表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/55

51話 人魚族の秘密①



「そういえば、自己紹介がまだだったね。俺はガイア・アーカス。君は?」


「私は・・・・・・分からない」


「もしかして、名前も?」


「うん・・・・・・だから、お願い、つけて」


「ん? つける? 何を?」


「私の名前・・・・・・ガイアにつけてほしい・・・・・・」


 彼女は、上目遣いで、うるうると俺の方を見ながら、懇願してくる。


「お、俺で良いなら・・・・・・」


「う、うん、ガイアのが良い」


 しかし、名前か。前世では妻子持ちだったが、子供のことは妻に任せっきりだったからなぁ。あ、でも、一つ思いついた。


「マリー・・・・・・君の名前は、マリー、どうかな?」


「マリー・・・・・・これが、私の名前、すごく良い! ありがとう、ガイア!」


「気に入ってもらえたなら、良かったよ。ところで、鰭はどうにかならないか? 流石にそのまま陸地に出ると騒ぎになると思うんだが・・・・・・」


「あ、確かに! それなら・・・・・・チェンジ! レッグ!」


 そう彼女が唱えた瞬間、尾鰭が光だし、次第に形が変形していった。そう、まるで、人間の足のようにーー。


「これで、どうかな? 一応、人間の足にしてみたんだけど・・・・・・」


「あ、あぁ、それなら、大丈夫、だと、思うぞ」


 とりあえず、俺はマリーの手を離さないようしっかりと握り、遺跡を後にした。


「外の世界・・・・・・緊張する」


「そっか、記憶を失っている身としては、遺跡以外の場所は初めてみたいなものだもんね」


「は、はい、だから、楽しみな反面、怖いという気持ちもあるんです。おかしいですよね、私」


「おかしくなんかないよ。誰だって初めての場所には、期待と恐怖を抱くものさ。それに、何かあっても、必ず俺が守ってやるよ」


「ぁぅ、もしかして、そういうこと他の女の子にも言ってる?」


「ん? どういう意味?」


「!? べ、別に、何でもない・・・・・・」


 というか、どことなくマリーの顔がほのかに赤くなっているようなーー気のせいかな?


「もうすぐ、海から出るよ。心の準備は良い?」


「えぇ、いつでも、大丈夫よ!」


 そうして、俺たちは2人でビーチに戻ってきたのだがーー。


「・・・・・・そう言わずに、ちょっとだけ、良いだろ? 俺たちと遊ぼうぜ?」


「さっきから断ってるじゃない! 何回言えば気が済むの!」


「まあまあ、そう怒らず・・・・・・」


 あれは、ヘレンか。何やら、3人の男に言い寄られているみたいだな。確かに、ヘレンは可愛いし、スタイルも良いから、ナンパする気持ちは分からなくもないが、流石にしつこすぎる。これは、制裁を加えないとな。


「おーい、待てせて、ごめん〜」


「あ、ガイア! じゃあ、私はこれで・・・・・・」


「おい、待てよ! あんな冴えないガキより、俺たちの方がもっと良い思いさせてやれるぜ?」


「い、いや! 離して!」


「やめろ!」


「な!? このガキ、さっきの・・・・・・」


「男のくせに、女の子を泣かせて、恥ずかしいとは思わないのか!」


 こういう輩には、きつめに叱っておかないと効果はない。


「ちっ! 偉そうに、てめえは何様のつもりだ? どうやら、痛い思いをしねえと分かんねえみたいだな・・・・・・表でろ、クソガキ」


「あぁ、望むところだ」


「待って、ガイア! い、行かないで!」


「? 俺なら大丈夫、あんなやつ、敵じゃないから」


「・・・・・・そう、じゃない・・・・・・」


「え?」


 ヘレンは、1拍おいた後、再び口を開いた。


「・・・・・・ううん・・・・・・絶対、負けないでね、ガイア!」


「あぁ、もちろん!」


 先ほどの男たちは、はっきり言って、魔力が小さすぎる。ただ、身体はかなり鍛えられていたようだから、まあ、それなりの実力は兼ね備えているのだろう。俺の相手になるかは別の話だが。


