第19章 バーテン
あきらが退院して数日が過ぎた。
とりあえず仕事をしなければ食べていくことも考えないといけない。
以前の職場にはもどれないだろうし、今度はなにをしようかと考えていた。
元々お酒を飲まないあきらは誰かに連れられて飲み屋にいったことはあっても、一人で行ったことはなかった。
ビールもおいしいと思ったことはない。
飲めないわけではないのだ。
ただ愛想が良いわけでもないので接客はそもそもは好きではなかった。
どうしても顔に出てしまう。
あまり愛想が悪くてもできる飲み屋はないか考えていた。
外を歩こうと思った。
もう外は真っ暗だった。
JRを使って飲み屋街にまで行った。
数分歩くとバーテン見習い募集の貼紙を見つけてそこにはいってみた。
暗い店内には女性客数人とカウンターにはお客が一人。
あのー外の貼紙を見たんですが・・
あ〜君できるの?バーテン
経験はまったくないんですけど、勉強はします。
ふ〜ん・・まあ、ルックスもよさそうだし、働いてみる?
夜の仕事はわりと簡単に決まるものだと思った。
ちょっとカウンターに入ってみて。
そう、40台後半のマスターに言われてカウンターに立ち、マスターは外からそれを眺めた。
うん。いいね。背もちょうどいいし、絵になるし。
ありがとうございます。
いつから働けるの?
もう、今からでも。
んじゃ、今日はまずはバーテンよりウェイターにでもなってもらうかな。
あきらは裏に通され、着替えをもらうと早速、ウェイターになって働いてみた。
客の注文をとる。
それを伝票に書いてカウンターに持っていく。
カクテルの名前を覚えるのが大変そうだけど、なんとかなるだろうと思っていた。
マスター、ここのトイレは?男女別?
トイレ?
玄関の横のところ。トイレは男女一緒だからわかれてないから。
そっか。それは好都合だ。
内心そう思っていた。