表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編

密室 男と女 回るベッド

作者: kayako

 

 その白い液体を吐き出してしまった私に、上から目線で男は言った。


「初めてってわけじゃないんだろ?

 ちゃんと飲みな。ためらっちゃ駄目だ、一気にゴクンとね?」


 ベッドの上で、男と女、二人きり。

 厳重に施錠されたこの部屋は完全に密室。私に逃げ場はない。


 涙目になって、白い液体をもう一度なんとか飲み干す。

 べとべとになった口を拭いながら、私は必死にベッドにしがみついた。

 彼がスイッチを入れると、無防備になった身体が回りだす。

 回転するベッドの上で――

 私の身体はいいように弄ばれる。

 でも、決して抵抗は出来ない。出来るはずがない。


 締め切られた部屋に、無機質に響くカメラの音。

 ベッドでなすがままにされる私が、撮影されている。

 男の乱暴な声が轟く。


「ほら、次は右……左! 力を抜いて、息を吸って……

 よし、いい感じだ……そのまま止まって、息吐いて。

 次、左。もうちょっと左!」


 胃からせりあがるものを必死でこらえながら、私は男のなすがままになるしかない。

 何をされようが、この場ではわずかな抵抗すら許されない。


 回る。

 回される。

 また回る。

 また回される。

 しまいにはどこからか伸びてきた固い腕に、思いきり腹を抉られた。

 こみあげるものを強引にこらえ、私は涙と共に歯ぎしりしてベッドにしがみつく。

 何故。一体どうして、私がこんな目に。

 あまりの理不尽に、怒りがつきあがってくる――!







「はい、検査終了。

 すぐにたくさん水を飲んでくださいよ。下剤渡しとくからね」


 畜生が。

 ゲップと一緒に暴言を吐きそうになりながら、私は担当の検査技師を恨みがましく見上げる。

 ねぇ、このバリウム検査ってマジ理不尽なんだけど。

 バリウムと一緒にあんだけ炭酸飲まされて、ゲップを我慢しろだなんて、出来るわけないじゃない。一度飲むタイミングミスって、口の中で炭酸が膨れて吐き出しちゃったし。

 その上ゲップ我慢しながらベッドが回転して、技師の指示で自分も回れだなんて。

 撮影中も右だの左だの、うるさく指示しやがって。

 あと、最後あたりで私の腹思いきり押してきたアレ、何? ゲップを出せって言われてるようなもんじゃん。腹あれだけ押されてまだゲップ我慢しなきゃなんないの?

 あー、うざい。早くスキャン一回で健診全部終わるような技術が開発されないものか。


 せめて、バリウム検査の担当者は男か女か選ばせろってんだ。あんな上から目線で圧かけてくる奴はもう嫌。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] うーん、上手いです! 私はまだバリウム経験した事ないのですが この作品のおかげでなんとなくイメージが出来ました。笑 登場人物良いキャラしてます☆
[一言] ( *´艸`)( *´艸`) 途中から分かりましたが… 『あんな上から目線で圧かけてくる奴はもう嫌。』 この最後の一言に盛大に拍手を贈りたいです(#^.^#) これが書けるkayok…
[一言] バリウムいつも涙目になりながらやってる……。 毎回女性なんだけど、なんでだろ? 男に一度も当たったことない。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