再会は"正義のヒーロー"
「お願い美波留!」
美波留は目の前で手を合わせて拝み倒している純を見てため息をついた。
「今日OBの先輩たちが来てくれるの連絡し忘れてて帰っちゃった子がいるのよ~。人数足りないの~お願い助けて~」
「でも・・・私、役に立たないと思うけど」
純の"お願い"はバスケ部の助っ人だ。
美波留は156cmの自分の身長を示唆してそう言った。
授業では"上手い"と評価されても部活レベルではない事は自覚している。
純はそんな美波留に詰め寄った。
「いーの!美波留足速いし、コート走り回って試合をかき乱して欲しいの!お願い!帰宅部にはもったいないその足をぜひバスケ部のために使って!」
「どこのセールスマンだよ」
隣に座っていた里島健人 (さとじまけんと)がつっこんだ。
純はギロリと健人を睨むと一気にまくし立てた。
「うるさいわね、あんた美波留が一体50メートル何秒だと思ってんのよ。7秒台が常で調子いい時6秒出すのよ!?6.9よ!?」
その通りだった。
運動神経は普通だし普段の動作はのろいくらいなのだが、走らせたらバカみたいに美波留は速い。
頼み込まれて結局美波留は折れた。
体育館にボールとシューズの音が響く。
「12番マークして!」
12のゼッケンをつけた美波留はその小さい身体を利用してちょこまかと動き回っていた。
「先輩!」
純のパスを受け取った4番の人が綺麗にシュートを決めたのと同時に「ピピピ――――」と試合終了の音が鳴り響いた。
「ありがとうございました――!」
結果は84-24でOB生の勝利。
「美波留ありがとー」
純がタオルで顔を拭きながら美波留に近寄った。
「つかれたなーつかれたなー。本当なら家でテレビ見れてたのになー」
「あーはいはい。缶ジュースでいいわね」
「やったー」
「先にシャワー浴びてこよ。ジュースは帰るときでいいでしょ」
美波留は純からタオルを借りてシャワーを浴びた。
学校でシャワーって変な感じ
濡れた髪をタオルでガシガシとしながら部室を出ると先ほど試合したOBの先輩たちがいた。
「おつかれさまー」
「君上手だね、純と同い年って言ってたけど2年から入ったの?去年いなかったよね」
美波留の10cm上の高さでそう言ったのは林由美だ。
大学1年生の美人で、双子の弟、夕飛共々人気者である。
「ミハルちゃん?これからみんなで食べに行くけど、どう?」
夕飛がその綺麗な顔を近付けながら聞いてくる。
「・・・・っ!?」
真正面から見たその格好よさにドギマギしながら美波留は首を横に降った。
「久々に体育以外で体動かして疲れちゃったので、今日は帰ります」
「あ、部員じゃないんだ」
「あたしが無理やり頼んだんですー」
純が自分の手柄だとでも言うように手を挙げると女子バスケ部のキャプテン、菱茅紫乃が「いばる所じゃないでしょ」と叱った。
由美はそれを聞いて納得顔である。
「あーどうりで。よく動くわりには、えっと・・・」
「貝沢美波留です」
「そうそう、美波留ちゃんにパス行く機会少なかったもんね」
そして由美や紫乃たちは本格的なことを論じ始めたので美波留は純に声をかけて帰ることにした。
プロローグから1年たってます