感謝を"コーディネーター新へ"2
「本当にこれで大丈夫~!?」
「…」
「やっぱ髪とかもしたほうがいいのかなぁ~!?」
「トップスも甘すぎじゃない~!?」
「…」
「靴ってあのチェックのでいいと思う~!?」
「だー!!!やかましいわ朝っぱらから!」
まだ半分夢の中にいた新はボサボサの髪をさらにぐしゃぐしゃにしながら怒鳴った。
が、今の美波留にとって新の怒りなど些細な事でしかない。
「しぃ兄ちゃん、変なところない!?」
「頭」
「やっぱ髪の毛いじったほうがいいっ!?」
「そういう意味じゃねぇよ」
「やっぱ結んでくる~!」
ちっと舌打ちすると、新は椅子から立ち上がり美波留の頭にチョップを食らわせた。
「い、痛い!」
「今ので少し頭よくなったか」
「はぁ?何馬鹿な事言ってるのー」
「あ?」
ギロリと睨まれて美波留は口を噤んだ。
や、やばい…そろそろキレそう
さぁーと興奮していた頭が冷めて行く。
新は美波留の髪を乱暴に束ねると「はぁ」と溜息を吐いた。
「何もしなくていい。そういうのは数重ねてイメージを固まらせた後に変化加える方が効果的」
バサリと手を離され髪が重力に従って下に流れ落ちていく。
新は椅子に座り直すと新聞紙をバサリと広げた。
顔つきは穏やかなので最悪の展開は避けれたらしい。
「で、お前は何をさっきから喚いてるわけ」
「…コーデ、変じゃない?」
「俺の腕に間違いはない」
新がコーディネートした「遊園地デート服」は、友達と遊ぶ時のファッションに甘さを加えたものだった。
美波留の持っていた七分丈のデニムのパンツに、榊が買ってきた白色のふんわりとした甘めのキャミソール、そしてその上から新のくれたグレーの七分袖のカーデガンを羽織っている。
七分×七分で下品にではなく肌を見せれるのがいいらしい。
「靴は…?」
「チェックのパンプス持ってたろ。あれ履いてけ。ヒール低いし服が大人しめな色合いだから、あんくらいカラフルな靴のがいい」
美波留は新のアドバイスに、緑、オレンジ、白、黄色と様々な色が使われてる靴を頭に思い浮かべた。
「アクセは腕に2、3個程度にしとけ。関係浅い段階であまり付けすぎるといい印象あたえないぞ」
「わ、わかった」
「化粧とかもすんなよ。普段からしてるならまだしも、ノーメイクの時に会った奴ならそういう女の武器は出し惜しみしとけ。まぁリップくらいはした方がいいかもしんねぇけど」
「わかった!」
「飯奢ってもらったらお礼は3回な。買ってもらう前に1回、物渡されて1回、食べ終わって1回。それ以上はくどい。いただきますとごちそうさまは必須」
「な、なるほど…」
この前コーヒーを奢ってもらったときの美波留の対応はダメダメだったという事か。
「…ってか早く行けよ!そのうちサカキ来るぞ」
「行ってきまーす!!」
シスコン兄貴に見つかれば男の子とお出かけなんて阻止されるに決まってる。
それを回避するためさっさと家を出て行った美波留を見て、双子の兄貴の名前の使い方を心得ている新は満足そうに新聞に目を通した。
新君の意見はあくまで新君の意見
ただの持論なのであまり参考にされないことをおススメします笑