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出来るだけシンプルな

都合いい系の吸血鬼─レミンは、異世界での旅を趣味としている。異世界の色々を楽しみたいから。

今回はカメラを使って異世界へと向かうのだった。

「ん〜…あー…あー…マイクテステス…ん…?わかんね」

 カメラを色々と弄りながら独り言を呟く。今まではずっと録音しかしてなかったから、カメラというものの知識が全くない。

「とりま…これで…見えてはいるし…音も入ってるでしょう!よし。」

 ふぅ。と一呼吸。

「どうもこんにちは〜都合いい系吸血鬼のレミンです。今回からカメラを導入というこ・と・で!慣れないことばかりなので色々と不都合が多いですがね。操作方法わかんないし操作方法わかんないし操作方法わかんないし!

ま、適当に挨拶も済ませたところで行きましょうか。異世界に。

今回はどこに行きましょうか。カメラを導入して初なのでシンプルなのにしときましょうか」

シンプルなピンチ…それは魔王とかそこら辺かな?ゾンビパニックもありだけど、それはこの間やったし、あんま王道ではない。

そんな事を考えながらポータルの設定とセッティングをしていく。

行き先は、魔王に支配されてて、苦しんでいる民衆がいて、勇者とか冒険者とかがいて…ギルドとか何やらがある世界。

所謂、ファンタジーとやらですかね。

「では、参りましょうか」

と、その前に一応解説しておこう。

今回のチャートはこんな感じ

1 魔王城に行く

2 勇者パーティを見つける

3 実力を確認する(別に戦わないよ)

4 魔王を倒すor弱らせて勇者にトドメを任せる

こんな感じでいっか。雑だけどいつもこんなもんだし。というかチャート立てたの初めてだし。だって計画とか面倒くさいでしょ。みんなよくそんなの立てて物事をやろうって思えるよね。行き当たりばったりで行こ〜よ〜。

あ、ちなみにポータルにはもう入りました。

ポータル内の謎空間(四次元とかなんかな)を今現在落下中。

「あ、光が見えてきましたね。カメラがありますからね。今回は絶景を映して始めましょう!」

と意気込んでいたのだが…ここで悲しいお知らせができてしまった。

「えーーー…ストーリー終盤のようでしたね…」

空は紫、森の木々は葉を落とし目を赤くしたいかにも凶暴そうな魔物がはびこっている。

その近くには、さっきまで火がついていた様子が伺える村が見受けられる。

「これは…今回の企画にぴったりですね!これならわざわざ繁華街のギルドを探して、登録して、情報集めて、勇者パーティを探す必要もなくなりました!」

なぜ探す必要がないかと言うと、恐らくだけど、セオリー通りなら多分勇者パーティは魔王城にいる、もしくはその周辺にいるということだから。

ん?正確な場所が分かってないって?ご安心を。最初に言った通りうちは、都合いい系吸血鬼だから。

背中から翼を生やして空に羽ばたく。

見渡すと分かりやすいくらい大きなお城がいかにもな崖の道の先に存在した。

「あれですね。ではもう行っちゃいましょうか」

魔王城(仮)には、5分くらい飛べば着きました。でも、まだ地面には着地しない。 崖の道の下は針のように鋭い岩がびっしりとあった。

「おぞまし〜空飛べて良かった〜。じゃあ勇者を探しますね」

空にいるからって目で探すのだと面倒くさい。かといって魔力で探知みたいなこともうちは出来ない。

ので、うちは物質生成能力を使って生物だけを探知できる、スマホサイズのセンサーを作った。

電源を入れるとマップ上に赤い丸がとにかく沢山。緑の丸が5つ現れる、しかも移動している。

「この緑の丸が勇者パーティのようですね、位置的に多分魔王城の上から2つ下くらいでしょうか。丁度いいですね。多分そこら辺で中ボス戦でもあるでしょうし、観に行きましょうか」

