47話 ヴァルガドの目覚め
いつも夢を見る。大切な人たちが皆、俺を軽蔑し、去っていく悪夢をーー
「・・・・・・っ!! はぁ、はぁ、夢、か・・・・・・」
目が覚めると俺は、ベッドの中にいた。一体、何がどうなっているんだ? 昨日のことを思い出そうとしたが、その度に、頭に痛みが生じる。
だが、何となくは、思い出すことができた。俺がガイア・アーカスとの戦いに敗れたということだ。それから、何故か、俺の頭の中に昔の記憶が呼び起こされた。英雄や神に攫われたこと、それを機に力を求め始めたこと、それが原因でエレーナと疎遠になっていたことをーー
「・・・・・・ああ、そうか。そうだったなぁ、俺、悪魔に身体を乗っ取られちまったんだった・・・・・・本当、情けねえ・・・・・・」
そして、ガイア・アーカスが俺に取り憑いていた悪魔を祓ってくれたわけか。大きな借りができてしまったな。まあ、借りができたならば、返し続ければいいだけだし、俺にとっては大した問題じゃない。
そう、俺は、ある事に気がついた。悪魔が取り憑いていないだけで、魔法の適性が以前と比べて低くなっていることに。それを実際に確かめるために、寮を出て、訓練場へと向かった。
「・・・・・・ギガファイア!!」
悪魔に取り憑かれていた時は、使えていた上級魔法も、もはや使えなくなっていた。
「やっぱり、使えないか・・・・・・」
俺は、昔から魔法の適性が低かった。中級までの魔法しか使えず、周りの貴族からは落ちこぼれだとよく言われたものだ。そんな時、唯一俺に優しく接してくれたのは、同じ公爵家出身のエレーナだった。彼女は、いつも、馬鹿にされている俺を助けてくれた。
しかし、その度に、俺の心は苦しみを味わった。俺にもっと力があれば、彼女に迷惑をかけることはなかったのではないかと思ったからだ。それからは、ひたすらに自分を鍛え続けた。魔法の適性が低い以上、肉体を鍛える他に、強くなる方法が思い当たらなかったからだ。そして、俺は順調に力を伸ばしていった。だが・・・・・・彼女には、いつまで経っても追いつけなかった。エレーナは、魔法も身体能力も他の者とは比べ物にならない程、強い。
俺は、悔しかった。どんなに鍛えても、鍛えても、エレーナを超えるどころか追いつくことすら叶わない。それが、俺はどうしても許せなかった、弱いままでいる自分自身が・・・・・・。
そんな時、俺は、英雄と神を名乗る者に連れ去られ、改めて自分の無力さを理解した。それと同時に、誘拐という名の生き恥を晒して生きるぐらいなら、いっそのこと殺して欲しいとも願ったが、奴らは俺を殺す事なく、また、何もせずに解放した。
正直、それは、俺にとっては地獄だった。弱い自分を一生背負って生きていかなければならないのか、と思うと、いつも死にたくなる。そして、しばらく、自分の部屋に閉じ籠り、枕に顔をうずめる日々が続いた。
そんな時、俺の目の前に現れたのが悪魔だった。悪魔は、俺に力を与える代わりに身体の支配権をもらうとか意味の分からないことを言ってきた。その時の俺は、力が手に入るなら何でも良いと思っていたため、後先考えずに悪魔の提案を飲んだ。
悪魔の言葉通り、確かに俺の魔力は急上昇し、魔法の適性も高くなった。しかし、それと同時に、身体の自由も効かなくなったのだ。その時、初めて察した。最初から悪魔は俺の身体を乗っ取ることが狙いだったのだ、と。
それからの悪魔は、本当にやりたい放題だった。同級生を奴隷にし、挙句の果てには、あれこれこじつけて、人間を痛ぶるのを楽しんでいた。
俺は、それが耐えられなかった。何度も悪魔にこんなことをやめてくれと懇願した。だが、悪魔は聞く耳を持たず、人間への暴力はさらにエスカレートしていった。
もう、どうにもならないと半ば諦めかけていたが、まさか、あの悪魔を倒してしまうとは、ガイア・アーカス、想像以上だな。
助けてもらったことは正直感謝している。だが、それでも・・・・・・悔しものは悔しい!
俺に成し得なかったことをいとも簡単に成し遂げるなんて、夢にも思ってなかった。
そして、俺は、心に強く決心した。ガイアは、恩人ではあるが、超えなければならない壁でもある。
絶対に、ガイアを、精神面でも身体面でも魔法面でも超えてみせる!!




