45話 悪魔
「まさか、強制的に身体から追い出されるとはーー貴様、ただの人間ではないな?」
この重圧感、前世でもこんなに重いのは感じたことがない。明らかに、この悪魔は前世の俺を上回っている。それに、この状況どう考えてもおかしい。普通悪魔が現れれば、騒ぎ出して、辺りは大混乱にはるはずーーだが、ここは、その気配が全くない。まさかーー
「ふむ、その顔、どうやら気付いたようだな」
「ああ、まさか、時間を止める魔法まで使えるとは、正直驚きだ」
「これで、誰かに水を差されることはない。さあ、思う存分戦おうではないか!」
前世で教えてもらった通り、悪魔は筋金入りの戦闘狂みたいだな。
「悪いが、一瞬で決めさせてもらう!」
とはいえ、今の俺の魔力では、どう考えもこの悪魔には通用しない。たとえ、前世の力を使ったとしても、良くても互角だろう。・・・・・・いや、待てよ。確か今この空間はあの悪魔の力で時間が止まっているはず、それなら、俺が前世の魔剣を使っても何も問題はないのではないか?
「一瞬で決める、か。貴様、相当自分の腕に自信があるようだな。ーーだが、俺は一筋縄ではいかんぞ!!」
「さあ、それはどうかなーー来れ、魔剣ディザスター!!」
「!? その剣、まさか伝説の!?」
どうやら、この悪魔は俺の魔剣のことを知っているようだな。まあ、悪魔は長命だし、別におかしなことではないのか。
「ああ、その通りーーこれは、あらゆるものを切り裂くことができる魔剣、如何に悪魔といえども、この剣で斬られれば一溜まりもない」
「ーーなるほど。それならば、当たらなければ良いだけの話だ!」
悪魔において最大の武器は魔法であり、身体能力は然程高くないと前世では教わったがーーこの悪魔、想像以上に速い!
「!? ファストスピード!!」
「ほう、中々の速さだ。まさか、我の攻撃を躱わすとはな」
何とか、ギリギリ躱せたが、次もしあの速さで向かって来られれば躱せるかどうか分からないな。
「ーーどうやら、かなり消耗しているようだな。まあ、無理もない。ヴァルガドとの戦いで魔力をかなり消費したようだからなあ。だから、そろそろ楽になるが良い!」
「くっ! 舐めるなよ、この悪魔がああああああああああぁ!!」
こうなったら、冷静になんて言っていられない。今あるありったけの力をやつにぶつけるのみ!
「・・・・・・! あぁあ、素晴らしい。何という濃密な魔力ーーこれが、これこそが、私の求めていたものに相違ない!」
全身の魔力、それに加えて前世の俺の魔力を手のひら一点に集中、同時に魔法式構築!
「ふふふ、さあ、貴様のその力、我に示すが良い!」
「ーー望み通り! これで終わりだ!! ディストラクション・レイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイィ!!!!」
「くくくく、やはり、あなたがーー」
俺の発動した破壊光線は、悪魔を飲み込み、そのまま生徒達がいる方へと向かっていった。
「!? まずい!? ファストスピード!!」
生徒達が巻き添えになるのを防ぐために、破壊光線を受け止めた。しかし、やはりというべきか、このまま受け止めておくのはあまりにも厳しい。どうすればーー
『な!? これは、一体どういう状況ーー』
どうやら、悪魔を倒したことによって時間が再び動き出したようだが、この状況を打破できそうな人間はこの中にはーー!?
「? ここは、どこだ? 俺は今まで何をーーって、何だ、あれは!?」
悪魔に身体を乗っ取られていたヴァルガドも目を覚ましたようだが、今の状況がまるで理解できていない様子だな。
「くっ! 何が何だか分からないが、おい、そこのお前、それを俺の方に軌道をずらせ!」
「!? い、いや、しかしーー」
「もたもたするな! このままじゃ、死人が出かねんぞ!! 大丈夫、こう見えて、魔法耐性には自信があるんだ!」
確かに、ヴァルガドの魔法耐性ならば、破壊光線も何とか耐えられるかもしれないが、だが、万が一耐えられなかったとしたら、ヴァルガドは確実に死ぬ。いや、耐えられたとしても、無事では済まない。
「どうした! 早くしろおおおおおぉ!!!!」
「くっ! 死んでも恨むなよ! はああああああああああああぁ!!!!」
俺は破壊光線の軌道を何とか逸らし、ヴァルガドの方へと向けた。そして、すぐにそれは、ヴァルガドに直撃した。
「!? ぐっ! こ、これが、破壊光線、ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ!!!!」
まじかよ、ヴァルガド!? まさか、破壊光線を耐えるなんて、そんなの魔法耐性が高いからという理由だけじゃ説明できないぞ! しかし、危機的な状況に変わりはない。今は何とか耐えられているようだが、体力はどんどんなくなってきている。このままでは、ヴァルガドは後5分も持たずに死んでしまう! そんなことは、させない!
「!? 俺の手が!? くそっ! このままでは・・・・・・」
「ーーヴァルガド! 俺も力を貸すよ!」
「お前!? ああ、助かる!」
「受け取れ、ヴァルガド! 俺の魔力を! マジックサプライ!!」
「こ、これは!? 魔力が、溢れてくる!」
「よし、そのまま、魔法を消すイメージをするんだ!」
「な!? ま、魔法を消すイメージって、一体どうすれば・・・・・・一か八かやってみるか! 魔法を消すイメージ・・・・・・! アンチマジック!!」
悪魔が取り憑いてなくても、結構腕はいいな、ヴァルガドは。まさか、一瞬でアンチマジックを使えるようになるとは。
「はぁ、はぁ、何とか、消せ、たーー」
「!? おい、大丈夫か、ヴァルガド!?」
ヴァルガドが急に倒れたので急いで見に行ったが、どうやら、魔力を使い果たして、気を失っただけのようだ。まあ、無理もない。悪魔に取り憑かれて、究極魔法まで使ったんだ。むしろ、それで魔力切れを起こさずに、アンチマジックを使えたんだから、本当にヴァルガドの潜在能力は計り知れない。
そして、試合はといえば、ヴァルガドが気を失っていたため、俺の勝ちとなった。また、ヘレンもジークも無事に勝ち、見事俺たち学院三大魔法使いになったのだった。




