表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

なろうラジオ大賞

プールと8月32日のカレンダー

作者: 地野千塩

 これは私が小学5年生の時に体験した不思議な話。


 夏休み中だった。幼馴染の友太郎(ゆうたろう)と市民プールに遊びに行った帰り。


「友太郎、プールの後のアイスって最高だね」

「だね。こんな夏休みが永遠に続けばいいのに」


 そんな話をすぐるらいプールが楽しかった。アイスも美味しい。


 しかし時は残酷。あっという間に8月31日なり、宿題に追われながら願った。


「神様、私、ずっと夏休みがいいです。毎日友太郎とプールで遊んでアイス食べたい」


 そう願った後、壁のカレンダーに8月32日が出現した。


「え? 本当!?」


 その上、9月以降のカレンダーも消えた。これは願いが叶ったのかもしれない。


 その日からずーっと友太郎とプールで遊んでいた。毎朝、目覚めると8月32日だ。9月1日はやってこない。楽しい。永遠に夏休み。


 でも。だんだん飽きてきた。確かに友太郎と遊ぶのは楽しかったが、逆に宿題、学校、先生、進学という現実もより考えてしまう。


 心から楽しんで遊べなくなってきた。このまま大人になれず、ずっと友太郎とプール遊びしてるの? 泳ぎも上手になったけど、プールの水に溺れそう。


 プールの後に食べたアイスも美味しくない。苦く感じる。一番高いプレミアムラインのソフトクリームなのに。


「やっぱり宿題終わらせて学校行くべき?」


 私はあのカレンダーを破くと、9月1日が現れ、時も進んだ。ほっとした。宿題や学校もあるのに、現実世界に帰れたと思った。


 もっとも友太郎はあの後難病に罹り、12月31日に亡くなってしまったけれど。もしかしたら、神様が友太郎との最期の夏休みをくれたのかもしれない。


 また今年も夏がくる。


 高校生になった私は、さっさと宿題を終わせ、プールで遊んだ。その後に食べるアイスクリームは最高に美味しい。100円のジャリジャリのシャーベットアイスなのに。


 宿題は早めに終わらせるのに限る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