「おい、てめえら、手出すなよ、これは、俺とあのガキの戦いだ」


「安心しろ、言われなくても手は出さん」


「同じく」


 どうやら、思ったよりは男らしいみたいだな。俺としては3人を相手にしても別に良いが、ここはあの男の覚悟を尊重してやるとするか。


「おい、クソガキ! 冥土の土産に教えてやるよ、俺様はドエス! 地獄の鞭使いとは俺のことだ! どうだ? びびって手も足も出ねえだろ? ははははははっ!」


「それが、どうしたんだ? 喋る時間も惜しいし、早く終わらせたいんだが?」


 すると、男はさらに苛ついたように口を開く。


「ちっ! 生意気な小僧め! 言われなくても、終わらせてやるさ!」


 男は、剣を抜き、俺に向かってくる。


 剣は、決して速いわけではない。


 ただ、俺は、この一瞬の剣捌きを美しいと感じてしまった。


 無駄のない、洗練された剣、地味だけど、これは、いわゆる努力の結晶だ。


 気に食わない男だが、剣に関しては、本当に美しいな。


「くそっ! 何で、当たんねえんだ!」


 岩陰からこっそりとマリーが見ている。


 そんなところにいると危ないと思うけど。


「知りたいか? それは・・・・・・遅すぎるからだ!」


 至極単純なことだ。どんなに剣を使いこなしていようとも、遅ければ意味がない。


「くっ! 認めねえぞ! 俺は、絶対に・・・・・・!?」


 次の瞬間、男の足元から大量の水が吹き出して、そのまま飲み込まれていった。


 これはーー水魔法? しかし、一体誰が、何のためにーー。


 どうやら、他2名の男たちも一緒に飲み込まれていったようだ。水が収まった時には影も形もなかった。


 少し気味が悪いが、今は考えないようにしよう。ナンパ男たちは撃退できたのだし、結果オーライだ。


「じゃあ、マリー、帰ろっか」


「・・・・・・うん、ガイア」


 何かマリーの魔力がさっきよりも小さくなっている気がーー気のせいかな?


 そして、俺たちは無事ヘレンの元へと戻ることができた。


「あ、ガイア、良かった、無事で・・・・・・って、えええええええええええぇ!? ちょっと、何よ、その女は!?」


「あ、あー、紹介するよ、こちらは、人魚族のマリー。決して、怪しい関係じゃないから、少し落ち着いて、ね?」


「こ、これが、落ち着いていられるわけないでしょ! エレーナ様に飽き足らず、また、どこの馬も知れない女を誑かしてきて!」


「ち、ちょっと、誤解を生むような言い方はやめて!」


 俺は、一旦ヘレンを落ち着かせるために、喫茶店でティータイムとしゃれ込んでいた。


「・・・・・・ふぅ〜、ごめんなさい、ガイア。思わず、取り乱しちゃったわ」


「落ち着いてもらえて何よりだよ。それで、マリーのことなんだけど・・・・・・」


「分かってる、ガイアのことだから、きっと何か事情があるんでしょ?」


 やはり、ヘレンは優しい、否優しすぎる。何も聞かずに受け入れてくれるなんて。


「あ、あぁ、まあ、そのことなんだけど、ヘレンにも話しておきたいんだ、彼女のことを」


 俺はヘレンに、マリーのことを知っている限りのことを話した。


 マリーが遺跡の中に閉じ込められていたこと、これまでの記憶を全て失っていることを。


 それを聞いたヘレンは、暫し何かを考え込んでいるようだった。


「彼の言っていることは本当です。私、ずっと1人で・・・・・・でも、彼が連れ出してくれて・・・・・・」


「ガイアの言ったことを疑うつもりはない。ただ、気になっただけ」


「ん? 何が?」


「どうして、マリーは遺跡の中に閉じ込められていたのかなって」


「あ、あー、そう言えば、確かに・・・・・・何でだろうね?」


「わ、私に聞かれても、そ、その、覚えてなくて・・・・・・すいません」


 マリーは申し訳そうに、謝罪を口にする。


「べ、別に謝る必要はないよ? 記憶がないんだもん。仕方ないよね」


 ヘレンは、マリーを慰めるように、優しい笑みを浮かべて、そう口にしていた。


「そ、そう、別にマリーが悪いわけじゃないよ! それよりも、人魚族のことは調べた方が良いかもしれないな」


「う、うん、そうだね、ガイア。明日にでも書庫に行ってみる?」


「まあ、現状、それぐらいしか、できることはないな」


 明日はヘレンとマリーと3人で書庫に行くことが決定した。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