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帰路は"ドキドキの連続"

 バツゲームで女の子に告白するだけあって、聖は女の子の扱いに慣れていた。


 車道側を歩く。

 歩幅をあわせる。

 少しぶっきらぼうで言葉は冷たいけど、その内容は優しかった。


「綾波君、誕生日11月なんだ。じゃあまだ16歳なんだね」

「ああ。貝沢さんは6月?」

「え、なんでわかったの」

「雰囲気?てか、勘?」

「すごーい!そう、6月だよ。綾波君よりおネェーさんだね」

「何日?」

「23」

「来週か・・・じゃあまだ同い年。お姉さんじゃないよ」

「そういうの屁理屈って言うんだよ。知ってる?」


 ふてくされた美波留を見て聖はまた笑った。

 その笑顔だけで機嫌が直るのだから自分も大概現金だなぁーと美波留は思う。

 と、ぐい、と肩を掴まれて後ろに抱きとめられた。

「あぶねーなー」

 頭上から聞こえてくる聖の声に美波留は真っ赤になった。



 今、もしかして綾波君に抱きしめられてる?



「ちゃんと前見て歩けよな。電柱ぶつかるなんて一体いつの時代の漫画だよ。・・・・あぁ、でも俺らには一昔前でもおネェさんにはそうでもないのか」

「・・・・・・・っ!」



 バカにされているのに耳元でささやかれたせいで何も言い返せない。

 聖の息がかかるたび心臓がドックンドックンと速さを増してゆく。



 耳っ・・・・・!

 そ、んな所でっ笑わないで―――!!



 聖の腕の力が少し強くなったと同時に体が離された

 ホッとしたものの胸の動悸はまだ治まらない。

「早く帰ろう」

 そっけないともとれる聖の声に美波留の高揚が静まっていく。

「・・・・うん」


 もう少しそばにいたい


 そう思っているのは自分だけなんだという事を痛感させられた。





「・・・あ、そこ。私の家、だから・・・」

 青い屋根の一軒家を指差して美波留は言った。

 入り組んだ住宅街の一角にある2階建ての至って普通の家だ。

「・・・・・・」

「・・・・・・」


 か、会話が生まれない・・・っ!


「あ、ありがとう。今日は本当に助かった」

「あぁ・・・」

 これだけは、と思いお礼をのべると聖は不機嫌そうな顔になった。



 な、なんでお礼言って不機嫌になられなきゃいけないんだろ・・・・



 気まずさから俯いてしまったしまった美波留は聖が何か言いよどんでいる事に気付かなかった。

 聖も聖で、結局何も言わなかったので必然沈黙になる。


「・・・それ、じゃ」

「・・・ああ」


 雰囲気に耐えれず逃げるようにして家へ駆け込んだ。

「あれミハル。遅かったな」

 4つ上の兄のあらたが声をかけてくるが適当に頷くだけだった。

 着替えてくる、とポツリ呟くと2階の自室へと向かう。

 部屋のカーテンをあけると角を曲がる聖の後姿が見えた。




 ―――これは夢だろうか



 最後に会ったのは昨年の11月。

 泣いて泣いて、忘れなきゃと言い聞かせた彼の笑顔。


 最初に彼を見つけたのは同じ年の6月。

 それから丸1年―――。





 想いが時を経て、

 止まってた歯車が動き出す。



すごい地味に兄ちゃん初登場笑

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