第十七話 共有
【棚瀬結衣視点】
ラルク君のお家の使用人のミネルヴァさんに私のギフトが役に立つと連れ出してもらえたまでは、良かったのですが……異世界は本当に怖いところです。
ダンジョンが大口開けて、私たちを丸呑みしてしまったのですから……まぁ私はすぐに気を失ってしまって、その後のことは全く覚えていなくて、再会した教え子の猫宮さんからここがラルク君のダンジョンだと言われて、てっきり強く頭でも打って混濁してるのかなと……ええええ、ラルク君のダンジョン!?
と、驚くので精一杯でした。
猫宮さんの方がこんな異世界で不安で仕方ないはずなのに……。
あ!
そうなんですねこの3つ首ということを省けばどこからどう見てもスコティッシュフォールドの……。
スコティッシュフォールドじゃなくて、スコッティちゃんですか?
元々は頭それぞれに名前を付けたけど、結局分裂するわけでも無いからこの名前に落ち着いたですか?
随分と猫宮さんに懐いてる姿を見るとこちらを警戒して、猫キックを繰り出そうとしていたとは、とても思えないぐらい、喉を鳴らして甘えていますね。
あ!
そのスライムは!?
私も大好きな『ドラゴンダンジョン』略してドラダンに出てくる鳥杉ユウジ先生が描いた水玉スライム!?
この世界は鳥杉先生ワールド何ですか?
あ!
違うんですか?
ラルク君が鳥杉先生を真似て作ったと……ドラダンは外国人の方にも大人気のRPGゲームですもんね。
じゃなくて、ラルク君もドラダン好きだなんて嬉しいです!
こっちのミミズも確かに鳥杉先生ならこう描きそうです!
このモグラだって、手に持ってるのがスコップかクワかの違いぐらいですし!
わぁ。
ドラダン好きの私にとって天国だなぁここ。
えっ?
私のギフトを知りたいですか?
あの、地味でも笑わないでくださいよ。
『食器生成』です……。
あの、女子生徒だけでなく女性教諭からも絶大な人気のラルク君が私の手を握り、嬉しそうにぶんぶんと勢いよく振り回されました……あ、ラルク君じゃなくて分身の兎さんでしたね。
この兎さんからラルク君の声が聞こえるので、錯覚してしまいました。
これが本物のラルク君で尚且つこの現場を比呂ちゃんに見られたらと思うと……親友なのに殺されちゃいそうで怖いので、このことは私の心の中だけにしまっておこうと思います。
それにしても、人間って危機に陥ると人間性が出るって本当なんですね。
異世界に転移させられて、目の前のクソガキ……じゃなかった王子に、とっとと魔物を倒して来いと何の説明もされ無い中言われて、人格者の王様が現れて、その王子に拳骨を……その後説明を受けて、直ぐに適応しようとしていたラルク君のお家の使用人さんたちに比べて、うちの校長や教頭と来たら、怯えるだけで何もしようとしないんですから……今もぬくぬくとあのお優しい王様のご厚意に甘えているんでしょうね。
それに比べれば、私は人間性の良い人たちに囲まれて、この世界に頑張って適用しようと奮闘してるのですから。
それに教え子がいるとわかった以上、先生として大人の女性として、子供たちを守ってあげないと。
【ラルク視点】
「棚瀬先生まで転移させられてたなんて、やっぱり他の先生たちもこっちに、うーん僕の家の仲間たちまでこちらに来ていることを考えるとやっぱり、あの地域一帯をあの転移魔法陣が丸呑みしたと考えるのが良いのかな?」
「坊ちゃまのお考えに間違いないと思います。それについて、私からも棚瀬先生にお聞きしたいことがあるのですが構いませんか?」
現在兎の姿の僕の傍に守るように立ち、棚瀬先生に尋ねる僕の専属執事のローザ。
「私で答えられるか分かりませんが……ど、どうぞ」
僕のスラッチをムニムニしながら言う棚瀬先生。
スラッチも気持ちよさそうにしないで、何だかお風呂上がりのオッサンぐらいに蕩けた顔になってて、笑いを堪えるのが大変なんだからさ。
「戦国高校という言葉に聞き覚えは?」
「戦国高校……その言葉がラルク君の執事の方から口に出るということは」
「隠していたわけではありませんが私のギフトは『鑑定』です。この力を使い、私たちが転移させられた国の王が意にそぐわない者を事故に見せかけて殺すクズだと判明しまして、それに巻き込まれて亡くなった服部甚之助という方が戦国高校だと書かれていましたので、坊ちゃまの考えを確信にするべくお聞きしました」
「そうですか……。戦国高校は私が教職に就く星小学校と同じ都内にある私立高校です。ラルク君の言った推測は概ね合っているのかもしれません」
「そうなると……やはりこの現象は、最近流行りの異世界小説の中でも勇者召喚系で大規模転移をモチーフにしているのは間違い無いかと……。」
僕はまだローザからこの手の話を耳にタコができるぐらい聞かされたから順応できてる方だけどこんなに大量に巻き込んで、この世界に神様が居るのなら何を考えているのかな?
「当たってほしく無い推測だったけど……そうなるとメアリーの上司で、メイド長のローズマリーやローザの上司で、執事長のセバスチャンだけでなく大使館に居た父様に母様、果てには猫宮さんのお母さんやお父さんも巻き込まれてるって事になるよね?」
「そうなるかと」
本当、この世界に神様とやらが居るのなら、何を考えるのかな?
こんなふざけた事、僕は見過ごせない。
だって、もしかしたら猫宮さんは両親の死をこの世界で見る事になる可能性もあるって事じゃ無いか!
そんな悲しい別れを誰にも経験してほしく無い。
僕は皆を救う決意を固めるのだった。
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