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お前は勝ち組and俺は負け組  作者: 日光さんDX
1章
2/26

俺は負け組で彼女は……

更新が遅れてすみません。

もう少し早くできたらいいのですが。

 今日は天気が良い。晴れの日は屋上でランチタイムするのに限る。

 俺こと、上井草かみいぐさ 雄平ゆうへいはルンルン気分で屋上へと向かう。授業の4限が終わり、昼休み。

 ここの所、雨が続いていたので、クラス内で飯を食べてた。


(あれは気まずかったな……)


 高校に入学してから早一か月。中学時代に続いていたいじめがなくなり、俺なりの充実ライフを送っていた。

 しかし、未だ友達の出来ぬまま日々、過ごしている。


(否、友達なんぞ不要)


 元々、友達を作る気ないんだから問題なし。うわあ。俺って一人で生きていけるじゃん。めっちゃ大人。


(着いた)


 俺は屋上の扉に近づき、周囲を確認する。

 本来、屋上は使うことを許されておらず、鍵は閉まっている。

 その為、普通の生徒では屋上に入ることができないが、俺は違う。


(ふふふ……)


 俺は秘密道具をポケットから取り出す。タッタターン。ハ~リ~ガ~ネ~。某アニメにいる青色タヌキの声を表現。

 似てないな。何か空しくなってきた。

 俺はカチャカチャと針金を鍵穴に入れる。ガチャリと開いた音がする。


(いざ、ゆかん。昼飯)


 と勢いよくドアを開けると、


「えっ?」


 声を上げたのは俺ではなく、ある女子生徒。

 俺と同じクラスの同級生である村川むらかわ ゆいがそこにいた。栗色の髪の色で整った顔立ち。そして、出ているとこはでていて、締まるとは締まったグラマーな体型。

 で、勝ち組だ。

 

「あっ!?ご、ごめん」

 村川は何について謝ったのかは分からなかったが、それについては追及することはしなかった。今は俺の安息の地が絶たれてしまった絶望感だけが襲っていた。ああ、俺のシークレットプレイスが。


「確かえっと、上井草君だっけ?」


「ああ……」


「どうしたの?元気がないけど?」

 村川は俺の表情を窺い、上目づかいで見てくる。うるさい。俺の憩いの砦を返せ。


「んー。何か本当に元気ないようだけど、一緒に保健室行く?」


「いや、何でもない。邪魔して悪かったな」

 さらば、俺の砦。フォーエバー。

 俺は屋上で昼飯をするのを諦めて勝ち組に譲る。振り向くな、俺。このまま黙って真っ直ぐ進むんだ。屋上は名残惜しいけど、しょうがないんだ。


「肩がプルプル震えてるけど、大丈夫?」


「ああ……大丈夫だ」


「なんか涙声なんだけど……。本当に平気?」

 平気だよ!もう引き止めるな。これ以上、俺に悔いを残させないでくれ。もう、屋上と別れられなかったらどうするんだ。


「えっと、ってマジ泣き!?」

 村川は俺の表情を見た瞬間、驚き始めた。若干、引いてるようにも見える。お前には分からないだろう。屋上さんの素晴らしさが。

 このようなシークレットプレイスの素晴らしさを理解できることこそ負け組の特権だ。ちなみに二番目のシークレットプレイスが個室トイレである。

 そんな俺を見て、村川は何を感じ取ったのかポンと手をあて何かを理解していた。勝ち組め。貴様、何を感じ取った。


「そうだ。一緒にご飯食べよ、ご飯」


「断る」


「断られた!?」

 どうしてお前なんかと一緒に食わないといけないんだ。俺は勝ち組じゃない。勝ち組は勝ち組らしく勝ち組とともに飯を食べればいい。

 第一、何でそんな困った顔でこっちを見てきやがるんだ。何その、「うわー、こいつ中々空気よんでくないよー」みたいな視線。


「あのさ、上井草君」

 俺から見ても、話題を変えるんだなという雰囲気は大体予想がついた。村川は俺の名字を呼んで一拍おく。


「上井草君って、いつも屋上で何してるの?」

 少し不意を突かれた。てっきり、毒舌に言って屋上から追い出されるかと思っていた。

 村川の表情は真剣そのものであり、からかっている様子はない。ここは真面目に答えることにしよう。


「いつもか? まあ、基本ここで飯食ったり、ボーとしたり、その程度だ」


「それって楽しい?」

 妙な質問だとは思ったが、正直に返答をしてみることにしよう。というか、なんか尋問みたい。


「それなりにな。一人になりたいときとか、一人きりでいたいときとか、独りぼっちのときとかな」


 「ははは」と村川は軽く笑う。何その苦笑い。


「そっか。なら、ここで……ぬわけには……かないね」


「ん? なんか言ったか」


「ううん。何でもない」

 えへへと村川は微笑む。突然、呟いたけど何て言ったか聞き取れなかった。知らぬが仏である。聞き流すことにしよう。


「ねえ、上井草君。もう一度、聞いていいかな?」


「何だ?」

 

「お昼、一緒に食べよ?」

 その問いは一瞬で答えられた。


「断る」


「また断られた!?」

 ううー、わかったよーと村川は俺に聞こえるぐらいに言ってから、屋上のドアへと向かう。ホント、俺に一緒に飯食おうとか馬鹿だろこいつ。

 村川はドアの前に立ち止まり、振り返る。


「またね。上井草君」

 もう会うこともないだろうと俺は心底そう願う。またって何だよ。もうねえよ。

 村川は微笑みながら、屋上を後にした。俺はそれを見送ってから一息つく。

 

 今回の結論。

 俺と村川は間違っても交友関係になることはないだろうと確信する。

 村川 ゆいはクラス内では多くの友達がいるうえ、異性の友達すらいる。しかも、それぞれ一人一人に交友が深い。少なくとも、俺が知る限り、彼女はアイドル的存在。

 だから、彼女は勝ち組で俺にないもの全部持ってる。勉強だって、スポーツだってできる。

 それと対照的に俺は負け組だ。最近までいじめを受けてきた底辺の存在。

 そんな奴と村川 ゆいは明らかに不釣合い。

 特に村川はそんな奴と一緒にいることでそういうレッテルが貼られるのだ。


 俺はそれが我慢できない。

 だから―、

 俺と彼女はこれからも交わることはないだろう。

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