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とりとめのないこと 抜粋  作者: 汪海妹
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中国を感じてください(笑)












   中国を感じてください(笑)

   2021.11.11











   

 今年、約10年間一緒に働いてきた部下が辞めた。後任が来て引き継ぎをした。既に部下は別の会社の人となった。そんなある日、新しい部下に言われる。


「この原価計算の加工単価、どうしてこういう計算方法をしているのかわからない」

「私もわかりません」


 財務でずっと働いています。でも、専門は会計でもなんでもない。入社時は簿記の三級を独学したレベル。税務申告も原価計算も記帳も、実務は中国人スタッフがしている。私はそれを見て大体理解をしているけれど、原価計算はわからないのです。

 これは本来ならこうでああでとつらつら中国語で説明される。いや、わかりません。やったことも勉強したこともない。それをそんなスピードで中国語で説明されても。


 つまりは前任者に連絡とってくれって話なんですが、どうやら業務処理のポイントが二人ずれてるらしく、ソリが合わないようなのです。この前、電話して、まるであなたのやり方が間違ってるから今苦労しているではないけれど、それに近いことを言ったようなのです。直接連絡を取るのを嫌がるようになった。


 私が間に入って連絡して話を聞いても、お使いアリのようになるのがわかっていつつも、しょうがなくチャットで連絡する。


「お久しぶり。忙しいとこすみませんが、加工単価って誰が決めてんの?」


 しばらく経つと訥々と返事が返ってきた。その後に、私が相手だと(私がわからないので)説明に時間がかかるから直接連絡させろと来た。そんなのはこちとらわかってる。わかってるけど、君たちがけんけんがくがくなので、私がお使いアリさんになってんだい!と思いつつ耐える。


「じゃ、彼女から直接連絡させるよ」

「いや、説明はもう上で済ましたからそれ転送してください」


 あら、こんな簡単な説明でわかるの?半信半疑。しかし、スクショして転送。


「あ、わかりました」


 わかるんかーい!

 絶句している私の横で、ああでもないこうでもないとぶつぶつ計算方法について独り言を言う新人。

 こんなちょっとの説明でわかるんなら、直接聞けよっ!つーか、新しい部下も古い部下もさ、コミュニケーション!コミュニケーション力つけなさい!


 何が悲しゅうて、(一応)上司なのに、部下の原価計算がわからないというシチュエーションで、あなた相手だと説明に手間がかかるとストレートに言われ、お使いアリのようなことせなあかんねん。


 10年一緒に働いた部下はね、ほんと、頭のいい子でした。それで、頭のいい人の欠点というか、そこまでできない人の気持ちを汲めない。時々、キッツイ一言を周りに発してしまうんです。なんでわかんないの?という気持ちを込めて。


 本当にわかってないんですね。自分は頭の回転が早いからパッと理解する。だから、周りへの説明も早すぎるんです。それだと周りの人には足りないと気づけない。


 それで、自部門の他の子や他部門の子とたまにぶつかってたなぁ。同じ課の人とお互い口をきかなくなってしまって、間に立たされたのも、私。


 懐かしく思い出す。

 でも、徐々に自分にそういう欠点があると気づき始めて、少し気をつけるようになった。彼女なりに悩んだり落ち込んだりしているのを横で見ていました。話を聞きながら時々励まして。


 欠点というのは誰にでもある。その欠点で失敗をしないように気をつけるべき。

 だけど、なかなか性格というか癖というのは直らないものです。

 だからね、仕事にはもう一つソリューションがあるんです。ちゃんと。


 欠点の違うもの同士が、お互いの長所と短所を認め合い、相手の欠点を補い合いながら働くんです。


 彼女の欠点は、頭のいい人ならではのキツさでした。私は長所でもあり同時に短所でもあるのですが、どんなにひどい態度を取られても寛容です。我慢強い。相手を簡単に否定しません。


「○○さん(本名)なら、はっきり言っても平気だしわかってくれるから、仕事が速く進むし楽なのに」


 人はみんなプライドを持っている。そのプライドをくすぐり、やる気を出させるのが私はうまいのです。みんなは私と話していると、自分ができる人間になったと思えて気持ちがいいのです。そして、私抜きで直接やり取りすると喧嘩する。それで、私を間に持ってこようとする。


 困ったものです。


 喧嘩の間に立ちながら、それぞれの言い分をゆっくりゆっくり聞きながら、少しだけ相手の立場になって考えられるようなヒントをそれぞれに話してきかせてきた。考え方が少しずつ変わって、そのうち、私を抜いても喧嘩をしないようになって協力できるようになった。


 ああ、成長したなと思った瞬間がありました。

 みんな、ちょっと成長したなと。


 それは、ささやかな、でも、確かな充実感でした。


 会社の中で大きなことをしたわけではない。でも、仕事を通じてカタツムリのように私も確かに成長しました。

 そんなことで成長かという人もきっといるでしょう。


 だけど、小さなことにだって意味はあるんです。そういうことを大切にしたいし、他の人にも大切にしてもらいたい。

 なぜかといえば、人を更に成長させ、そして、その人の持つ能力を十二分に発揮させるためには、達成感が必要だからです。

 小さな達成感の積み重ねが徐々に大きなことへの挑戦する力となっていく。

 常に育て続けなければ、大袈裟にいえば未来はないと考えながら生きています。


 目標管理という取り組みはきっと色々な会社であると思うのですが、そこで大事なのはやはり上司の評価ではないかと思います。

 点数をつけろと言っているわけではない。褒めるときの表現力、そして反省を促すときの、これも、表現力。

 どうすればやる気や元気が出るのか、そして、どうすれば自分が悪かったと反省し、次はしないようになるのか。


 偉そうに言っている自分の課題は、反省を促させること。よくも悪くも優しい私は、下になかなか厳しくできないのです。

 褒めるのがうまい人は、叱るのが苦手なのかな?

 課題はつきません。


 人とのコミュニケーションに問題を抱えて、今でいうところのコミュ障といってもいいのではないかというくらいだった自分が、今は会社で働いている。本当の自分は繊細で人の心が見えすぎる人間で、だから、会社で働くのなんて無理だし働きたくないと思ってる。

 思ってはいるのですが、だけど、イヤイヤながらも部下を持ち、上司と部下の間で働きながら自分にはとてもできないと思っていたようなことが自分にできたとき、自分は変われたなと思う。


 そういうことが人には必要なのだと思ってます。

 私のような人間が、人数が少ないとはいえ人の上に立ち働くのは、非常に苦しい。

 でも、昔の惨めな自分を変えたくて、ずっと努力してきた結果です。苦しみながらも、前には進んでいる。

 それでいいのだと。周りと比べる必要はない。

 

 自分が自分で思ってたよりも自分は強かったなと。そして、きっと今から未来に向けてもっと強くなるのだと思う。

 自分で自分を好きでいたい。頑張っている自分が、やはり自分は好きなのです。それは私だけではないと思ってます。


 人から見たら小さなことでもいい。何かに頑張って、そして、到達して、自分を好きになる人が一人でも多くいたらいいなと今日も思っています。

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