24話 子孫との闘い
翌日。
俺が、目を覚ますと、ベッドから転げ落ちているジークの姿が目に入った。この人、寝相悪いんだな。ジークの意外な一面が見え、少し、笑いが出そうになる。でも、そろそろ、ジークも起こさないと、このままじゃ遅刻するしな。
「おーい、ジーク、もう朝だぞー」
しかし、ジークが起きる気配がまるでない。弱ったな、このままじゃ本当に遅刻するかもしれないぞ。俺だけなら、余裕で間に合うけど、流石に、同室のジークを見捨てるのは良心が痛む。
「うーん、よし! かくなる上は、ウォーター!」
俺は、ジークの身体に水をかけることにした。
「うわあっ!? 何だ、これ!?」
「おはよう、やっと起きたな」
「ガイア? ・・・・・・お前が、俺に水をかけたのか?」
「ああ、その通り。いくら呼び掛けても起きなかったからさ、水をかけさせてもらった!」
別に隠す必要もないし、それに、隠しても、どうせ、ジークにはすぐにばれるから、正直に話したほうが絶対に良い。
「だからって、何で水なんだよ! 風邪引いたら、どうするんだ!」
「・・・・・・い、言われてみれば、そうだな。悪い。考えが足りなかった」
「まったく、起こしてくれたのは、ありがたいけど、次から、魔法以外の方法で起こしてくれよ!」
おっと、それは、俺に、これから毎日起こしてということかな。魔法が嫌なら、すぐに起きるか、自分で起きるとか、すればいいのに。
その後俺たちは、学院に向かった。すると、俺たちの教室から何やら騒がしい声が聞こえてきた。その声は、俺が近づくにつれ、徐々に小さくなっていく。そして、俺が、教室のドアを開けようとするときには、先程までの声が、完全に静まった。一体何なんだろうか。すごく気になる。
「ガイア・アーカス、ちょっといいかしら?」
俺が席に座った時、エレーナさんから、声をかけられる。
「な、何でしょうか?」
「そんなに身構えなくても大丈夫ですよ。別に取って食おうだなんて考えていませんから」
こういう人が1番信用できないんだよな。取って食うつもりがないなら、わざわざ、そんなこと言わないだろ。
「しかし、あなたにムカついているのも事実ですわ」
俺、エレーナさんを怒らせるようなことした覚えがないんだけどな。
「あの、まったく、身に覚えがないんですが、何にムカついているんですか?」
「・・・・・・そ、それは、言えないわ。それより、あなた、私と勝負しなさい!」
俺の質問に、エレーナさんは答えることはなく、逆に戦いを挑まれてしまった。どうして、こんなことになったんだろうか。
「えーっと、それは、いきなりすぎて、理解し切れていないというか・・・・・・」
「正直なところ、あなたが主席に選ばれたことに納得がいっていないのよ。だから、あなたが主席としてふさわしい力を持っているのか私に見せて欲しいの!」
そんな理由か、それなら断ることもできるけど、この人、断ったら断ったで後々面倒臭そうだからな。受けるしかないか。
「分かりました! その勝負受けます!」
「・・・・・・っ! 意外、てっきり、断ると思っていたけれど、でも、嫌いじゃないわ、そういうの」
その時、教室のドアが開き、サリー先生が入ってきた。
「皆さん、おはよう! ところで、これは、何の騒ぎ?」
その先生の問いにジークが答えている。
「何でも、ガイアとエレーナ様が一騎討ちするみたいですよ」
すると、先生が、突然、目を輝かせた。
「何、それ!? 面白そうじゃない! いいわ、私が許可します! 場所は、練習場を使って良いわよ!」
すると、エレーナさんも嬉しそうにしながら、先生にお礼を言っている。
「サリー先生! ありがとうございます! じゃあ、早速行きましょうか、ガイア・アーカス!」
「あ、ああ、うん」
そして、俺たちは、サリー先生の許可をもらい、学院の練習場に来ていた。それにしても、ちょっと、広すぎやしないか、この練習場。これ、普通に、家が1軒か2軒は建てられるぞ。
「それでは、僭越ながら審判は私が務めさせていただきます! 2人とも位置に着いて下さーい!」
「ガイア・アーカス、覚悟はいいわね?」
「ああ、もちろんだ! とっくの昔に覚悟は決めてる!」
「そうこなくっちゃ! じゃあ、いくわよ! メガファイア!」
「メガウォーター!」
昔から火は水に弱いっていうのは常識だったからな。火には、水を使えば相殺できる。
「まだまだよ、マジックガトリング!!」
魔力で生成された弾丸、しかも、こんなに大量に。まったく、本当に俺の子孫は優秀だな。だけど、俺には通用しない。
「マジックバリア!」
「な!? まさか、全部弾いた!?」
「この程度で驚いてもらっては困りますよ、エレーナさん?」
「・・・・・・ええ、そうね、ごめんなさい。あなたが予想以上の力を持っていたものだから、少し驚いただけよ。それと同時に嬉しくもある」
「嬉しい? 一体何が?」
「これで、手加減せずに、思いっきり戦えるからよ! 見せてあげるわ! ブラッド家が創り出した最高の魔法を!」
ブラッド家の最高の魔法って何のことだろうか。もしかして、俺が死んだ後に作られたものなのかな?
