第一話 勇者召喚
ここは、リーツェン王国と呼ばれる異世界の王国である。
今、この国に危機が迫っていた。
「フリードリヒ陛下に申し上げます!突如、現れた魔物の勢い凄まじく、北の国境砦の一つ、リメスが陥落しました」
「何!?リメスが落ちたじゃと。このままでは、直ぐにでも魔物がここにやってくるではないか!守りを固めるのじゃ」
「はっ」
「フリードリヒ陛下、隣国のオルレアン王国がこの危機に勇者召喚の儀を執り行うことを決定されたとのことです」
「なに!?こうしては、おられん。オルレアン王国に遅れをとることは許さぬ!我が国も至急、勇者召喚の儀を執り行うのじゃ!」
「はっ!」
このリーツェン王国の勇者召喚に巻き込まれたのがラルク=フォン=ビスマルクが留学生として、通っている小学校である。
【ラルクside】
う、うーん。
怪しい魔法陣が突然光ったかと思ったら飲み込まれて、ここは何処?
あれっ?
僕、いつの間に故郷に帰ってたんだろう?
ここ、ベルリンの観光名所として有名なシャルロッテンブルク宮殿だよな?
目の前にいるのも、肖像画で見たプロイセン公?
って、僕もしかして過去のドイツに飛んじゃったの!?
あの魔法陣は、転移魔法陣で、転移先は過去のドイツだったとか?
あわわわ、どうしよう。
平和を謳歌してきた日本の子どもたちと過去のドイツで、生きて行くなんて不可能に近いよぉ。
メアリー!
ローザ!
呼んでもいるわけないよね。
兎に角、目の前のプロイセン公の話を聞いて、少しでもこの世界のことを知らないとだよね。
「おぉ、勇者たちよ。このリーツェン王国の危機に我らの声を聞き、きてくれた。感謝する」
勇者?
リーツェン王国だって!?
確か僕が知ってるシャルロッテンブルク宮殿の元の名がリーツェンブルク宮殿だったはず。
やっぱり、ここは過去のドイツなんだ。
もうダメだ。
平和慣れしてる日本の子ども達が戦えるわけないし、僕自身もできることなら戦いたくない。
むしろ、血すら見たくない。
「貴方は誰なんだなも?」
いや園山君!
君、この人のことがわからないの?
かの有名な神聖ローマ帝国の皇帝に王を名乗ることを許されたフリードリヒ一世陛下のことを?
肖像画にも描かれてるほどの有名な人だよ?
日本史だけじゃなくて世界史の勉強にも力を入れなよ園山森男ーーーー!!!!
「うむ。確かに勇者様方には、まだ名乗っておりませんでしたな。余は」
フリードリヒ陛下に名前を名乗らせるなんて、不敬なことしたら、園山君の運命が。
ここは僕が。
「フリードリヒ陛下に対して、無礼を働き申し訳ありません!」
「うむ。余がフリードリヒ・ブランデンブルクである!ん?ところで、そちらの勇者よ。余は名前を名乗ったか?いや、待て。お前は、こちらの世界の住人か?」
うっ。
園山君のせいで、大変なことになっちゃったよ。
どう答えるのが正解なのかな。
こちらの世界(ドイツ人)なのは間違いないし。
はいと答えるしかないよね。
「はい。かの有名なフリードリヒ陛下にお会いできて、嬉しく思います」
「勇者以外が紛れ込むなどなんたることか。直ぐにこの者を摘み出せ!」
えっ!?
これって、僕1人で外に放り出されるってこと?
この過去のドイツの世界に?
無理無理無理!
そんなの生きていけないって!
メアリー!
ローザ!
いるなら、僕のことを助けて!
大至急!
今直ぐに!
【メアリーside】
はっ!
ここは?
坊ちゃまと初めてお会いしたシャルロッテンブルク宮殿でしょうか?
ここで、バックパッカーしてた当時、お金が尽きて生き倒れてたんですよね〜。
私ってば、うっかりさんですから〜。
懐かしいですね〜。
って私、いつの間にドイツに戻ってたんですか!?
ローザ様!
坊ちゃま!
いるわけないですよね〜。
はぁ、ドイツに私1人。
あの魔法陣は、別の場所と場所を繋ぐような者だったんですね。
取り敢えず、こうなったら観光でもしてから日本に帰りますか。
こういう機会は、そうそうないですし。
先ずは、このシャルロッテンブルク宮殿から。
「そこの侍女の方、ここはシャルロッテンブルク宮殿か?」
あれっ。
この声、ローザ様に似てるなぁ。
でも、そんなわけないし。
ここは正直に答えるべきだよね。
「はい。ここがかの有名なベルリンの観光名所、シャルロッテンブルク宮殿ですよ」
「ん?その声、メアリーか?」
「えっ!ローザ様?」
ちょっと!
ちょっと!
ちょっと!
何で、ローザ様まで、ドイツに帰ってるんですか!
坊ちゃまの世話をほっぽり出すなんて、何考えてるんですか!
ここは私が説教を。
えっ?
ローザ様、何をして?
【ローザside】
くっ。
私としたことが迫り来る魔法陣の一つも躱わせないとは。
こんなことでは、坊ちゃまの暗殺を企むやつが出てきた時、守ることができないではないか。
取り敢えず、現状の確認に努めなければ。
あれが異世界へと誘う魔法陣だったと仮定した場合。
この風景は、いったいどういうことだ?
ここには見覚えがある。
宮殿を見るのが大好きな坊ちゃまにねだられて、2人で訪れたシャルロッテンブルク宮殿だ。
しかし、そうなら。
あの魔法陣は、異世界召喚の魔法陣ではなく転移魔法陣だったことになる。
本当にそうか?
兎に角、悩んでいても仕方ない。
先ずは、近くにいる人に聞いてみよう。
白黒はっきりさせる方がいい。
メイド服を着た人か。
あの人に尋ねることにしよう。
「そこの侍女の方、ここはシャルロッテンブルク宮殿か?」
この後、帰ってきた懐かしい声色に、思わずメアリーかと尋ねたらローザ様と。
お前まで、巻き込まれたら誰が坊ちゃまの世話をするのだ!
全く、こういうところまでドジとは、世話が焼ける。
しかし、これは朗報でもあり凶報でもある。
1人だと思っていたところ、メアリーが居た。
それは、ビスマルク家の屋敷全体が転移魔法陣に飲まれていたということだ。
ホプキンスもここに飛ばされてるだろうな。
皆、将来坊ちゃまのことを支える大事な人材だ。
皆と共に日本へと帰らねば。
先ずは、メアリーと話し合い、取り敢えず大広間を目指してみることとなった。
「メアリー、この匂いはまさか!?」
「はい!微かに坊ちゃまの匂いが大広間の方からします」
そんな馬鹿な!?
坊ちゃままで、転移魔法陣に?
いや、それはあり得ない。
やはり、あの魔法陣は、今日本の小説で流行りの異世界召喚だったと考えて間違いないだろう。
なら、坊ちゃまの身に危険が迫っている可能性がある。
私たちがお助けしなければ。
「急ぐぞメアリー!」
「はい!ローザ様!」
こうして、大広間の扉を開けた私たちの目に飛び込んできたのは、武器を持った2人の兵士に迫られてる坊ちゃまの姿だった。
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それでは、次回もお楽しみに〜




