プロローグ2
「・・・・で、なんであんた泣いてんのよ」
美波留の涙でグジュグジュの顔を見て純が呆れたように言った。
「幸せ真っ最中でしょーが、あんた」
「ちがっ・・・違うの」
美波留はフルフルと首を振った。
「バ・・・バツ」
「ん?」
「バツゲーム、なの」
「・・・は?」
美波留は昨日の事を話しだした。
昨日市の大きな図書館に行った時、そこでアヤナミ君を見つけたのだ。
友達と一緒だった。
さりげないのを装って彼らに近付いていく。
向こうはこっちに気付いていないみたいでヒソヒソと何か話していた。
「やっぱ無理だって」
「何言ってんだよ、勝負はお前の負けだったろ」
「だからって告白はないだろ」
アヤナミ君の口から"告白"の単語が出てきて美波留はドキッとした。
「大丈夫だって。他校生なんだから、気まずくなる事はない」
アヤナミ君の友達がそう言って彼の背中をたたく。
「じゃ明日。他校生ちゃんに告白な。結果は逐一報告しろよ。もししなかったら飯おごれ」
「なんで俺がおごんなきゃなんだよ」
「てめぇが始めた勝負の結果だろが。むしろ告白現場についていかないだけマシと思え」
美波留はそこまで聞いて状況を理解した。
"勝負"
"負け"
"告白"
"報告"
勝負に負けたアヤナミ君は他校生に告白してその結果を報告しなくちゃいけないらしい ―――――バツゲーム。
ひどい、と思った。
そんな事するなんて、て悲しかった。
でもそれ以上にアヤナミ君が他の子に告白する・・・たとえ本心じゃなくても。
イヤだ。
そんなの、絶対にイヤだった。
だから今日は自分から近付いた。
彼が自分を告白の対象に選ぶように。
そしてそれは、見事成功したのだ。
好きなんだ、ずっと――――――――付き合ってくれませんか
ずっと見ていた二重のキレイな目が真剣な眼差しで私を見てる。
形のいい唇が言って欲しい言葉を紡ぐ。
でも、それは。
「ごめんな、さい・・・・」
たとえ付き合えてもそれは仮初。
きっと彼を知れば今以上に好きになる。
そしたらもう引き返せない。
今ならまだ、諦めきれるから
翌日から彼はいつもの電車に乗ってこなくなった。
次話から本編です