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6分●黙って俺にキスをしろ!(男1女1)

作者: 七菜 かずは

タイトル:黙って俺にキスをしろ!(男1女1)

著者:七菜 かずは






CAST

(男1女1)


チン コウ♂:

チンピラ? 黒いスーツに赤毛。細身で釣り目。妖しい。

喋り方は、エセ関西弁でも、標準語でも、カタコト日本語でも、なんでもOK。人称:俺


なみだ めぐ♀:

姿は可愛らしい少女。ピンクのローブに、肩掛けの大きな鞄。茶色い姫ロングヘア。赤ぶち眼鏡。人称:わたし






【開幕】


現代。日本。都内某所。ホテル街。真夜中。道端で跪いている涙と、その前で煙草を吸っている陳。

ひょんなことで出会ったこのひょろい男とこの大人びた少女。


陳「おめでたいじゃねえか」


涙「違う――」


陳「じゃあお幸せに。あばよ」


涙「違うの……」


陳「もう会うこともねぇだろうな」(彼女に背を向ける――)


涙「待って!!」


陳「んだよ? 何?」


涙「私今からあり得ないこと言うけど聞いてくださいチンピラさん!!」


陳「アンタいい加減俺のことチンピラって呼ぶのやめろ」


涙「嫌です!!」


陳「憤慨ついでに眼鏡曇ってんぞ」


涙「うるさいです聞きやがれです!!」


陳「なんだってばよ」


涙「わたし、あなた好きです」


陳「あ?」


涙「すき」


陳「へえ。そりゃまた凄い話だな。まぁ、土産話にするわ。ははは」


涙「へらへらしないでよ、本気の本気なんですから!!」


陳「そーかよ」


涙「ええ!!」


陳「あんた、あの顔だけイケメンと結婚すんだろ?」


涙「予定が変わりました」


陳「予定ね」


涙「変わらないはずでした」


陳「ふーん」


涙「煙草、やめて下さいポイ捨てっ! チンコウ!」


陳「フルネームで呼ばないでお願い」


涙「悔しかったのですよ」


陳「うん?」


涙「おチンコさんは、わたしより歌がうまい」


陳「おい、ウはどうした。おを付けんな。もう名前で呼ばないでお願い」


涙「わたしより歌がうまい人なんて、死ねばいいです」


陳「何それ。別にうまかねーよ」


涙「チンコさん」


陳「陳 香、な」


涙「チャイニーズに恋するなんて」


陳「母親は日本人よ。育ったのもずぅーっと日本よ。つまり」


涙「昨日、寝ているわたしにキスしましたね」


陳「起きてたの?」


涙「チンピラさんも、わたしのこと好きになったんでしょ?」


陳「それ自意識過剰」


涙「今ココで泣き叫びながら交番に駆け込んでやりましょうか?」 

陳「お願いやめて」


涙「すきなの」 

陳「ははは俺のどこが」


涙「わかりません」 

陳「意味わかんね。帰れ」


涙「もう1日、泊めて下さい」


陳「あんたはまっとうに幸せになれっつってんだよ」


涙「そばに居たいの」 

陳「うざってえええええ! 犯すぞ!!」


涙「うざがられてもいいです。だってわたしキモいし!」


陳「キモくねえよ!! よくねえよ嫌がれ!!」


涙「腕とか太いし!!」


陳「太くねえ! ちょいぽちゃなだけ!!」


涙「ぽちゃなんて可愛い言葉で片付けないで下さい」


陳「なんなんだよ!!」


涙「行かないで下さい」


陳「行かないでとか言われるとな、行きたくなるんだよ!!」


涙「下ネタですか。変態」


陳「ちげえええ」


涙「チンコさん」


陳「チン・コウ!」


涙「あのですね」


陳「は! ア!」


涙「えっと何を言いたかったのか忘れました」


陳「トリアタマかよ!」


涙「一歩も歩いていませんよ」


陳「つまりおめえはトリアタマ以下ってことだ!」


涙「言葉の暴力で訴えます」


陳「やってみろやうざってえ!」


涙「わたしのことが好きなくせに」


陳「好きじゃねえ。いい加減にしろ勘違い女」


涙「泣きますよ」


陳「泣いてわめいてろ」


涙「わーん!!!!」


陳「お、おい」


涙「お巡りさん痴漢です!! おーまーわーりーさあああああ」


陳「ギャー!!」(涙を取り押さえる)


涙「やっと触ってくれた」


陳「ぐっ、よ、寄るな」


涙「チンコさんが握ってきたの」


陳「チンコ言うないうとろおが!」


涙「なんなんですか」


陳「それはこっちの台詞だ! 一体どーしてこんなにも構う!? ほっとけよ!!」


涙「最初にわたしの手を取ったのは、あなたです。逃がしてくれなかったのは、あなたです」


陳「違う」


涙「違わない!」


陳「違うっ!! あぁ゛!? そのお喋りな口ん中に、鉛玉ブチ込んでやろうか?」


涙「えいっ」(彼を抱きしめる)


陳「……おい……」


涙「ぎゅー」


陳「ふざけんな……おい……」


涙「チンコさん、手も身体も冷え冷えですね」


陳「お前、熱いな」


涙「どきどきしていますから」


陳「……ナミダ」


涙「はい」


陳「最後の忠告だ。……頼むから、離れてくれ」


涙「ふふ。それ、忠告じゃなくてお願いになっちゃってませんか?」


陳「お前むかつくんだよ」


涙「わたしも。たまに」


陳「涙」


涙「はい」


陳「黙って俺にキスをしろ」


涙「喜んでっ」






END

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