「・・・・・・魔法式構築・・・・・・いくわよ! ブラッドプロセシング!!」
エレーナさんが、魔法を発動させると赤い液体が、彼女の周りをまるで渦のように回っている。
「お待たせ、準備できたわ。それじゃあ、続きを始めましょう!」
「ああ、望むところだ!」
あの魔法がどういうものなのか分からない以上、近づくのは、あまりに危険すぎる。まずは、遠くから、魔法の特性を調べないとな。
「はああああぁ!」
彼女の叫び声と共に、赤い液体が大量の鋭い剣となり、俺に向かってくる。
「クッ! はあぁ!」
俺は、なんとか、その赤い剣を全て叩き落とし、エレーナさんに魔法を唱えようとした瞬間、再び、赤い剣がこちらを目掛けて飛んできた。しかも、先程よりも速く、貫通性も上がっていた。というか、この剣から、微かに漂ってくる鉄の匂い、もしかして、これは、血、なのか?
「随分と粘るわね。大人しくすれば、楽に逝けるのに」
そう言われて、大人しくする人は、誰もいないと思うが、今はそんなことよりも、どうやってあの魔法を防ぐかだ。難なく、躱す事はできるが、今のところ一歩も前に出ることができていない。このままじゃ、俺のスタミナの方が先に切れる。それなら、一か八か試してみるか。
「・・・・・・アンチマジック!!」
「な!? う、嘘でしょ!? この魔法を打ち消した!? あ、ありえない、ありえないわ! ブラッドの血を引くものしか、消すことができないのに・・・・・・!?」
アンチマジックで打ち消せるのか。それなら、話は簡単、打ち消しながら、前に進むのみ!
「クッ! はああぁ! やああぁ!!!!」
「アンチマジック! アンチマジック! ・・・・・・!」
そして、俺は、血でできた武器を全て消しながら、前に前に進んでいき、ようやく、エレーナさんの間合いに入った。
「・・・・・・これで、終わりだ! パラライズ!」
「うっ! 何これ!? か、体が、動かない!?」
麻痺魔法を使ったから、しばらくは、痺れて身動きが取れない。つまり、これで、俺の勝ちだ。
「ちょっと、何で勝った気でいるのよ! 戦いはまだ終わってな・・・・・・!?」
どうやら、麻痺させても負けを認めていなかったようなので、俺は高速で彼女の溝打ちに拳をねじ込み、彼女は気を失って、先生も俺の勝ちであることを認めてくれた。
「やったー! やったね! やっぱり、ガイアは、凄いよ!」
その後、ヘレンに思いっきり抱きしめられた。少し苦しかったが、悪くはなかったな。
この闘いが終わった後も、懲りずに何度も何度もエレーナさんが勝負を挑んできたので、その度に、俺は、彼女を返り討ちにした。しかし、何度負けても一向に心が折れる気配がない。きっと、それだけ心が強いということなんだろう。一回負けて諦めるよりかは、全然マシな方だ。現に、彼女は闘いながら、学んでいるのがよくわかる。どんなに負けても次闘う時は、前よりも格段に強くなっているからだ。この分じゃ、いつかは、俺よりも強くなるかもしれないな。それなら、追い抜かれないように、俺ももっと強くならないとな。
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