移動しながら地上を見渡す。

「おぉ…後でモザイクでもかけましょうかこれは…」

魔物の死体がそこら中に転がっている。

どうやらこの世界は死んだ魔物は消滅しないタイプらしい。

「勇者パーティがいると思われる位置に到着しましたね」

でも、うちはまだ外、入り口も見当たらない。「階層的には、ここで確実なのですが…窓の一つも見当たりませんね…」

ズシンと大きな振動音が中から聞こえた。その後に魔法の発射音、剣が地面を削る音も聞こえる。

「ありゃ始まってしまったようですね。じゃあもうすり抜けちゃいましょうか」

ここで、うちの都合がいいところ発動。

壁をすり抜けます。

…正確には実体を消しただけなんですけどね。

いや結構すごいことだな。

「おぉ…やってるやってる!」

人型の弓と剣が合体したような武器を持った全身青い魔物と恐らく勇者、魔法使い、僧侶の三人が戦っていた。

「あ、勇者パーティの人数が減ってる…2人死んじゃったかな」

センサーを確認する目の前の三人の他に、魔物の背後に回り込むように移動している2つの光があった。

「誘導作戦ですね。でも、これだとすぐ気づかれそうなものですが…」

激しい攻防の中勇者が口を開く。

「幹部のトップもこんなか!もっとえげつないのを想像してたぜ!」

次に魔物

「はっ!ほざけ!お前達は5人と聞いていたが…2人は道中で死んでしまったのだろう!」

魔物さんはどうやら回り込まれているのに気づいていないみたいですね。

魔物がバカなのか勇者が策士なのか。

後者でしょうね。

「にしても勇者さん、演技上手ですね。2人は死んでしまったのかーとか言われた後にすっごい激昂したふりをしてますね」

魔物もそれをみて高笑いをしている。

ザシュッ

「がっ…ごはっ…なっ…何が…」

背中を斧で切られ血を吐きながら崩れ落ちる魔物。

「どうやら回り込んでたお仲間さんが不意打ちで致命傷を入れることに成功したようです」

「き…貴様ら…俺を謀ったな…!」

「ふんっ、お前の負けだ」

剣を振りかぶる勇者。

「ここからは見る必要がないですね。先に本丸に向かってましょうか」

心の中でどっちとはい早いけど応援しつつ

実体を消したまま真上にジャンプする。

床をすり抜け本丸へと向かった。

「この世界の勇者さんたちは強いですね。さっきの戦いも技のようなものを使ってませんでしたし」

そんなこんなで本丸へ到着。

玉座には魔王が腰掛けている。

ずっと座っていて腰が痛くならないのかな?羨ましい。

「うちには気づいてないようです」

実体消してるから当たり前だけど。

「では、天井に向かいますね」

皆さんご存知と思いますが吸血鬼は、壁、天井を普通に、重力があるかのように歩けます。

天井で勇者たちが来るまで待機。

その間に少し雑談でもいかがかな。

うちがさっきから言ってる『実体を消す』とは、読んで字のごとくとまでもいかないけど、分かりやすいと思う。

霊体化。

幽霊になっているとも言える。幽霊は実体もないから誰も認識も触ることも出来ない。

…聖職者がいる世界は嫌い。結界みたいの張ってくるし。あれ壊しにくいんだよ。面倒くさい。戦うなら拳で来てよ、撃ち抜いてあげるからさ。ライフルで。

「んっ…そうだ…魔王の強さを見ておきますか」

思い立ったらすぐに行動。うちの行動原理なわけではない。面倒くさがりだよ。みんなそうでしょ?

天井にカメラを固定して、本丸の出入り口をすり抜けて外へ出る。

戦るなら、正面からが安定。下手に不意打ちでもして予測不能な攻撃がきたら面倒だし。

重い扉を押すと、ギィィィっと軋みながら扉が開く。

魔王と目が合った。なかなか威圧感のある雰囲気と面構えをしてるね。モブみたい。

「貴様…誰か?人間でもないが…私の配下にも貴様のような少女は雇っとらんが…」

魔王は本当に不思議そうに、

「ここまでどうやって来た…?早う立ち去れ。ここは戦場ぞ」

と続けた。

…少し予想外ですね。話し方、表情、動作すべてが確かに威厳たっぷりです。魔王のお手本のような。

─でも、何処か優しい、気遣いをしているように見える。近所のおじいちゃんのような、そんな感じ。きっと他の魔族たちからはさぞ尊敬されていたことだろうとそう思えるような…。

