第七話 ビスマルク家使用人の意地
【ソルト視点】
やっぱり料理長は料理長でさ。
情に熱い性格でやすからな。
まぁ、こうなるのも仕方ありやせんや。
アッシの目の前には、ファンタジーの世界の化け物たちでやすよ。
全身緑の化け物でニタニタと笑みを浮かべ嬉々として、女を追い回すファンタジー世界ではお馴染みの下級モンスターのゴブリンに、棍棒片手に二足歩行で、こちらも女を追いかけ回している豚の下級モンスターのオークでやすか。
アッシも現実の世界では、ファンタジー世界を題材にしたオープンワールドをプレイしていたでやすからね。
そこそこ、ゴブリンやオークについての知識は持ち合わせてるつもりでやすよ。
まぁ、ゴブリンならそう来るっすよね。
「料理長と舟盛は、ちょっと下がっててくだせえ。あのゴブリンどもの相手はアッシがしやすんで」
アッシは、大型の包丁である牛刀を取り出すとそれをバットのように持って、金属面でゴブリンが投げてきた石を打ち返してやったでやす。
額にクリーンヒットでやす。
「グギャッ」
「まぁ、アッシにかかればこんなもんでやすよ。どういう攻撃をしてくるかわかってる相手に負けやしませんって」
「やるじゃねぇかソルト。だが、油断すんじゃねぇぞ!敵は、緑の化け物だけじゃねぇんだからよ!」
確かに料理長の言う通りでやすな。
姑息に距離を取って石を投げてくるゴブリンどもと違って、オークは愚直にも真っ向勝負を好むと相場は決まってるでやすからな。
でも、アッシのスキルは『包丁の担い手』でやすよ。
真っ向勝負をしたいなら受けてやるでやす。
「グオオオオオオオオオ」
おっ、来るでやすか?
荒んでたアッシの心を救ってくれた坊ちゃんと料理長のためにもまだまだアッシは倒れるわけにはいかないでやすよ。
向こうで寂しがってる坊ちゃんのためにも早く戻らないといけないでやすから。
「ソルト!援護はしてやる!合図はよこせ!」
「料理長、提案は有り難いっすけどこんな奴らに限りある魔力を消費する必要はないでやすよ。ここは、アッシに任せてもらうでやすよ」
アッシは、2本の刃先の長いマグロ包丁を取り出すと向かってくるオークの群れに突撃したでやす。
「グオオオオオオオオオ」
「へっ。そんな短調な攻撃がアッシに通じると思ってるでやすか?甘いでやすよ!」
「グオッ」
流石、マグロ包丁の切れ味は抜群でやすよ。
オークも難なく真っ二つに、こうしてると鉄パイプ両手に喧嘩に明け暮れてた日々を思い出すでやすよ。
「そんなもんでやすか?もっと、かかってきやがれ豚どもがでやす!」
1人で次々とオークを打ち取るソルトの姿を見て、フランク王国の兵士たちの士気も回復する。
「お客人たちに任せてばかりで良いのか!この国は誰の国だ!俺たちの国だ!民を守れ、誇り高きフランク王国の兵たちよ!」
「うおおおおーーーーーー」
ここぞとばかりに上官が言葉をかけ、持ち直した兵たちがソルトの両脇を固め、オークとゴブリンの群れを駆逐する。
「へっ。そういう熱いの俺嫌いじゃないでやす。せめて、手の届く範囲は助けてやるでやすよ!」
【舟盛視点】
ファンタジー世界とか何かの冗談かと思ったっすけど。
あれは、確かにゴブリンにオークっすね。
それに空には、ドラゴン種の中でも最弱に位置するワイバーンっすか。
まぁ、最弱と言ってもドラゴン種自体がどの作品でも最強クラスに強いっすから。
料理長は、ソルトの兄貴の援護に向かったっすからあのワイバーンの火球を相手にするのは、水を使える俺の役目って事っすよね。
魔力がどれだけ持つかわからないっすけど、この弓兵隊さんたちは、フランク王国防衛の要っすから守るっすよ。
「ぐっ、ワイバーンの奴め。また口を。皆、伏せろ!火球が来るぞ!」
「伏せちゃダメっす!あのワイバーンは、火球を撃った後、急降下してくるっす。そこに狙いを定めて、討ち取るっすよ!安心するっす。ワイバーンの火球は、俺っちが消してやるっすから!」
「おぉ!どこのどなたが存じませぬが陛下と同じく魔法の使い手とお見受けする。御助力感謝する」
「良いっすよ。火球に水をぶつけると水蒸気が発生して煙のようになるっす。それを利用して、突撃してきたワイバーンを討ち取るっすよ!」
「承知した!」
向かってくる火球と同時に急降下を始めるワイバーン、ギリギリのタイミングを見計らって舟盛は。
「今っす!ウォーターボールっす!」
火球に水球がぶつかると相殺され水蒸気で白い煙が発生する。
これに驚いたワイバーンがその場で停止するのを煙の先から剣を一斉に突き出した兵士たちの攻撃で、落下していくワイバーン。
「うおおおお!!!!ワイバーンを倒したぞーーーーー!!!!いける!いけるぞ!」
「油断しちゃダメっすよ!まだ、ワイバーンは残り2頭いるっす!」
「はっ!陛下以外でワイバーンを倒せたことが嬉しくて、つい。お客人の言う通りだ!お前たち、気を引き締めろ!次が来るぞ!」
「は、はい!」
あのワイバーンに知性がなくて良かったっす。
次の奴も行動パターンは変わってないっすからね。
同じようにしてくれるなら簡単に討ち取れて、こっちも好都合っすから。
にしても坊ちゃんが日本食を食べたいって言ってくれたお陰で、採用された俺っちが異世界転移して、ファンタジー世界のモンスターと戦ったなんて話、坊ちゃんへの良い土産になるっすよね。
さて、俺っちも気を引き締めて、残りのワイバーンを倒すことに集中するっすよ。
まだまだ、坊ちゃんに食べてもらいたい日本食がたくさんあるっすからね。
それを食べてもらうまで、俺っちは死ねないっすから。
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それでは、次回もお楽しみに〜




