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天地返る

【注:本日二話目の更新です。

 前話「サリナ登場」を未読の方は、そちらの方からお読み下さいませ】


「久し振りやな。サリナ」

 

 木場がシルバーフレームの眼鏡の奥、冷気を含んだ視線を細める。

 鳴砂は笑った。


「コウイチさん。また下っ端の組員いじめてんのん? やめてあげえや。可哀想に」

 

 そう言って九鬼の隣に腰を下ろすと、九鬼は固まった表情のまま鳴砂をずっと見つめている。


「お前……まさか……」


「驚いたな。高速の入り口付近で見失うたと聞いてたから、もうとっくに東京にでも逃げてるんかと思てたら……なんや、組筋に世話してもろてたんかい。大したもんやな。

 さすがに組の会計を誘惑して、金とチャカ持って逃げただけのことはあるがな。

 東京に探しに行かせた奴等に電話して、帰って来させなあかん」

 

 木場は鳴砂から視線を外さず、煙草を吸い付けた。


「金は持ち逃げしたんと違う。あれは退職金や」

「ほお。こっちは退職てなもん認めた覚えないんやけどなあ」

 木場は余裕のある含み笑いを見せた。

「依願退職や。コウイチさんの相手するんにも愛想が尽きてん」


「歩。わしはお前のために離婚して、ちゃんと籍まで入れようと言うた。そこまでしとんのに、何が不満やねん」

「ほんなら聞くけど、コウイチさんこそ俺の何が不満やねん。あんな名前も知らんような男と寝て」

「なんべん言うたらわかるんや。あれは付き合いや。紹介されたら、そうせなあかん時もある」


「ふうん。付き合いって、警察と? 警察官に紹介されたら誰とでも寝るん?」


 木場の視線が更に細くなる。


「歩。知らん方がええこともあるんやぞ?

 それにお前も人のことは言えんやろう。会計の山内を『どうしても今すぐに会いたい』と涙声でたぶらかしたそうやな……。

 その隣の男とはもう寝たんか?」  


 鳴砂の表情がフッと消え、目が据わる。


「コウイチさん。ええ事一つ教えてあげるわ。

 持って逃げたあの拳銃は、コウイチさんと心中するために使うつもりやったんやで?

 それをあの会計の男がやめとけと言うから、代わりに退職金で我慢したんや。だから、あの山内いう人に感謝せなあかんねんで? コウイチさん。

 あの人おらんかったら、今頃俺と二人で地獄の入り口や」


「なかなか泣ける話やないか。

 組の金を五千万も持ち出すよりは、ずっとそっちの方がええ。何でそないせんだんや」

「そうしたら一緒に死んでくれはったんですか?」


「さあな」と言って木場は眼鏡のレンズを反射させ、顎を上げて煙を吹き上げる。


 顔をしかめて二人の話をジッと聞いていた九鬼に、木場が向き直る。

「九鬼君いうたか……悪いけど、今日のところは帰ってくれるか? わしはこいつと二人で話さなあかん」


「そういう訳にはいかへんねん。コウイチさん」鳴砂が遮る。


「コウイチさんが俺の後釜に据えようとしてた子。あの子は元々墨元の経営する店で働いてた子や。

 チヒロ君言うて、今はその時の記憶が無いけど、俺の親友の恋人やねん。愛し合う二人を引き裂くやなんて、悪趣味やで?」


「なんや。ほんなら連れ去ったいうのは、お前の親友か。

 そうか……チヒロ言うんか、あの子は。お前と違おて、わがまま言わんええ子やった」

「せやろ? コウイチさんには勿体無いんと違う?」


 木場が溜め息をつく。

「お前……自分の立場が分かって、もの言うてるんか? まさか一年以上もここに出入りしとったくせに、組の金を持ち出してタダで済むとは思てへんやろな。

 まあええ。その話はあとや。

 九鬼君。そういうことなら、あのチヒロたらいう子はあんたの所に返そ。元々頼まれて与ってただけやし、手も出してへんから綺麗なままや。

 そのかわり金輪際、歩の件には関わるな。何かあったら、俺は墨元が組の金を持って逃げた逃亡犯をかくまったと上に伝える。そうなったら抗争や。同じ枝の組み同士が争い合ういうことはどういう事かくらいは、あんたも極道やったら分かっとるわなあ」


