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16話 お泊まり



 俺は、ヘレンがさりげなく言った言葉に、驚きを隠せなかった。一瞬、世界の時が止まったのではないかと錯覚した程だ。それにしても、ヘレンが俺の家に泊まると言い出すなんて、俺としては、嬉しくない訳じゃないし、むしろ、大歓迎だけど、父さんと母さんはなんて言うかなあ。あの2人のことだから、ダメとは言わなそうだけど・・・・・・なんか、凄くいじられそうな気がする。


「なあ、そ、その、ヘレン? 本気か?」


「当たり前じゃない! 入試の対策をするなら、ずっと一緒にいた方が効率がいいでしょ?」


まあ、それは、確かに一理あるけど、年端もいかない少女が、男の家に泊まり込むなんて、倫理的に問題があるのではなかろうか。


「・・・・・・ガイア、もしかして、私が泊まったら、迷惑?」


ヘレンが上目遣いで目を潤ませながら、尋ねてくる。それは、流石にずるいよ。そんな顔見たら断れない。


「迷惑なんかじゃないよ。ただ、お父さんとは相談したの?」


「あー、そのことなんだけど・・・・・・実は、お父さんも一緒に泊まることになったの」


「・・・・・・そ、そうか、それなら、安心だね、うん」


「何、今の間?」


「い、いや、別に、何も!」


「ふーん、まあ、いいわ! じゃあ、早く帰りましょ!」


「う、うん、そうしよう!」


まあ、それは、そうだよな。いくらなんでも、女の子一人を泊まりに行かせる訳ないよな、冷静に考えて。べ、別に、俺は、ヘレンと二人きりじゃなくて、残念とか思ってないんだからね!


「・・・・・・着いた、じゃあ、改めて・・・・・・これから、よろしく、ヘレン」


「こっちこそ、よろしくね、ガイア!」


そして、俺は、ヘレンと一緒に家の中に入った。


「ただいまー」


「お帰りー、ガイアちゃん・・・・・・え? その子・・・・・・」


「あー、母さん、彼女は・・・・・・!?」


「あなたー! ガイアちゃんが、もうお嫁さんを連れてきたわー!!」


ちょっと、何言ってるの、母さんは!? ヘレンも凄く顔が赤くなってるし、一体どんな考え方したら、俺が嫁を連れてきたってことになるんだよ。そもそも、年齢的に俺もヘレンもまだ6歳で、結婚できるような歳じゃないぞ!


「こ、個性的な、お母さん、ね?」


「本当に、ごめんなさい、家の母が、勝手な勘違いを・・・・・・」


「べ、別に、ガイアが謝ることじゃ・・・・・・だから、そんなに、気にしないで、ね?」


「う、うん、ありがとう、ヘレン」


こうしている間にも、未だに母さんは、俺が嫁を連れてきたと騒ぎ立てていた。そんな騒ぎを聞きつけたのか、父さんもこちらに来た。


「あ、あなた、大変よ、ガイアちゃんが!?」


「そう、取り乱すな、ルーナ。冷静になって考えてみろ、2人はまだそんな歳じゃないだろ? なあ、ティオ?」


「ああ、その通りだ、まあ、ゆくゆくは、ガイア君に、娘を託すのも悪くないと思うがな」


「ちょっ! お、お父さん!? よ、余計なこと、言わないで!」


「・・・・・・少しは、落ち着いたか、ルーナ」


「え、ええ、ガイアちゃん、ヘレンちゃん、ごめんなさい。見苦しい姿を見せてしまったわね」


「い、いえ、そこまでは・・・・・・」


泊まるって言われた時はどうなることかと思ったけど、案外、賑やかで楽しいものなんだな。


「じゃあ、皆んな、お腹空いてるでしょうから、ご飯にしましょう!」


「おう、やったー! 母さんの料理は本当に美味しいんだ! ヘレンもきっと気に入るよ!」


「え? そうなの! 楽しみ!」


そして、母さんが料理を運んできた。豚の丸焼きに、野菜炒め、海藻のスープに主食の芋など、数々の料理がテーブルに並べられていった。本当に、母さんは料理が上手だな。毎日、こんな豪勢な料理を食べられるなんて、幸せだ。


「うわあ〜、美味しそう〜!」


ヘレンも料理に目を輝かせている。


「では、頂くとしよう。いただきます」


「「「「いただきます!」」」」


そして、ヘレンもヘレンの父さんも、母さんの料理を凄く気に入ってくれた。明日から、気を引き締めて、頑張らないとな。そして、食事の後、ヘレンの寝る場所について話し合った結果、両親は俺の部屋で寝たらいいと言った。いや、それって、流石に問題なんじゃない。同年代の少年と少女が同じ部屋で寝るなんてさ、まあ、俺は良いけど、ヘレンがどうか分からないし、と思い、ヘレンに聞くとあっさりと受け入れた。


そして、俺は、ヘレンを部屋に案内した。


「ここが、ガイアの部屋・・・・・・!」


「う、うん」


そして、俺は重大なことに気がついた。それは、ベッドが一つしかないということだ。本当にどうしよう、子供2人なら、一緒に寝られない訳じゃないけど、それは、流石にまずい気がする。それに、ヘレンを床で寝させるなんてさせたくないから、俺が床に寝て、ベッドはヘレンに使ってもらおう。これで、いい。


「ん? ねえ、ガイア、ベッド、一つしかないけど・・・・・・」


「だ、大丈夫! 俺は、床で寝るから、ヘレンはベッドを使って!」


「え? でも、それは・・・・・・そうだ、ねえ、ガイア! 私、良いこと思いついた!」


「良いこと?」


「うん! ベッドが一つしかないなら、一緒に寝れば良いんだよ! そうすれば、何も問題はないよね?」


「い、いや、でも、さ、流石に一緒に寝るのは・・・・・・!」


「・・・・・・だめ?」


「・・・・・・だめ、じゃ、ない・・・・・・」


「なら、問題ないね!」


あんな悲しそう顔されると流石に断れないし、仕方ないか。それにしても、ヘレンはどうしてそこまで俺と・・・・・・もしかして、ヘレンも俺のこと好きなのかな。いや、流石に、それは自意識過剰すぎるな。


「お休み、ガイア!」


「うん、おやすみ、ヘレン」


そうして、俺とヘレンは一緒に寝ることになった。そこで、新事実が発覚した。ヘレンは、凄く寝相が悪い!



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