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【コミカライズ開始記念SS】セバスチャンの杞憂

物語序盤の視察に行く前ぐらいの時系列です!


 私はセバスチャン。アンソン辺境伯家に長年使える執事である。


 現当主であるクロヴィス様が奥様を迎えてまもなく二ヶ月が経過しようとしている。

 新婚二人の関係は、お世辞にも良好とは言えない状況だ。


 奥様であるアネット様は日々辺境伯夫人として相応しくなるべく領地について学んでいる。それもクロヴィス様をお支えしたいという想いゆえ。クロヴィス様を前にした奥様は、それはもう恋する乙女のように愛らしく、見守っている我々使用人一同は大変心が温まる思いである。


 だがしかし、我らが主人のクロヴィス様がいけない。

 奥様が自分に向ける想いに気づかないどころか、彼自身があまりにも言葉が足りなさすぎる。


 幼い頃より奥様に宛てる手紙の相談に乗ってきた私は、クロヴィス様が長い年月をかけて初恋を育てて来られたことを知っている。


 その想いが実り、ようやく夫婦となったというのに……。


「セバスチャン、アネットはこのような田舎に嫁いできて不便な思いをしていないだろうか。王都が恋しいと思ってはいないだろうか。突然養子を迎えることになってしまったし、フィーナとの関係は良好であるとはいえ、無理をさせてはいないだろうか」


 執務室に篭ってウジウジと後ろ向きな言葉を溢す主人に、私はやれやれと肩を竦める。


 まったく、この方は何もわかっていらっしゃらない。

 手紙を通して一体奥様の何を見てきたのであろうか。


「そのようなことはございませんよ。奥様はアンソン辺境伯領のために日々勉学に励んでおります。私の目から見ても学んでいる奥様の目はキラキラと輝いておられます。領地のために懸命に取り組まれているのは、なにも貴族としての責務だけではないのですよ」


「だが……」


 若くして爵位を継ぎ、妻を迎え、さらには両親が不幸な事故に見舞われた幼い少女を義娘に迎え……確かに主人の置かれる環境は目まぐるしく変化している。


 側から見れば互いに想い合う夫婦でしかないのだが、当人同士がどうもその点を理解できていない。

 つまり、盛大にすれ違っているのだ。


 クロエに聞くところによると、心配していた通り初夜さえ危うかったようだ。

 幸い、フィーナお嬢様が機転を効かせた結果、二人は無事に結ばれることとなったのだが、お嬢様がいなければどうなっていたことやら。


 煮え切らない主人を前に、私はひっそりとため息をついた。



 ◇



 数日後、一人で抱え込み頑張りすぎている奥様に少しでも癒しを提供すべく、クロエとともにガゼボで給仕を勤めた。

 お嬢様とのささやかなティーパーティは、奥様の心を慰めてくれたようだ。


 奥様は元気がなく、思い悩んでいることは明らかであった。

 その原因は間違いなく言葉足らずな主人であろう。


「おかあたまは、がまんしすぎです! もっとわがままになっていいんでちゅよ? きっと、おとうたまもおかあたまにがまんさせるよりも、ほんねではなしてほちいとおもいましゅ」


 これ以上拗れる前にどうにかせねばと思案していると、痺れを切らしたフィーナお嬢様が単刀直入にズバリと指摘してくれた。


 まさにその通りであると、私は心の中で拍手喝采である。お嬢様には後程特製のマカロンをご用意せねば。

 そのままお嬢様は、時よりおかしなことを叫びながらも奥様を説得……いや、巧妙に奥様の背中を押すことに成功していた。拍手喝采である。南部より取り寄せた希少な果物もお付けしよう。


 執務室へ向かう奥様の背中を三人で見送ったあと、私たちは顔を見合わせて自然と微笑み合った。


「まったく、てがやけるりょうしんだわ」


 フィーナお嬢様は大人びたことを言いながら、パクりとクッキーを口に放り込んで咀嚼した。

 それから、ぴょんとベンチから飛び降りてクロエの手を取った。


「さ、ふたりがきちんとはなしあえているかのぞき……いえ、かくにんにいくわよ!」


「お嬢様!?」


 クロエは片付けが済んでいないガゼボを一瞥し、申し訳なさそうに眉を下げた。

 私は笑みを深め、ゆっくりと頷いてみせる。


「ここは私に任せなさい。お嬢様を頼みますよ」


「……はい」


 クロエは小さく微笑みを浮かべながら、「はやくはやく!」と急かすお嬢様を宥めながら屋敷の中へと消えていった。


 どうやらお嬢様のおかげで丸く収まりそうだなと胸を撫で下ろしながら、茶器を片付ける。

 初夜に続き、今回もお嬢様のおかげで夫婦仲が取りもたれるのだろう。


 お嬢様はまるで二人の想いを繋ぐキューピットのような存在だと常々感じている。

 コロコロ変わる表情や、クロヴィス様と奥様に向けるキラキラとした熱い眼差しは見ていて飽きることはなく、最近では使用人一同がそんなお嬢様の様子を微笑ましく見守っている。


「おや?」


 素早く片付けを済ませて屋敷に入った私の耳に、カエルを踏み潰したような唸り声が聞こえてきた。

 奥様の慌てた声が続き、なるほど、またお嬢様の奇妙な行動だろうと合点がいく。


 さてさて、我が家に舞い降りた天使様は、これからどのような風を吹き込んでくれるのか。


 きっと輝かしく賑やかな未来が待っているのだろうと思うと、これからのことが楽しみで、どうしても口元が緩んでしまうのであった。


ご無沙汰しております〜!!!

大変お待たせしました!フィーナちゃんのコミカライズがついに始まりました!!

マンガがうがうさんでの連載となります◎

コミカライズ版のタイトルはこちら!

『転生幼女は両親の離婚を阻止して幸せになりたい!〜前世のオタク知識で推しの運命変えちゃいます〜』

改題しておりますのでご注意くださいませ〜( ´ ▽ ` )

とにかくフィーナが賑やかで楽しいコミカライズになっておりますので、ぜひ一緒にニヤニヤしてください!

ノベルも1・2巻が発売中ですので合わせてよろしくお願いします!

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୨୧┈┈┈┈┈┈ 12月10日配信┈┈┈┈┈┈୨୧

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