43話 闇の力
魔法競技大会が始まり、俺たちは、順調に勝ち進んでいた。しかし、リーナさんが2ブロックでしかも2試合目だったということもあり、2回戦目でヴァルガドとあたり、敗れてしまった。
男爵家3人組に関しては、俺とジークとヘレンのところに被っていたので、俺たちに倒されて、敗退した。そして、俺は、見事1ブロックの決勝に勝利することができた。
なので、今、俺は、2ブロックの決勝戦を見に来ていた。そう、ヴァルガドとエレーナの戦いである。
「・・・・・・久しぶりね、ヴァルガド」
「その魔力、エレーナ、か」
「ええ、ずっと、屋敷に引きこもっていたけど、どうしてかしら?」
「つまらぬおしゃべりに付き合う暇はない」
「あら、そう。じゃあ、一つだけ、あなた、その力、どうしたの?」
「・・・・・・!?」
痛いところを疲れたかのように、ヴァルガドは、まるで口封じでもするかのように、エレーナに飛びかかった。
「・・・・・・どうしたの? まさか、それが限界?」
しかし、エレーナは、向かってきたヴァルガドを難なく受け止めたのだ。というか、エレーナの奴、どんだけ力強いんだよ。
「ふむ、さすがは、ブラッド家の人間、少しはやるようだな」
「妙に上から目線なのね。まさか、私よりもあなたの方が強い、とでも思ってる?」
「それが、この世界の法則、俺より強い者などあってはならない」
あの口調どこかで聞いたことがあるような気がするが、それがどこだったのか、思い出すことができない。しかし、確実に現世ではないということは分かる。
つまりは、俺があの口調の人物と会ったのは、前世の頃ということになるな。まあ、今はそんなことより、しっかりとヴァルガドを観察しておかないと。
「じゃあ、その世界の法則っていうのを私が捻じ曲げてあげるわ! アイスファイア!」
炎と氷の混合魔法か。灼熱の炎を極寒の氷で包むことで、たとえ、氷を砕かれたとしても、すぐに灼熱の炎がヴァルガドを襲う。やはり、魔法の技量に関しては、エレーナが1番優秀だな。
「ふん、そんなもの! ダークフレイム!」
な!? おい、嘘だろ!? 炎と氷を丸ごと打ち消したのか!? というより、やっぱり、闇に対しての適性が尋常ではないみたいだな。まさか、初級魔法で混合魔法を打ち消すとは。
「やっぱり、やるわね。そうこなくちゃ面白くないわ!」
「俺は、面白くも何ともない」
「じゃあ、こういうのは、どう? ブラッドプロセシング!」
俺と戦った時に使っていた魔法か。確か、血を自由自在に操るブラッドの血を引く者にしか使うことができない魔法、だったな。それに、確か、ブラッド家の者じゃないと消すこともできないとか言っていたな。さて、ヴァルガドは、どう対処するかな。
「これは・・・・・・奇妙な魔法だな。その赤い液体は何だ?」
「素直に答えるわけない、でしょ!!」
赤い血が、鋭利の刃物となり、ヴァルガド目がけて飛んでいく。まあ、あれは、大した速度ではないので、避けるのは、簡単だが、打ち消さない限り、ずっと付き纏われるというのが、面倒なんだよな。
「なるほど、これは、自身の血を自由自在に操る魔法なのか」
「ご名答。でも、それが、分かったところで、何も変わらないわよ!」
さらに、エレーナが血の剣を増やし、ヴァルガドを全方位から攻撃した。しかし、ヴァルガドは、それを難なく避けた。
「確かに、強力な魔法だ。相手が俺でなければ、一瞬で勝負は決まっていただろう。・・・・・・俺でなければ、の話だがな」
「な!? いつの間に・・・・・・!?」
ヴァルガドは、一瞬でエレーナの間合いに入り、そのまま、エレーナを掴もうとしたが、幸いにも、エレーナの反応速度がヴァルガドの攻撃速度よりも速かったため、回避することができた。
「今のは正直驚いた。まさか、躱されるとはな」
「なら、降参でもする?」
「ふん、面白い冗談だな。俺がお前に負けるとでも?」
「ええ、これで、終わらせるわ! ブラッドプロセシング!!」
「無駄だ。俺は、すでに、その魔法の弱点を把握している」
「弱点? 残念だけど、この魔法にそんなものはないわ」
「なるほど・・・・・・ならば、その身をもって教えてやろう。その魔法の弱点、をな」
「ふん、やれるものなら、やってみなさい!」
エレーナは、さらに血の剣の攻撃速度を上げた。俺でも、ギリギリ見えるかどうかだ。しかし、ヴァルガドは、それを避けようともせず、その場にじっとしていた。
その間、ヴァルガドの身体に、魔力が溜まっていくのを感じた。一体、どんな魔法を撃つつもりだ? さっきは、エレーナの魔法の弱点が分かったと言っていたから、その弱点を突くような魔法だろうが、全く想像がつかない。
「・・・・・・ダークフィールド」
ヴァルガドは、広範囲型の魔法を発動させ、試合会場全体が暗闇に包まれた。これは、ヴァルガドも何も見えないんじゃないか?
