感謝を"コーディネーター新へ"
さあ困った。
一体何を着て行こう。
純に怒られ聖とメールを交わし、遊園地に行くのは今週の金曜日に決まった。
美波留はクローゼットの中を開けて落胆した。
イ…イマイチ
美波留自身が好むシンプルな服と
新がサイズを間違えて買ってきたのを譲り受けたメンズものと
榊がシスコンぶりを大いに発揮するやたら可愛らしい服と。
組み合わせいかんでは上手に着れるのかもしれないがこの畑違いすぎる服を合わせる上級テクニックを美波留は持ち合わせていない。
癪だけど、ここはしぃ兄ちゃんに頼むか…
美波留は新の部屋の前に行き扉をノックする。
「誰ー?」
「しぃ兄ちゃん」
「ミハル?」
かちゃりとドアがあいてだらしない格好をした新が出てくる。
「何?お前が俺に用って珍しいじゃん」
「実はお願いがありまして」
「ほー」
にやり、と新は嫌な笑い方をした。
「お願いとな。ふむ、苦しゅうない。述べてみよ」
「ははー恐れながら我がお兄様。服の"こーでぃねいと"をして頂きたく存じまする」
「服のコーディネート?」
意外な言葉だったのかおふざけ口調から元に戻った。
「うん、私がもってる服ってなんだかバラバラで。しぃ兄ちゃんなら上手に出来るかなって」
「そりゃあ出来るだろうけど」
こういう兄貴は乗せるに限る。
「サカキは?」
「さぁ兄ちゃんは…」
「あぁ…だよな」
榊のセンスも悪くないのだが、シスコンが災いして美波留のものに限り非常に残念な結果となる。
どこぞの世界にピンクのフリフリキャミワンピを実の兄にもらって―――それが好みならまだしも、ただの兄の盲目的な愛ゆえの判断で―――喜ぶ妹がいるというのだ。
「お前ってどんな服もってるの?」
当たり前にように美波留の部屋に入る新もこの時ばかりは美波留も咎めはしない。
クローゼットの扉は先ほど美波留が開けたままの状態で放置されている。
「お前の服ワケわからんな」
「5分の1はしぃ兄ちゃんからの流れものですが」
「ああ、あのセンスのいいゾーンだろ」
しれっとそんな事を言って新は服をあさりだす。
「んで?」
「え?」
「どこに、誰と、いつ、行くのか教えてくれなきゃ合わせようにも困るだろ」
「…う」
やっぱり?と上目使いで見上げると当然と頷かれた。
「遊園地…」
「じゃ、スカートは却下な」
バッサリと切り捨ててクローゼットのズボンをあさり始める。
スキニーのデニム、ショートパンツ、ハーフパンツ…
いろんな服に合わせやすい万能型ではあるが裏を返せば花がない服だ。
「そんで、相手の男はどんな奴?」
あまりにも自然で一瞬聞き流すところだった。
「☓△★◎〇!?」
突然のカウンターをくらって美波留は言葉にならない声を出す。
「わかるに決まってんだろ、遊び相手がただの友達ならわざわざ兄貴に聞くほど服ぐらいで悩むか」
「な…ち、ちがっ…」
「違うの?なら俺おーりた」
ポイッと手に持っていた服をベッドに放り投げて新は部屋の出口の方へと向かった。
「待、待って!!」
「……」
にやり。
振り向いた新の顔には、それは維持の悪い笑みが浮かんでいたとか。
なんだかんだで仲のいい兄弟妹。
榊君も妹さえからまなければ相当カッコいい設定です。
あくまで設定です。