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対面は"2度目のはじめまして"

かーなーり、間があきました。

申し訳ございません…。

待ってた人いるんですかね…

 0523_t7.03@××××.××.××

 三度目の正直。今度こそ。

 

 

 

 家に帰っても美波留はまだ夢心地でいた。気が付いた時にはもう9時を5分ほどまわっていた。

 いつのまに、と焦って携帯を取り出す。

 ふっとリフレインする、別れ際の言葉。

 

 そういや俺、貝沢さんのアドレス知らないや。

 

 もうホームに電車が来ていて、今からアドレスを教えるのは赤外線を使っても難しい。

 そんなタイミングで思い出したように聖は言って、

 

 連絡、頂戴。待ってるから。

 何時になってもいいから。

 

 思い出すだけで胸がキューンとなった。

 し、していいのかな。本当に・・・。

 でも聖は美波留のアドレスを知らないわけでこちらからアクションをとらない限り何も起こらない。

 

 

 女は、度・・・度胸!

 えーい!

 新規画面を開き、ボタンをプッシュしていく。

 

 

 件名:こんばんは

 

 

 うーん、と美波留は首をひねり文字を打ち直していく。

 

 

 件名:はじめまして

 

 

 メールは初めてだし、間違ってないよね?

 誰にでもなくそんな事を言いつくろう。

 

 

 件名:はじめまして

 本分:貝沢美波留です

 今日はありがとうございました

 メールアドレス…私のカンチガイでごめんなさい

 前助けてもらった分も含めて、いつかお礼させてくださいね

 

 

 なんか…可愛げが、ないメール。

 音符マークでもつけようかな

 いやいやいや。やたら絵文字使うのってどうなの?

 お兄ちゃん'sもよく言ってるじゃん。

「絵文字って、いっぱい使ってると目がチカチカする」

「バカっぽいよな」

 うん、絵文字却下。

 可愛らしさより礼儀を優先しよう。

 

 いけ、送信

 送信

 送信…

 

 

 

 

 

 

 

「おいドチビー」

「うひゃうっ!」

 

 バタンと勢いよく開いた扉の向こう側から出てきたのは新だ。

「いきなり入ってこないでよーノックは!」

「黙れチビ」

「自分だってさぁ兄ちゃんより低いくせに…」

「あ?」

「ごめんなさい!!!!」

 鋭い目つきで睨まれて一も二もなく謝る。

 さぁ兄ちゃんとは新の双子の兄、さかきの事だ。

 ちなみに新は「あらた」を「しん」と呼びなおしてしぃ兄ちゃんと呼んでいる。理由は簡単であぁ兄ちゃんでは間抜けすぎるからだ。

「それで何の用?」

「バイト先でケーキくれたから食うか?」

「食べるー!」

 ゲーマー、UFOキャッチャー成功率100%を誇る新のバイト先は意外や意外のアットホームなカフェである。

「んじゃさっさと降りて来い。さっきから何携帯とにらめっこしてんだ」

「そんな長くない。5分くらいか」

「十分だよ!……携帯?」

 恐る恐る形態の画面を見てみると、そこにはくっきりと「送信完了」の文字があった。

 

 

「キャ――――――――!!!!」

 

 

 普段使わない筋肉を使って声の限り叫ぶ。

 すると階下から「美波留!?」と新のと全く同じ声がした。

 美波留のもう一人の兄、榊だ。

 彼の片割れは最大の敬意と皮肉を込めて榊の事をこう呼ぶ。

 ――――――――――シスコン、と。

 

「あ、うるさいの来た」

「また新お前か?」

「ちげーよ」

 事実を確かめるようにうかがってくる榊に美波留は肯定を返す。

 

 

 

 

 

 

 ブブブ―――――――――

「キャ―――――――――!!!!」

 

 二度目となる美波留の叫びが貝沢家にこだました。

 新にさんざん罵られ、心配してくる榊を追い帰し、ようやく一人になれた美波留は慎重に携帯のボタンを押した。

 ケーキはこの際二の次だ。

 

 

 from:綾波 聖

 件名:こんばんは。

 本文:二度目の初めましてだね^^

 アドレスの事はむしろ字が汚かった俺の方が悪いから、貝沢さんは気にしないで。

 昨日もメールくれたらしいのに、ごめんね。

 

 

 

 胸がキューンとした。そんなの少女マンガだけだと思っていたのに。

 "二度目の初めまして"という言葉の言い回しがすごく素敵だと思った。

 顔文字も可愛らしいし、誠実な謝罪も好感が持てた。

 深呼吸をする。1回、2回……。

 

 

 

 件名:月がキレイですよ^^

 本文:嫌な思いなんてしてないです!

