10話 鬼神乱入
ガイアが村に向かっている頃、冒険者たちは、多勢のゴブリンたちから、何とか村を死守していた。
「ちっ! どれだけいるんだ! 倒しても倒しても、キリがねえ!」
「私も、そろそろ魔力が限界だ。早くケリをつけないと、こちらが危ないぞ!」
ゴブリン1体1体の強さは大したことはないが、あまりの数の多さに、冒険者たちは疲労困憊していた。そんな中、アランとティオ、そして、数名の冒険者たちは、最前線でゴブリンの猛攻を食い止めていた。
「・・・・・・アラン! 私が広範囲殲滅型の魔法を構築し終わるまで、時間を稼いでくれ!」
「ティオ・・・・・・ああ、分かった!」
そして、ティオは、魔法の構築を始める。中級までの魔法なら、構築しなくても、魔法名を言うだけで発動できるが、上級以上の魔法は、魔法式を構築しないと、使えないため、発動までには数分はかかるのだ。
「いいか、皆んな! ティオが魔法を構築するまで、ゴブリンどもを一匹もこの奥に通すんじゃないぞ!!」
「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉ!」」」」」
冒険者たちの勢いが増したことで、ゴブリンたちは、気圧され、このままいけば、冒険者たちの勝利に終わる、はずだった。
「・・・・・・っ! な、なんだ、この、魔力は!?」
強大な魔力を持つ主が近づいてきた瞬間、ゴブリンたちが嬉々として、再び勢いを取り戻した。
「・・・・・・皆んな、下がれ!」
ティオが叫び、その声を聞いた者たちは、皆、後ろに後退した。
「・・・・・・ギガファイア!!」
ティオの炎で大半のゴブリンは消滅したが、ただ一匹、まだこちらに向かってくる者がいた。
「・・・・・・今の魔法は中々良かったぞ。まさか、人間の中にも、これ程の魔法を使うものがいるとはな」
その場にいる皆んなが、驚愕した。ギガファイアは、炎系魔法の上級の魔法、大抵の相手なら一撃で屠ることができるのだが、それを受けても、目の前の敵は、無傷で立っていたからだ。
「・・・・・・その、額から出た2本の角に、人間のような体つき、まさか、貴様、オーガ、なのか?」
戦闘を傍観していたリリーが声を上げる。
「オーガ、か。かつては、俺もそうであった。だが、今は、違う! 俺は鍛錬を積み重ね、神化したのさ、鬼神にな!」
生き物は、過酷な状況を潜り抜ければ、まれに、自身と同じ種族の神に最も等しい存在になれるのだ。
「な!? き、鬼神、ですって!?」
「ふん、そんなに騒ぎ立てるな。まったく、これだから人間は」
どうやら、リリーも驚きを隠せないようだ。それだけではなく、アランやティオ、その他大勢の冒険者たちも驚きを隠せずにいた。
「・・・・・・どうだ、アラン。あいつを倒せる自信は、あるか?」
「・・・・・・正直に言うが、あれは、俺では無理だ」
「やっぱり、そうだよな」
「・・・・・・あなたたち、ちょっといい?」
「リリーさん!? どうして、こんな前に・・・・・・!」
ティオの言葉は、リリーによって遮られた。
「いい、よく聞いてね。私が、今から、ティオ、あなたに、魔力を全て渡すわ。だから、あなたは、その魔力を使って、全力で身体強化の魔法をアランにかけてちょうだい」
「了解!」
「アランもよ! この作戦の要はあなたなんだから!」
「ああ、了解した!」
「何をこそこそ話し合っている? お別れの挨拶でもしていたか?」
「ええ、そうね、お別れの挨拶をするつもりよ」
「・・・・・・人間というのは、なぜ、そうも簡単に諦められる? 命が惜しくないのか? お前たちも命ある者ならば、もっと粘って見せろ!」
「あら、何か、勘違いしているようだから、教えてあげる」
「何だと?」
そして、リリーはティオの手を取り、自信の全魔力を注ぎ込む。
「・・・・・・ここで、死ぬのは、あなたの方よ! 始めなさい、ティオ!」
「はい! フィジカルエンハンスメント!!」
「おぉぉ!! 魔力の量だけで、ここまで、変わるのか!? だが、これで、誰にも、負ける気がしない!!」
「・・・・・・身体強化、か。だが、そんなもの、俺の前では、無意味だ!」
「じゃあ、始めるか。・・・・・・勝負だ、鬼神!!」
「ほざくな、人間!!」
そして、両者は、人間の認識速度を遥かに超えた速度で、互いにぶつかり合い、今まさに、剣を撃ち合っている。二人の剣がぶつかる衝撃で、木が倒れたり、村人の家が真っ二つになったりと被害が多発している。
「貴様の剣、中々に見事だぞ、人間にしてはな」
あれほどの激しい戦いの中で、鬼神の身体には傷ひとつついていない。しかし、それは、アランも同じだった。
「貴様もな。そろそろ、この力にも慣れてきたし、本気で相手をしてやる!」
「ほう、良かろう。ならば、貴様の全力をこの俺にぶつけるがいい!」
「では・・・・・・いくぞ! ファストムーブ!!」
「さらに、速度を上げたか・・・・・・では、俺も! ファストムーブ!!」
何と、鬼神もアランと同じ魔法を使った。
「クッ! やはり、貴様も魔法を使えるのか」
「当然だ! これでも、神の領域に至った身、魔法一つ使えないようでは、話にならない・・・・・・さあ、次は何を見せてくれるんだ?」
この時、アランは思った。この鬼神は、次元が違いすぎると、たとえ、俺が別の魔法を使ったとしても敵も同じ魔法を使ってくるだろうから、意味のないことだと。
「・・・・・・何もないのか? ないなら、こちらからいくぞ! ウインドカッター!!」
風の刃がアランに目がけて超高速で迫ってくる。アランは、それを何とか剣で相殺したが、懐に潜り込んだ鬼神によって、アランは瀕死の状態に陥った。
「剣で魔法を防いだところまでは良かったが、その間、身体が無防備になっていたぞ。そんなことでは、一生、俺には勝てん!」
そして、アランは、その場に倒れ、それを見た冒険者たちは、皆、絶望を露わにした。




