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お前は勝ち組and俺は負け組  作者: 日光さんDX
1章
8/26

俺は約束し彼女は……

PVが1000を超えました。

読んでくれる皆様に感謝を。

 今日という日が過ぎればゴールデンウィークが始まる。

 その事実が嬉しくて若干浮き足が立っているが、ノープロブレム。最早、疲れがあることが清々しくあった。

 朝は柄にもなく、早起きをして今までとは違う感触を味わう。

 気持ちが良い太陽の光。鳥たちの囀り。いつも通るゴミ一つ落ちていない綺麗な通学路。

 なんて、気持ちの良い朝なんだ。毎日がゴールデンウィークになれば、さらに充実した高校ライフが送れるだろう。仮にそうなったら、高校ライフとは言えないが。


「おはよー」

 声をかけられたのは俺ではない。かといって声をかけたわけでもない。

 静美川高校の制服が着ている生徒同士の会話だ。周囲には生徒がポツポツと増えてきている。朝早くだというのに人が多い。


「ねえねえ、昨日のドラマみたー?」

「みたみたー。面白かったよねー。あの上司マジざまーって感じ」

「それな。あのシーンマジ吹いた。最高だったー」


 通学路は次第に生徒同士の会話で騒音になる。

 静かだったのに一気にひっくり返されてしまった。

 俺は特に誰とも関わりがないので無言を貫く。


「おはよう」

 また誰かの声がする。声のトーンから考えて女子の声だ。俺に話しかける可能性は絶対にないので無視をする。聴覚をフェードアウト。


「おはよう」

 うるさいな。おい、そこのお前呼ばれてんぞ。


「ねえ、おはよう。聞いてる?」

 さっさと呼ばれてることに気づけよ。前の歩いてる男子女子。


「上井草君ってば」


「は?」

 肩を軽く叩かれる。俺の名前が呼ばれたので反射的に振り返ってしまう。何で俺が声かけられたの?成程、パシリか。それとも、新人生になったから「洗礼」というやつでもやるのかな。

 目の前にいたのは顔見知りの他人。顔と名前だけ一致している見知っただけの女子生徒。


「村松か」


「村川だよ!?」

 そうだった。村川 ゆいでした。悪い悪い。


「で?どした」

 面倒だなと思いつつ、対応する。村川は俺の歩幅に合わせるように横に並んだ。


「何でそんなに素っ気がないの!?もうちょっと挨拶を返すとかしてよ」

 そういわれてもな。

 村川とはクラスメイトだけであって友達でもなんでもないんだがな。お互いに挨拶を掛け合うなんて友達みたいだろ。

 村川は勢いよく背伸びをし、


「それにしても今日はいい天気だね」

 と在り来たりな日常会話を述べる。

 俺も家に出るときは同じこと思ったけど、今はこの暑さがなんかイライラする。


「そうだな。いい天気というかむしろ暑いぐらいだな」


「うん。そうだね」

 村川は共感の笑みを浮かべる。このまま屋上でもこんな風に話をして会うことになるのだろうか。

 そういえば、最初に会った時なぜ屋上に入ってこれたんだ?

 屋上は常に施錠されているはずなのに。


「なあ、村川」


「何?」


「なんで昼の時屋上に来れたんだ?鍵は閉まっているはずなのに」

 俺はそう聞くと、村川の表情は変わらず、


「上井草君はどうして?」

 と質問を質問で返されてしまった。ここでネタ晴らししたら、何をされるかわからない。相手は勝ち組だぞ。その気になれば、俺の憩いの場が一つ消されるかもしれん。

 無難に誤魔化すことにしよう。


「ま、まあ。俺はアレだ。たまたま屋上が空いてたんだ。そんでいい眺めだったからつい、な」

 ど、どうしよう。全く誤魔化しきれてない。


「そーなんだ」

 村川は俺の言葉に真を受けて信じた様子だった。俺の意見を頷いている。

 ……いいのか。そんな説明で納得して。


「私は屋上の鍵を持ってるの。ほら」

 村川は胸ポケットから鍵を取り出す。鍵にはマジックで屋上と書かれていた。書いた時間もそれなりに経っているらしく、若干文字が霞んでいる。


「私、今週の掃除当番で屋上の掃除なんだ。いつも放課後から掃除が始まるんだけど、屋上なんて行ったことなかったから気になって。それで昼にきてみたら上井草君がいたからビックリしたよ」

 ビックリしたのは俺だよ。

 俺は「そうだったのか」と返しておく。

 屋上の掃除なんてあったのか。なら、その役割を担ってやるから鍵をくれ。

 俺はそう言おうと口を開くが、


「あのさ……明日からゴールデンウィークだよね」

 村川の方が先だったようで俺は口をつぐむ。


「ああ」

 心なしか村川の顔が赤い。


「明日さ、もし予定が空いてたら私と―」


「空いてない」


「まだ最後まで言ってないんだけど!?」

 最後まで言わなくてもわかる。俺のゴールデンウィークを潰す気だろ。というか、勝ち組なんだから勝ち組と話せよ。


「と、とにかく明日、学校の近くの公園で待ち合わせ。時間は10時。用件は明日言うから。じゃあね」

 村川は無理矢理会話を終わらせ、拒否権は認めないようで俺の前へと走り出す。俺は追いかける気にもなれず、村川の後ろ姿を見つめていた。

 

 今日は始まったばかりだ。村川と話せる機会が一回ぐらいあるだろ。そん時に改めて断るか。

 俺は昼に屋上で会えることを期待していたが、今日はこれっきりで村川と話す機会がなかった。




 期待してもいいのだろうか。

 今度は悪意の誘いではなく、善意からの誘いだとということを。


(いや、落ち着け。中学時代までの経験を思い出せ。期待なんかするな。どうせ掌を返されてるんだ。俺は負け組らしく、負け組の振る舞いを見せればいい)

 

 でも、それが純粋な好意だとしたら。

 俺はきちんと答えられるだろうか。

不定期更新ですが、エタる気はありませんので長い目で見てください。


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