 開いた足の間に両手を垂らし、前屈みになって木場は九鬼の顔を覗きこんだ。

 九鬼のこめかみに、汗が一筋伝う。


「木場さん。すんませんけど、二人で話しさせて下さい。鳴砂と」

 九鬼が張り詰めた声で言うと、木場は壁の時計にチラリと目をやる。

「五分や。それが終わったらさっさと帰れ。

 歩は俺の部屋へ来い。しっかり話をつけんといかん」

 そう言って煙草を灰皿に擦り付け、木場は部屋を出て行った。


 九鬼が立ち上がる。

 息を吐いて鳴砂を正面から見下ろし苦笑する。


「どうりでな。極道慣れし過ぎてると思てたんや。

 お前が……サリナか。

 そういや、反対から読んだらサリナになるもんな。サリナ、ナリサか。上手いこと考えてある」

 

 鳴砂も立ち上がった。

「ごめんなさい。いつまでも隠し通せるとは思てへんかったけど……」 

「結局俺もタツノも利用されとったんやな。どこまでが嘘やったんや。タツノと事故起こしたん、あれも全部計画の内か?」


 鳴砂は目を伏せて、寂しく笑う。

「あれはホンマの話です。信じてもらわれへんやろうけど、タツノに出会ったのも、墨元に潜り込めたのも、全部偶然。計画なんかやない。身元が知れたら迷惑がかかるんは分かってたけど、だんだん居心地が良くなってしもて……逃げる機会を失った」


「お前これからどないすんねん。五千万て……。さすがにタダでは済まんぞ?」

「ええんです、俺は。九鬼さんとおれて楽しかったし、元々死のうとしてたんやから覚悟は出来てる。

 事務所に帰って、タツノとチヒロ君を呼び戻してあげて下さい」


「自分の身だけ犠牲にしたら、後は上手く納まるってか。気に入らんなあ、そういうんは」

 鳴砂は九鬼の背中にそっと両手を回した。

 スーツの胸板、柔らかい生地に頬を寄せると温かい。瞳を閉じた。


「みんなの願いはいっぺんには叶わんと言うたんは、九鬼さんやないですか……」


 顔の右斜め上で、深いため息が聞こえた。


「車のダッシュボードの中に指輪ケースがあって、その中に鍵が入ってます。ここからすぐの駅にあるコインロッカーの鍵です。

 金も拳銃も手付かずのまま入ってるから、全部九鬼さんにあげます。それで新車でも買おて下さい。残った分でチヒロ君の学費を払て、私立の大学にでも行かせてあげて下さい。あと残った分で、事務所の改築でもしたらええんと違いますかね。ほら、東京の組事務所みたいにお洒落な感じに」

「アホか。あんなこ洒落た事務所に極道が通てたまるか。

 金もチャカもここへ返せ。それがお前の為や」


「九鬼さん。俺にも意地ってもんがあります。

 本気で好いた相手に浮気されて、逃げたと思ったら、のこのこと帰って来て。お金を返すから許してくださいなんて事、絶対言いとおないんです。それに金が返ってきたところで、俺の立場は変わらへん」

 真剣に言うと、また九鬼が息を吐く。

 鳴砂は車の鍵を九鬼のポケットに忍ばせた。


 不意に肩をつかまれ、身体が離れる。


「もうええ、お前なんか。好きにさらせ……」


 小さく呟き、九鬼は部屋を出て行った。


 後ろを振り向いて背中を見送ることもせず、鳴砂はかすかに微笑んだ。

 しばらくして愛車のエンジン音が外で唸る。




「遅かったな……」

 部屋を出て二階へ上がり、突き当りの部屋に入ると、木場はダウンライトだけの薄暗い部屋の中で、一人掛けのソファーに足を組んで座り、煙草を吸っていた。重厚な革張りのカウチソファーに、そろいのローテーブル。棚に並ぶ酒瓶。センスのいいカーテン。前はよく静かなジャズが流れていた。

