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お前は勝ち組and俺は負け組  作者: 日光さんDX
1章
10/26

俺はまた約束し彼女は……

個人的にはようやく10話といったところです。


 俺と村川はゲーセンから出た後、ある店に行こうとしていた。

 時間帯は昼過ぎになり、人混みが増えてきて、太陽の直射日光を浴びせられている。暑さは倍増どころではない。倍倍増だ。

 だったら、俺達二人の結論はもう決まっている。両者の利益になるのでここは文句を言わずに従うことにしておこう。


「いらっしゃいませー。二名様ですか?」

 ある店に入ると、慣れた軽快な声でそう聞かれた。

 ああ、冷房が効いてて涼しい。これぞ文明の利器だ。


「はい。そうです」

 村川が俺の代わりに答える。

 現在、俺達はファミレスへと足を踏み入れていた。外は暑い。だから、ファミレスに入って考えない?という村川の案を俺はあっさりと受け入れた。

 なぜ受け入れたかって?暑いからだよ。


「注文がありましたら、そこの手元にあるボタンを押してください。それではごゆっくり」

 店員が俺達を座席に座らせると、一礼して去っていった。

 俺の手元には呼び出しブザーが設置されているので即座にボタンを押す。

 ピンポーンとファミレス内に響き渡る。


「ちょっと!?私はまだ決まってないんだけど」


「俺は決まった」

 村川の発言を発言で返すことで華麗に流しつつ、店員がやってくる。先程の接待していた店員ではなく、別の店員が俺に対応する。

 俺は一言。


「メロンソーダ一つ」

 店員は難なく俺の発言を注文と受け取り、伝票に書き込む。

 いやぁー、店員って凄いね。今の言葉だけで注文って分かるから。


「以上でよろしいでしょうか?」


「私は―」


「ああ。以上だ」

 村川の声を俺の声で打ち消す。どうやら、俺の声が勝ったようで店員は気づかず、店頭に向かっていった。

 どうした?村川。顔が怖いぞ。

 村川の目が絶対許せないと言っている。注文しようとしてたのに遮られたことを怒っているようだ。


「いや、何で俺睨まれてるの?村川は金があるわけ?」

 と俺が言うと、村川は「うぐっ」と声を詰まらせる。

 村川はゲーセンで金を使い果たしているのは現場で見ているわけで、俺は村川に対して奢る理由がない。

 よって、村川が注文をする意味が俺には分からなかった。

 俺が奢れと?断固拒否する。


「それはそうだけど……普通奢るでしょ」


「奢らないでしょ。顔見知りの奴に奢るほど俺は人間ができていない」


「私、友達でも何でもないんだ!?ただの顔見知りなんだ!?」

 その通りだろ。何度か話しかけて会話が成立すれば友達なると思ったら大間違いだ。お前の発想は小学生かよ。

 友達なめんな!友達を作ったことないけど。

 俺が今ここにいる理由だって勝ち組の誘いを安易に断れないからだ。安易に断れば勝ち組に喧嘩を売ることになるからな。

 あれ?でも口調と態度で喧嘩売ってんじゃね?

 まあいいか。その時はその時だ。


「う~分かったよ。じゃあ、奢りじゃなくてツケでいいかな。またどこか遊びに行った時に私が奢るから」

 村川は苦肉の策といった感じで苦い表情を浮かべる。

 またどこか遊びに行った時?

 ……。

 それって、つまり……。

 いや、これ以上考えるのはやめよう。何より口から出まかせ言って俺を奢らせようとしているのかもしれない。

 俺は絶対に勘違いをしない。そう昔から言い聞かせてあるんだ。


「村川は水でいいだろ」

 俺は視線を合わせず、適当に言い放った。

 村川は頬を膨らませ、


「ええー。やだよー。一人は頼んだのにもう一人は頼まないなんてなんかやだー」

 そんなの俺が知ったことではない。第一、ゲーセンでお金を使いすぎるのがいけないんだろうが。


「すみませーん」

 お金がないのにも関わらず、村川は店員を呼ぶ。

 呼び出しブザーを押せよ。呼び出しブザーを。何のために呼び出しブザーを設置してると思ってんだよ。あれか。俺にブザーを押せっていう遠回しの命令なのか。

 村川の型破りな呼び出しでも店員はこちらに向かってくる。


「追加で注文よろしいでしょうか?」

 村川が店員に尋ねる。

 何?今何て言った?


「はい。わかりました」


「コーラを一つお願いします」


「かしこまりました」

 注文が聞き終わった店員はその場から立ち去る。

 暫くの沈黙。


「…………」


「…………」

 どうやら、俺が払うらしい。

 村川の目が完全に泳いでる。払う気はさらさらないようだ。それでもなお、俺が睨みつけていると、


「ごめん!悪かったってばー。ホントに奢るからさー」

 手を重ねて謝ってくる。謝るならしなければいいのに。


「じゃあさ、約束。明後日の5月7日になんか奢ってあげる。それならいいでしょ?」

 俺はその日には予定がない。毎日、予定がないだけどな。

 しかし、めんどくさい。なぜ、わざわざ俺が奢られに約束しなきゃいけないんだ。村川のことだから外に食べに行くだろうし、外出する時点で俺は嫌だ。


「いや、俺は……」


「よし!なら、それで決まりだね。集合時間と場所は今日と同じでいいよね。あっ、そうだーここら辺の近くに美味しいクレープ屋があって―」

 駄目だ。断るタイミングを逃した。


「お待たせしました。メロンソーダです」

 店員が俺の注文したメロンソーダをテーブルの上に置いて軽く会釈した。

 俺も会釈で返す。


「失礼します」

 店員がいなくなった後、俺はメロンソーダを手に取り、口を付ける。うまい。

 暑い時に飲む炭酸飲料は格別だ。改めて実感する。


「あー。上井草君もう飲んでるー。私のきてから乾杯しようよ乾杯ー」

 誰が乾杯なんてするか。

駄文ですが、これからもお付き合いしてくださると嬉しいです。

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