「な、何、これ!? な、何も、見えない・・・・・・!?」
「お前の魔法は、確かに強力だ。だが、あの魔法は、お前の視覚の影響を大きく受けている」
何も見えないが、声だけは微かに聞こえてくる。それにしても、魔法が視覚の影響を大きく受けているってどういうことだ?
「な、何を、言って・・・・・・」
「これでも、伝わらぬか。要するに、お前の血は、お前の見えている範囲にしか動けない。逆に言えば、視覚を奪えば、この血を動かすことはできないということだ」
「くっ! ・・・・・・それでも、こんなところで、負けるわけには・・・・・・!?」
「・・・・・・否! この試合の勝敗をすでに決している! お前の負けだ、エレーナ・ブラッド。俺の、いや、我の究極の闇の力、その身をもって刻んでやろう! ・・・・・・アルティメット・ダークネス!!!!」
ヴァルガドの魔法で、未だに、試合の様子が見えない。というか、ヴァルガドの魔力がとんでも無い程上昇して、逆にエレーナの魔力がほとんどなくなっているんだが、一体、中で何が起こっているんだ!?
そして、ようやく、ダークフィールドの効果が切れ、徐々に試合会場から闇が消えていき、戦況が明らかになった。ヴァルガドは、無傷で、エレーナは、一応無傷みたいだが、その場に倒れ伏していて、起き上がる気配がない。ということは・・・・・・
「・・・・・・ヴァルガド・ドルマゲス、2ブロック、優勝です!」
その審判の言葉を聞いたAクラスの生徒は、嬉々として歓声を上げる。しかし、予想はしていたが、まさか、本当に、エレーナでも勝てないとはな。
さて、どう戦えば良いだろうか。ヴァルガドが優勝したから、必然的に、1ブロックの優勝者、つまり、俺と当たることになる。ここで、負けたら学院主席の名に傷がつくから、負けたくはない。
だが、最後のアルティメット・ダークネスという魔法の効果が分からない。見た感じ、それを受けたエレーナに傷はなかったから、睡眠や麻痺の類か?
いや、それだと、顔色が青白かったことには、説明がつかない。だとしたら、おそらく、魔力吸収、かな? 俺の頭では、それ以外考えられない。
とりあえず、明日がヴァルガドとの試合だし、今日は魔法の修練をしておこう。学院主席として、負けるわけにはいかない!
そうして、俺は、夜遅くまで魔法の修練をし、流石に、やりすぎだ、早く寝ろとジークから言われたので、仕方ないと諦め、今日は寝ることにした。
「よし! 明日は、絶対に勝つぞ!」
「お、おう、頑張れよ。それと、夜中にそんな大声出すな! 監視魔法が作動するぞ!」
「ご、ごめん。気をつけるよ」
そして、俺は、明日の勝利を宣言し、ジークに注意されてしまったものの、応援の一言もかけてくれたので、ジークの思いに応えるべく、さらに心の中で強く勝利を誓った。