 私が読み間違えたのが本当バカなんです…

 そういえば今日はバスケ部練習なかったんですか?

 

 

 

 送信。

 ふぅ、と息をついて気付く。

「あ――――!!!!」

「いいかげんにしろこのチビ!」

 階下から新の怒号が響く。

 ちくしょう、大学生なんだからもっと心に余裕をもって可愛い妹の乱心にくらい目をつぶってよ、などと自分勝手満載な文句を心な中で吐きつつも、今日で3度目となる絶叫を吐いた身としては強く出れない。

 第一、今美波留の最重要事項はそれではない。

「綾波君…部活がバスケ部って言ってなかったよね~…」

 今日の会話で部活の事が話題に出たものの、聖はそれがバスケ部である事は明示してないし、聖がバスケ部である事を元々知っていた美波留もその質問をしなかった。

「…馬鹿じゃないの私~」

 聞こうよ、そこは話の流れで聞いとけよ。

 思わず過去の自分に突っ込んでしまう。

「どうしよう~・・・」

 ブブブー

「~~~~~~~!!」

 さすがに4度目の失態となる絶叫は、口元に枕を押し付けることで堪えた。

 受信箱を開くのが怖い。

 

 

 

 from:綾波 聖

 件名:部屋から見えるよ、丸くて可愛いよね。

 本文:心配してくれてありがとう。

 大丈夫だよ、きちんと出てから行ったから。

 そのせいで待たせちゃったんだけど…本当ごめん。

 貝沢さんは部活入ってなかったらしいけど、もし部活あったらとか思ったら、俺強引だったよな。

 

 

 

 はぁ―――――――と安堵の溜息をもらす。

 助かった、バスケ部の事、気付いてないらしい…。

 

 

 

 件名:うさぎさんが住んでいるからね=

 本文:気にしないでください

 強引とか迷惑とか、そんな事本当にないです

 後、決まった部活には入っていないけど、たまにいろんなのに混ぜてもっらたりしてます

 

 

 

 聖が謝罪してきたことに対する返答のみを記述する。

 メールテクとしては最低なんだろうけど、さっきみたいな失敗を犯すのは怖い。

 

 

 

 from:綾波 聖

 件名:毎日モチついてたらきっとたくましいな(笑)

 本文:そっか、よかった。

 いろんな部活に混ざるって、運動神経いいんだな。

 あとずっと気になってんたんだけどなんでメールだと敬語なの?

 

 

 

 to:綾波 聖

 件名:オスかなー月のうさぎさん

 本文:ただの人手不足なだけだよ^^

 敬語…なんでだろう、気付かなかった

 (これも最初敬語で打っちゃって書き直したんだ^^;)

 

 

 

 from:綾波 聖

 件名:性別とか出すと幻想世界が一気に現実(笑)

 本文:俺より年上なのにな(笑)

 誕生日6月23日だったよね?何か予定あるの?

 

 

 

 鼓動が早くなったのを自覚した。

 誕生日、覚えててくれたんだ。それだけで泣きそうになるくらい嬉しい。

 

 

 

 to:綾波 聖

 件名:えー、だってマッチョのうさぎさんがメスなんてヤだもん

 本文:うん、17歳になります!

 綾波君は11月5日だよね

 予定…マッシロです(/_;)

 

 

 

 from:綾波 聖

 件名:オスだったらいいんだ?(笑)

 本文:本当に?

 じゃあさ、ちょうどいい誕生日プレゼントがあるんだけど。

 遊園地のチケットなんだけどさ、よかったらいらない?

 

 

 

「え」

 考える間もなく再び携帯が新着メールを受信する。

 

 

 

 from:綾波 聖

 件名:また明日。

 本文:電車、今日と同じ時間だよね。

 明日の朝の時一応持っていくから。

 今日はもう遅いし、おやすみ。

 

 

「お、おやすみ…」

 反射でメールを返してから我に返る。

「…え」

 これってどういう事?

 待て待て待て。落ち着いてよーく読んで。

『いらない?』であって『一緒に行かない?』ではない。

 勘違いしてしまう所だった。

 

 

 

 カンチガイ

 

 

 

 ツキン、と胸のどこかが痛む。

 けれど今は「また明日」と言える関係になれたことが嬉しくて仕方がなかった。

 


今回ちょっと長めで。

メールです。件名で本分とは関係ない会話するのって楽しいですよね。


あと友人に言われて気付いたのですがそういや「月がきれいですね」って夏目漱石の「I love you」でしたね。

無意識でそれをした私の頭がお花畑なのか、美波留ちゃんの恋心が無意識に成したわざなのか…。

まぁ、どっちにしろあの一文に裏の意味はありません(笑)

本当にただ月がきれいだっただけです(笑)

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