 鳴砂はこの部屋が好きだった。強い酒と心地よい雰囲気にのまれて、よくこのソファーで木場と肌を合わせた。ここで身体を重ねていたのが自分だけではないと知って逆上したこともあったが、不思議なくらいに今は何も感じない。 

「そんな所で突っ立っとらんと、中に入れ」

 言われて部屋のドアをしめ、木場の前に歩み寄る。


 白い煙越しに鋭い視線が鳴砂を刺す。

「どうした。ストリップでもして、わしの機嫌を取った方がええのと違うか?」

 鳴砂は鼻で笑う。


「歩。金はどこや。

 金の在り処を言うて、ひざまずいて許しを請うたら、お前の進退考えたらんこともない」

「冗談。金なんか一銭も残ってへんよ? 組筋にかくまってもらには、ぎょうさん金がいるねん」


 途端、下腹部に衝撃が走り、身体が後ろへ吹っ飛ぶ。

 ローテーブルに背中を打ちつけ、派手な音を立てて倒れこむ。

「痛っ……」

 顔を歪めて手をつき、上半身を起こした。


「お前はほんまにしつけがなってない。わしが甘やかし過ぎたなあ。

 ええ加減なことばっかりぬかしやがって。きちんと躾し直さなあかん」

 木場がゆっくりと立ち上がる。

 床に倒れたまま、鳴砂は表情を強張らせて後ずさる。


「歩。お前は今日から人間以下や。これからペットとしてここで飼おて、飼い主への忠誠いうもんを、きっちりその身体に覚え込ましたるわ。金の在り処は、そのうち嫌でも吐きたくなるやろ」


 額に冷や汗がにじむ。

 鳴砂の足元に木場が一歩近付いた。

 唾を飲み込み更に後ずさると、背中に壁があたる。


「ずっと愛人の地位で満足してたら良かったものを。ほんまにお前はアホや。

 とりあえず服は脱ごうや、歩君。ペットに衣類はいらんやろ。

 せや、名前も――」


 地響きを伴う轟音――。

 地震のように部屋が揺れ、カチャカチャと棚の酒瓶が音を鳴らす。


「なんや……?」

 木場は顔をしかめて窓の方へ歩き、ブラインドの間から外を覗く。

 しばらくすると、勢い良く部屋のドアが開いた。


「九鬼……さ、ん……」


 そこには見慣れた男が立っていた。

 見覚えのあるボストンバッグを持っている。


「なんやお前。帰ったんと違うんかい」

 状況が把握できない木場は、九鬼を見るなり言った。


 九鬼は何も言わずに持っていたバッグを床に投げる。

 ドサリと落ちたバッグの開いた口から、札束が覗いている。

 鳴砂の顔が凍りつく。


「これは鳴砂が持って逃げた金や。五千万の半分、二千五百入ってる。

 残り半分の金とチャカはコインロッカーに置いてきた。

 この鍵と、そこのガキとを交換や」

 九鬼が真剣な顔の横で、小さな鍵を振る。


「はあ?」

 一番声を発するに相応しくない鳴砂の口から声が漏れた。


「お前……面白い奴やなあ。そんな要求わしがのむ思てんのか? 金もチャカもこいつも、元々は全部こっちのもんやねんぞ?」

 木場は嘲笑う。


「木場さん。この要求をのんでもらわれへんのやったら、俺は今から島田の本部に金とチャカを持ち込む。あんたの組が逃がした幹部の愛人を俺が代わりに捕まえて、金とチャカを取り返してやったと言うてな」 


 眼鏡のレンズが乱反射。さっきまでの表情が一転して、木場の顔が強張る。


「どうせ金を持ち逃げされた事は本部には言うてへんのやろ? そら組の恥やもんなあ。その恥を他の組のもんが尻拭いしたと知ったら上はどう思うやろな。

 わざわざ女名で呼んでまで隠してたあんたの性癖も皆にばれてしまうで?

