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再会は"憧れの放課後デート" 2

 


 駅の構内には人が溢れていた。

 人波をかき分け、聖との約束の場所へと足を向ける。

 コーヒーショップに聖の姿はなかった。

 肩の力が抜けたのは事実だが、失望まではしなかった。


 ―――だって黒峰校は進学校だから

 まだ学校が終わっていないんだ。


 そう、言い聞かせるように思った。

 そして、はっとする。

 綾波君はバスケ部じゃなかったっけ?

 じゃあ放課後は部活があるはず。

 平日の今日、ここに来る可能性は――――ゼロかもしれない。


 これが・・・現実、なのかな。

 目の前の視界がぼやけた。




「ごめん!」

「っ・・・!?」



 突然背後から大声が発せられ、飛び上がってしまう。

「あ、は、は、わ」

 もはや言葉ではないただの音が口からもれながら後ろをふりむくと、



「・・・綾波君」

「遅れてごめん!俺から言っといて・・・」



 長袖のシャツを肘が見える位置まで腕まくりしている聖の姿をまじまじと凝視してしまう。

 嘘・・・本当に来た。



「・・・良かった」



 美波留は心の声が口に出たのかと思って慌てて手でふさいだが杞憂だったと気づく。

「来てくれないかと思った」

 本当に、嬉しそうに。

 そんな風に笑いながら言った聖を見て美波留は自分の頬が熱くなったのを感じた。




 そこにずっと立っているのもなんなのでコーヒーショップへ入る。

 ここの駅はずっと利用しているが、このお店に入るのは美波留は初めてだった。

「何にする?」

「えっと・・・」

 実は美波留はコーヒーがあまり好きではない。

 故にこんなにたくさんの種類があってもわからない。

「ク、クリームモカ」

 飲んだこともなければ名前を聞くのも初めてだが可愛らしい名前の響きと写してある写真の盛り付けの愛らしさから選択する。

 聖は頷くとなれた動作でカウンターに立った。


「クリームモカとエスプレッソ」


 当たり前のように支払いをした聖に美波留の方が慌てる。

「お、お金・・・」

「いーからいーから」

 少々強引ともいえる口調でそう言うと、聖はトレーを持って席に着いた。

「綾波君、私ちゃんと・・・」

「いーからいーから」

 にこにこと聖は上機嫌でコーヒーにシロップと砂糖を入れた。

「俺、エスプレッソですらそのままで飲めないんだよね、情けない事に」

「そんな!私だってコーヒーはブラックで飲めないよ!情けないなんて・・・」

 エスプレッソとブラックコーヒーは大分違うのだがその差異がわからない美波留は的外れなフォローを入れる。

 聖はそれに突っ込むことなく笑って一口飲んだ。

 美波留も自分が注文したモカを観察する。白いクリームがたっぷりのっていて、コーヒー独特のあの黒さはまだ見えない。


「・・・じゃなくて、お金!」

「払わせてよ。今日来てくれたお礼と昨日間違ったアドレス渡しちゃったお詫び」

「でも、ここに来ようって思ったのは私の意志で・・・お礼って言っても・・・」

「・・・・」


 はぁーとため息をついて聖は俯いてしまった。


 あ、しつこかったかな・・・・


 美波留も傷つきながら俯く。

 短い沈黙の中、次、と聖が言葉を発した。

「どうしても気になるっていうなら・・・次から割り勘にしよう。だから今日は俺におごらせて?」



 次。



 それは、まるで魔法の言葉。

 望んでもいいのだろうか、「次」を。


 約束したわけでもないのに、次会うことを聖が許してくれたというだけで美波留はどうしようもなく嬉しくなった。



「それじゃあ・・・その時は私におごらせてね?」

 そう言うと聖は苦笑した。

 その苦笑の意味が分からずついマイナス思考になってしまう。

 もしかして、社交辞令、だったのかな・・・?


「あ、ほら!私もこの前助けてもらったお礼がしたいし!ね!次はおごらせて!」

 もっともらしい理由をみつけて自分で頷く。

 そうだよ、私まだ、その件のお礼してなかった。

「ああ・・・貝沢さんは電車通学なんだよね。あれから・・・その、大丈夫?」

 もごもごと言いにくそうに聖の語尾が小さくなる。

「うん。綾波君のおかげだよ」

 お世辞でなく心からそう思って言ったのだが、聖は「そう?」と軽く流してしまった。

「朝はいつもあの時間?」

 電車の事を聞かれているのだとわかって頷く。

 本当はあと数本遅くても間に合うのだが聖と同じ電車に乗るために続けた半年以上の習慣で、結局聖と会えなくなった後もかわらず早い電車に乗っていた。





終われなかった…

3まで続きます

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