35話 ヘレンと仲直り③
正直なところ、私は、ガイアをどう思っているのかが、良く分からない。でも、何となく、彼のそばにいると、心地良くて、安心感がある。でも、どこか、切なくもある。ガイアに悪気はないのは、分かってる。むしろ、困っている人をほっとけないところがガイアの良いところだと本気で思ってる。でも、ガイアには、私だけを見てほしいと思ってしまう。だから、彼がエレーナ様を助けると言った時も、正直、複雑な気持ちだった。
「私、これから、どうすれば・・・・・・」
たぶん、ガイアからは、もう幻滅されてるから、私の帰るところは、もうない。それなら、いっそのこと死んだ方が楽になれるのかな。そもそも、私みたいなのが生まれてきたこと自体、間違えだったのかもしれない。これまで、呪いのせいとはいえ、沢山の人達に迷惑をかけてきた。でも、ガイアが呪いを解いてくれて、初めて、生きることを認められたような気がした。ガイアとなら、どんなことでも、上手くいく、そう思ってた。それなのに、ガイアは、私だけを見てくれない。私は、ガイアがいれば、他には、何もいらないと思っているのに、ガイアは、違う。
「・・・・・・ねえ、ガイア、私の何がダメなの? 教えてよ、ガイア?」
私は、ここにいないはずの彼に対してそんなことを投げかける。意味がないと分かっていても、言わずにはいられない。
「・・・・・・ど、どこも、ダメじゃないよ!」
後ろから、聞き慣れた声が聞こえた。そして、今一番聞きたかった言葉だ。
「ガ、ガイア!? いつから、そこに!?」
「ごめん、その、すごく言い難いんだけど、ずっと、扉の前に、いた・・・・・・」
「じ、じゃあ、今の話、全部聞いて・・・・・・!?」
「う、うん、何か、ごめん」
そうか、さっきの話、ガイアに聞かれてたんだ。それなら、もう、生きてても、仕方ないよね。一生恥を背負って生きていくぐらいなら、死んだ方がいい。
「ちょっ! な、何してるの、ヘレン!?」
「は、離して! 私のことは、ほっといて!」
「そんなことできないよ! ・・・・・・ヘレンは、俺にとって、大切な、人、だから!」
「・・・・・・え?」
ガイアの突然の言葉に私は、耳を疑った。でも、素直に信じることはできなかった。もし、本当に私のことが大切なら、エレーナ様よりも、私を優先するはずだと思っているからだ。
「で、でも、エレーナ様が誘拐された時、私よりも彼女の方を選んだじゃない! 本当に、大切なら、私以外の人は、助けたりしな・・・・・・!?」
「それ以上、言っちゃだめだ、ヘレン!」
ガイアは、私の言葉を遮り、突然抱きついて、口を塞いでくる。
「・・・・・・確かに、俺は、困っている人は、ほっとけない。それで、ヘレンに寂しい思いをさせたなら、いくらでも罵ってもらって構わない。でも・・・・・・自分以外は、助けるな、なんて絶対に言っちゃだめだ!」
ガイアの言葉が、胸に次々と刺さってくる。その度に私は、本当に自分が情けなくなってくる。もう、それ以上言わないで!
「不満があるなら、俺に言ってくれ! 必ず、改善してみせるから! だから、自分のことだけじゃなくて、人のことも少しは、考えてくれ!」
そう言うと、ガイアが、私の口に置いていた手を離す。そして、私も思っていることを全て伝える。
「そう言うガイアこそ、少しは、私の気持ちを考えてよ! 私が、どれだけ、不安になったか、あなたに分からないでしょ!」
これが、ただの八つ当たりであることは分かってる。ガイアは何一つ悪いことはしていないことは、分かっているのに、受け入れられない。
「ああ、分からない・・・・・・そんなこと言ってもらわなきゃ、分からないよ!」
確かに、言わないと伝わらないこともある。でも、こんなこと、言えるわけないじゃない。
「それでも、少しは察してよ! それぐらい、ガイアならできるでしょ!」
「無茶言うなよ! いくら俺でも、人の心の中までは分かるわけないだろ!」
確かに、その通りだけど、それでも、ガイアには分かってほしかった。
「・・・・・・ガイア、やっぱり、あなたも、私を分かってくれないのね・・・・・・」
「・・・・・・ちょっと、待て、ヘレン! 確かに、俺は今、人の心の中は分からないと言った。だが、それは、ヘレンにも当てはまることじゃないのか? ヘレンだけじゃない! 他の人たちも心の中までは分からない! だからこそ、言葉を交わすことが大切なんだ! それは、ヘレンだって分かっているはずだ!」
「・・・・・・そ、それでも! それでも、ガイアには、分かってほしかった!」
「ヘレン・・・・・・俺は、キミが好きだ!」
「!? い、今更、そんな嘘で・・・・・・!?」
「嘘じゃないよ、ヘレン。俺は、本当に君のことが好きだ!」
「わ、私だけを、見て、くれないくせに・・・・・・」
「それは、違うよ、ヘレン。確かに、俺は、困っている人たちはほっとけないし、これからもそういう人たちには、きっと手を差し伸べる。でも、それと恋愛は全く結びつかないよ。俺は、助けたいから助けているだけ、別に好きとかそういう理由じゃない。それに、俺の心は、初めて出会った時から、ずっと君を思い続けてる!」
そう言って、俺は、ヘレンを優しく抱きしめた。今の俺にできる最大限のお詫びの証、これで、許されるとは思っていないが、少しでもヘレンの悩みを軽くしてやりたい。
「・・・・・・!? ガ、ガガガガガイア!? な、なななななななな何、してるの!?」
「あ! ごめん! 嫌だった?」
「・・・・・・嫌、じゃない・・・・・・」
「・・・・・・え? 今、何て?」
「い、嫌じゃないって言ったの! もう、ガイアのいじわる!」
良かった、この様子だと、どうやら、ヘレンの機嫌は直ったみたいだな。
「・・・・・・じゃあ、ヘレン、教室に戻ろうか? 流石に、先生も痺れを切らしていると思うから」
「う、うん、そう、ね」