 それになあ。あんたと癒着してる警官の名前は割れとんねん。組同士の抗争は避けるけど、腐れ警官の悪行を雑誌に売るくらいは、こっちにとっては屁でもないんや。

 よう考えてみい。悪い条件ちゃう思うけどなあ」


 いけしゃあしゃあと話す九鬼を、木場が殺意のこもった目で睨んでいる。


「ああ、それとな。言い忘れとったわ。

 俺と歩はずっと前から両思いなんや。金と権力にもの言わせて、愛する二人を引き裂くてなことは愚の骨頂やで? 木場さん」 


「ほんまか? 歩」

 横目で鳴砂を見下す。

 どう答えればいいのか分からず気まずそうにしていると、代わりに九鬼が答えた。


「ほれみてみい、照れてるやんけ。もう数え切れんくらい愛し合うてるねん俺達。あんたより俺の方がずっと体力あるし、満足してくれてるで」


「ひっ……」

 あまりにも突拍子も無い展開に、しゃっくりが出だした。鳴砂は口元を両手で押さえる。


 木場はゆっくりとソファーに歩き、背中から倒れこむように腰を下ろした。大きく息を吐き、灰皿に置いていた煙草を吸いつける。


「アホらしい……ガキの遊びには付き合うてられへん」

 呆れたように吐き捨てる。


「さっさと鍵置いて消えろや。目障りじゃ……」

 そう言う男の顔見て、何故か胸元が少しズキリとした。

 どうかその言葉が本心であってくれるようにと祈る。わがままな鳴砂の事を、何よりも大切にしてくれていた時期もあった。

 自分しか知らない男の素顔がよぎる。


「行くぞ」と差し伸べられた掌につかまり、立ち上がる。

 九鬼はコインロッカーの鍵をボストンバックの横に放り投げた。


「九鬼、気ぃ付けえよ。怖いぞ? そのガキを怒らせると。その内、後ろから刺されんようになあ」

 木場が冷笑しながら言う。

「木場さん。モテへん男の忠告なんざ、ひがみにしか聞こえへんで? 惚れたイロに刺されて死んだら本望やんけ」

  

 部屋から出る九鬼に続いて鳴砂も廊下に踏み出す。

 最後に振り返って見たレンズ越しの瞳があまりにも優しく見えて、水気の混ざるしゃっくりを抑えた。 





「嘘やろ……?」

 島田組の事務所を出てから、道路に停めてあった自分の愛車を見て、鳴砂はしゃっくりが止まった。

 駐車してあるというよりは、辛うじて停まりましたという惨状。さっきの轟音の訳を知る。

 シボレーカマロの純白のボディ横一面に、コンクリート壁に擦り付けたようなグ黒い縞模様が入っている。一番ショッキングなのが、フロントバンパーのど真ん中に電柱が食い込んでいること。

 同じ惨劇でも、人の車と自分の車とではこんなにも感じ方が違うのだと教えられた。


「わざとや……。わざとでしょ? これ!」

 悲痛な叫びを九鬼に投げかけると、男は甥によく似た澄ました表情をする。

「左ハンドルは初めてやったからなあ。

 避け切れそうやったけど、もういさぎよく突っ込んどいた……」

「それ、わざとやないですか!」

 

「やいのやいのとうるさいぞ。はよ乗れ」

 こともあろうに九鬼は運転席に乗り込む。

 無いわあ――。

 息を吐いて首を横に振りながら、鳴砂は助手席のドアを開ける。


 



 一時間程フロントの凹んだカマロを走らせた。

 隣でハンドルをにぎる九鬼の姿が、やけに眩しい。運転席を見るだけで、何故か無性にドキドキする。丁寧で慎重な、良い運転だった。 

 夜の一時半。

 石油コンビナートの一角、誰もいない港で車を停める。車体から数メートル先に、黒い波紋をたゆませる漆黒の海面が広がっていた。


「お前、これからどうするんや……」

 ハンドルに両腕を置き、フロントガラスの先を見つめながら九鬼が言う。

「さあ、どうしよ。家無し職無しの上に、金も無くなってしもたし……」

 