どうやらこの世界の魔族と人間は、善悪で括るようなものではないようです。

「…?どうした?まさか迷子か?それは不安だったろう。使いの者を呼ぶ、しばし待たれ」

人間側の様子を知らないから、断言は出来ないけど、魔族は良い奴なのかもしれない。

勿論魔王がそうだからといって他の魔族も全員そうだとは微塵も思わないけど。

流石にずっと黙って分析しているのも失礼だし、本当に使いの者とやらに来られても面倒くさい。

うちはここで魔王に、

「いや、うちは迷子じゃない。ただ、勇者の仲間でもない。少しおま…魔王とやらの力を知りたいだけだ!」

と、ベタベタな戦闘狂もしくは、調子者のように言った。

続けて、

「今ここには勇者も来ているそうじゃあないか!力試しには十分だ!さあ!殺ろう!」

と言った。

多分これは黒歴史になるであろう。すっごい恥ずかしい。

しかし、演技とはそういうものなのだ。自分を偽ること。偽ることは恥ずかしいことだ。

なら自分の感性は正常と思う。

勿論照れ隠しだ。気にするな。気にしないでくれ。お願いします。

「ん…?これは…困ったなぁ…」

頭をポリポリと掻きながら言う魔王。

どうやら子供のお遊びだと思われているらしい。少し魔力を見せてやるか。そうでもしないと殺ってくれなさそう。

少し力を込め、20分の1程の魔力を解放する。

それを見た魔王はようやっと興味を持ったようで少し空気がピリついた。

「なるほど…いや、悪い。謝ろう。確かにお前は強いな。よし、良いだろう稽古をつけてやろう」

痺れるほどカッコいい魔王様。ここで働きたくなる。福利厚生だけでも調べておけば良かったかな。

魔王が立ち上がり構えを取る。

隙のない構え…かどうかは全くわからない。格闘技とか知らないし。ましてや、こっちの世界のしかも魔族のものとなると尚更どころか、尚更々と言える。

先手はうち。

力強く踏み込んで魔王の首を目掛けて飛びかかり、身体を空中で捻り踵蹴り。

予想通りきちんとガードされた。

しかし、蹴りをくらった魔王は4メートルほど吹き飛ばされた。

魔王は驚愕して

「なっ…ありえん…」

と呟いていた。

驚愕するのも無理はない。何しろこの世界でトップクラスの強さを持ってるんだ。まさか、腕をへし折りつつ、首を蹴られるとは思わないだろう。

「なるほど…お前…強いな…私にも後れを取らないほどに…!」

魔王の全身から禍々しいオーラのようなものが溢れている。

本気モードになってくれたらしい。

にしてもなるほどが多いな。分析しきれてるのか問いたいけど我慢。

「ならば…本気の一撃を見せてやろう。回避に専念することだな!」

腕を天へ向け力を込め始めている。

そのうち掌から半径5メートルはありそうな巨大な魔力の球体が完成した。

「くらうがいい!はああああああっ!」

そしてその球体を投げつけてきた。

球体からはとてつもない力が込められていそうだ。魔王の言う通り回避をするのも良いだろう。でも、そんなの、回避を勧められるなんて──挑発じゃんかよ。

「挑発に乗ってやるよ」

むしろうちは球体の中へと向かって走り出した。

そして、力を込め、地面を踏みしめて、勢いをつけて、球体を殴り抜けた。

直後球体の中心へ向かって引き寄せるように風が吹き込んだと思ったら、強力な衝撃が響き渡る。本丸、いや、このフロア全体に響き渡ったと思わせるようだった。

あんぐりとして、立ち尽くしている魔王が見えた気がしたがすぐに姿勢を整え、魔王口を開いた。

「…見事だ。私はお前には勝てないようだ」

何処か諦めたのか、儚げに話し出す魔王に対してうちは言うのだった。

「勇者戦、頑張ってね」

「なっ…」

うちは霊体化してカメラの元へと戻った。

中々楽しい戦いだった。

別にうちは戦闘狂とかではないけど、たまにはああいう、気持ちいい相手と戦うのもありと思えた。

「ああっ!」

悲痛な叫びが響いた。

しかし、ほかの誰にも聞こえていない。なぜならその叫びの発信源はうちなのだから。

「カ…カメラが…」

動かない…

さっきの衝撃波のせいだ…

「こんなのって…」

────────────

その後のことは口頭説明になってしまうけど、軽く説明しておこう。

結論から言うと、魔王が勝った。

花束でも贈ってあげたくなるほどめでたいね。

まあ、力量差もそうだけど魔王の方が経験が多かったから勝てた…というのがうちの見解。

魔王が勝ったからと言っても勇者達を殺したりはしなかった。勇者達は部下を殺しただろうに、心が広すぎることこの上ない。

後日魔王の側近みたいな魔族に取材をしてみた。「魔王様は何をなさるおつもりなのでしょうか」と聞くと、軽く興奮しながら、次々と語ってくれたが…正直細かいところは覚えていない。

要約してしまうとというか、ざっくりと言うならば世界平和だそうだ。

何しろ、勇者達と戦ったのも説得のためだとか。魔王は人が良すぎる。部下にも必要以上に殺すなと口うるさく伝えていたそうだし。

ま、そんなこんなで人間側との平和条約とか友好関係を結ぶとか、そんな感じのを結んだというのが今回の企画のオチ。

全然王道世じゃ無かったね。

そういえば、空から見た世界が禍々しく見えたのは魔王のせいとかじゃないらしい。

もとからなんだってさ。

これはこれで面白いし、良いお土産話になるかな。

帰ってのんびりしたいな。


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