだなと不愉快になった。

PENGOVは選挙権を持っているが、COMERとBOTには選挙権がない。

法の上では所得による区別なのだが、実態としては、区別するにしても明らかに過大な額が設定されているわけだ。

ジョンは、政府に対して怒りを露わにする代わりに、原始時代の米兵が日本兵を殺害するというおぞましい映画の1シーンを

思い出して、安息と快楽を得ることを選んだ。

西暦3000年のことであるから、当然といえば当然だが、ニューヨークの町も様変わりしていた。

地下と地面は卑しいものとされている。

先程書いた通り、地下鉄はCOMERとBOTの交通機関とされている。

PENGOVは、主に高架鉄道を利用する。

また、建築物についても、地下と1階から14階はダーティーフロアと呼ばれていて、

PENGOVは常に地上15階以上の階にいるのだ。

現代の国連本部は、もはや地球の評議会の施設としては機能していなかった。

合衆国連邦政府の国家保安省の為に供されている施設である。

翌日、ジョンは、国家保安省を訪れた。

別に目に見える圧政が敷かれているだとかいうわけではない。

地上14階以下であればBOTであっても出入りは自由とされているのだ。

特に仰々しいスローガンやオブジェは見当たらないが、静寂でしかないエントランス。

憲兵が警備している為、このエントランスはCOMERとBOTが安心して会話できる場所であり、歓談の声も時折響くが、

やはり巨大な建築物は感覚的な畏怖を漂わせるものだ。

エレベーターが到着した。

自動音声が予想だにしなかった来客を告げた。

「まもなく、国家保安省本庁舎・地上1階・ミックスエントランスに到着いたします。」

ドアが開くと、山高帽姿の老紳士が現れた。

(PENGOVがなぜ地上1階に?)

こともあろうにその老紳士は、ジョンと同じテーブルについたではないか。

「私はスチュワートと申します。」 <My name is Stewart.>

ジョンはなんとか返事をした。

「俺はジョンだ。」 <I am John.>

スチュワートは少し間をあけて続けた。

「君は私たちPENGOVを恨んでいて、とんでもない独裁者と思っているかもしれないが、実際にはPENGOVの上には

『FACTER』という輩がいるのだ……。」

スチュワートは血を吐いて倒れ、もがきだした。

知能に特化したPENGOVは極めて病弱であり、屋外や低層階での行動は死の危険を伴うものなのだ。

「あんたには、1階の空気は汚すぎたか……。」


久しぶりに、小説を書いてみました。

お手柔らかにお願いいたします。

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