「東京……行くんか?」

 どこか気まずそうな小さな声。


「それもええかもしれませんね。東京行って、また一からやり直すのも……。

 ほら、何て言いましたっけ、九鬼さんの従兄弟。マサトさん言うたっけ? 格好良かったなあ、あの人。

 俺、あの人の所に転がり込もかなあ」


「お前アホか! あいつは無類の女好きやねんぞ? 天地がひっくり返っても、あいつが男を好きになるてな事があるかい。チャカで撃ち殺されるで」

「九鬼さんはあの人に嫌われてるから、そう思うだけでしょ? 行ってみんと分からんやないですか」

「行ってみんでも分かるわい。何がええねん! あんな奴……」

 何が言いたいのか分からない九鬼に溜め息を付く。


「俺、年上の男の人が好きやねん。コウイチさ……木場さんもそうやったけど、人の上に立つくらいの権力持ってる男に惹かれる。歳は……出来たら四十過ぎがいいかなあ」

 窓に頭で持たれて、うっとりとしながら聞かれてもいないのに自分の好みのタイプを暴露する。


「俺かてあと十年もしたらそうなるやんけ。

 俺にしといたら、ええんと違うんか……」


 え――?

 鳴砂が身を起こす。

 九鬼はハンドルに置いた腕に頭を乗せて、むこうを向いている。


「九鬼さん……それ。もしかして、告白ですか……?」


「違う。口説いてるだけや」


 どんな顔してそんな事を言っているのだろうと面白くなってきて、九鬼の頭を覗き込む。

 突然身体を引っ張られ、つよく抱き締められたと思ったら唇を奪われた。

「んっ……」

 

 すぐさま隙間から熱い粘膜が滑り込み、口内を掻き混ぜる。

 荒々しく煙草の匂いを擦り付けていく。

 久し振りの感覚に後頭部が痺れる。

 舌を吸われて、混ざり合った唾液が口の端から顎に伝う。 

「っんぁ……んん――」

 性交渉のような生々しいキスに甘い声が漏れ出した。


 徐々に隙間から漏れる息が湿気を帯び、激しさを増す。

 気がつけは、もっと繋がりを求めるように九鬼の頭に両腕を回していた。


「っは……、九鬼、さん……ここでは、まずいですって……誰かに、見られたら……んっ、ぁん――」

 やっと解放された酸欠状態の口で首元をう男に呼びかけるが、返事は無い。それどころか皮膚の薄い部分を甘噛みされて艶っぽい息を漏らし、自分と男の興奮を助長してしまう。

 シャツのボタンを外そうとしてくる九鬼の手を押さえると、その手に指が絡みシートに縫い付けられて、自由を一つ失った。


「言うたはずや。あの時逃げんと、もう俺からは逃げれんようになると」


 わずかに唇が触れる距離で真剣な声がする。

 色気のある低い声に、身体がうずく。


「そんなこと言うて。九鬼さんの方こそ、俺から逃げれんようになっても、知らんねんから……」


 吐息混じりに囁き、男の頬を指でなぞる。

 また唇が繋がる。

 

 全ての不安を忘れて求め合う。


 シートを倒す。

 熱気がこもって窓が曇る。

 車両の間違った使用例。

 

 海沿いに停まる、フロントの潰れた白のカマロが、波よりも激しく車体を揺らした。

  

 ふぅε-(´ωノ|┬

 長くなりそうだったのとキリが良かったので、二話に割らせて頂きました。一日に二度も更新してしまってごめんなさい┏○ペコ 来週からは仕事復帰で余裕が無くなってしまうので、何とか土曜に完結させます。

 

 急ピッチで山越えしまして……いいのだろうか、こんなんで……(´-∀-`;)

 せめてくだらない後書は省略して、執筆に励みます♪

 ではではm(_ _)m

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