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閑話 開けた世界 ◆sideリューク

 天使が舞い降りたのかと思った。


 僕の人生にはなんの意味があったのだろうと、僕を捕らえに来た刺客を前に考えていた時。

 突然部屋に吹き込んだ突風は、不思議と温かかった。


 そして、白く美しい狼に乗って部屋に舞い降りたのは、月の光が銀の髪を縁取って幻想的な美しさを醸し出した一人の少女だった。


 きっと、僕よりも年下だろう少女は、僕と対照的に生きることを全力で楽しんでいると言う。



「私が人生の楽しみ方を教えてあげる!」



 その言葉を聞いた時、僕の世界が彩りを取り戻した気がした。







 ◇◇◇



「リュークよ。お前には辛い思いをさせてしまったな。すまない」


「いえ、父上。僕の心が弱かったのです」



 夜会での一件により、第二王子派閥と称した反対勢力の全貌が見えてきた。

 まさか軍部のトップがその筆頭だとは驚いたが、確かに僕に近づいてくる大人たちはたいてい軍部に籍を置いたものだったように思う。


 あの日以来、僕は自室を出て過ごすことが増えた。

 その様子を見て、父上も母上も涙を流したのでとても驚いた。


 自室で塞ぎ込んでいる様子は心配だったが、僕は身体が弱いので、無理に外に出してまた倒れでもしたらと思うと、どう声をかけていいのか分からなかったという。

 両親はそう言うが、僕は二人が兄上同様に僕を大切に思ってくれていることは知っていた。

 確かに寂しさを感じることはあったが、僕は王子だ。我儘ばかりは言っていられないと我慢した。


 だが、僕はもう少し前までの僕じゃない。やりたいことは、自分で決める。



「父上。先日のお話なのですが、先方が良ければ是非伺いたいと思います」


「おお、そうか。リュークと離れるのは寂しいが、あそこはいい場所だ。空気もうまい。しっかりと療養して、少しずつ身体を鍛えるといい」


「はいっ!」



 先日、フィーナとの謁見以降、父上が何か考え込んだ様子だったのだが、切り出された話を聞いてとても驚いた。


 アンソン辺境伯領に行って、療養と鍛錬を積むのはどうかと言うのだ。

 その申し出は、僕にとっては願ってもないことだった。

 少し考える時間をもらったが、話を聞いた時すでに僕の答えは決まっていた。

 僕の返事を受けて、父上は嬉しそうに目元を和ませている。

 そんな父上に、僕は聞きたかった話を切り出した。



「父上、お伺いしたいことがあるのですが、兄上が国王となった暁には、僕はいずれ公爵位を賜るのですよね?」


「ああ、そうだな。何か問題があるのか?」


「いえっ、問題ということではないのですが……例えば、入婿として辺境伯を継ぐというのは……可能なのでしょうか?」



 窺うようにおずおずと問いかけると、父上は驚いたように目を見開き、そして嬉しそうに破顔した。



「なるほどなるほど! それはいい! 早速クロヴィスに婚約の申し出をしようではないか」



 気が早すぎる父上の提案に、僕は慌てて両手を振る。



「いっ、いえ! 僕は自分の力でフィーナの関心を得たいと考えているのです。なので、形式としての婚約者の座はいりません」


「ふむ、そうか……あの娘は利発な子だ。頑張るのだぞ」


「はいっ」



 こうして僕は、しっかりと道中で休息を取りながら、二十日かけてアンソン辺境伯領に到着した。


 人生の楽しさを教えてくれると豪語したのだ。

 フィーナの様子をまずは観察させてもらおうと、初めの数日を過ごしたのだが、フィーナのしていることといえば、家庭教師の勉強、それが終われば両親を探し、昼食を食べて、昼以降は自室に篭って絵を描いている。少しでも時間があけば、屋敷内のどこかにいる父親か母親の姿を探して屋敷内を練り歩いている。


 だが、フィーナの瞳はいつもキラキラと輝いていて美しい。思わず見入ってしまうほどに。


 いつか、その瞳に僕だけを映してほしい。


 生きることを諦めていた僕が、今はこうして望む未来に思いを馳せている。


 まずは、このヒョロヒョロの肉体をどうにかしよう。

 そして、魅力的な男性となり、必ずフィーナを振り向かせてみせるんだ。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!


この先、アネットの妊娠・子育てや、リューク殿下がフィーナに興味を持ってもらおうと奮闘する様子、クロエに冷たくあしらわれるミランダの様子などなど、書けそうな話は十分にございますが、これにて本作は完結とさせていただきます。

本編後半は、自転車操業しつつヒーヒー言いながら書いておりました。怒涛の展開で、描ききれていないところもあるかと思いますが、無事完結まで持っていけてホッとしております。何より、フィーナがフィーナなので(え?)、物語を引っ張ってくれて大変助かりました。クロエもとても好きなキャラです。


コンテスト締め切りの夜に滑り込みで更新ラッシュをかけてしまいまして失礼いたしました。

びっくりしましたよね…笑

一生懸命書いては更新してを繰り返しておりました笑


面白かった!お疲れ!など思っていただけましたら、ぜひブクマやお星様をポチッとして応援いただけますと嬉しいです!

では、またどこかで会えますように。



★書籍化・コミカライズ進行中のこちらの作品もよろしくお願いします!★

巻き込まれて召喚された限界OL、ギルド所属の【魔物解体嬢】として奮闘中〜ドラゴンですか?もちろん捌けます!〜

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୨୧┈┈┈┈┈┈ 6月10日頃発売┈┈┈┈┈┈୨୧

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― 新着の感想 ―
[一言] 読んでいてとても楽しかったです! 続きが読めたらいいなー( ◠‿◠ )
[良い点] 面白い 推し活生活は見てるだけでもその人が楽しそうにしてるだけでこちらも楽しくなるので読んでてまさに楽しい推し活生活してる感じだって見えて楽しく読めました 今後、子供が両親の仲を取り持つ…
[一言] 続きが読みたいものです。 慌てなくても良いので出来たらお願いいたします。
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