象は忘れない
象は忘れない
2022.11.18
このタイトルは実は、アガサクリスティによるミスマープルの登場する小説のタイトルだったと思います。象とはなんなのか?詳細を忘れてしまいました。ただ、最近ぼんやりと昨年から今に至る出来事を思い返すたびに妙にこのタイトルが思い出されて、それで、採用しました。
何が忘れない、かというと、昨年、社内の利権争いのようなものに巻き込まれて、自分は財務なものですから会社の財産を守らなければならないですね、とあるパスワードとアクセス権限を迫られて、本社から預かっているものだから渡せないと言った。その時に激昂した相手に日本人として口の利き方がなってないと怒鳴られたのです。ショックだったのは、怒鳴られたことではなくその現場に日本人の上司がいたのに、その態度や一方的に行おうとしていること、それを許容したことです。
直属の上司ではなく別の日本人の人にこういうことがあってと相談をした。これは問題だなというようなコメントがあり、その後、緩やかにではありますが、その激昂した社員に対して裏でなんらかの指導はあったのかもしれません。去年ほどの激突はなくなりました。もともと、向かって来られるからこちらも応じるので激突するだけ。こちらから意味もなく向かっていくことはありません。
でもね、もう遅かったですね。
日本人として口の利き方がなってないと言われてそれが問題にならなかった時点で、私の許容範囲は超えてました。この会社を辞めようと思って、それから、何度も何度も冷静に考え直してみた。やはり辞めようと。
ここでね、象は忘れない、という言葉を思い浮かべるのです。
あれは忘れられない出来事でした。あれを忘れて膝を折ってまで、そんな風に媚びてまで、ここで働きたくない。既に一年以上経っているけれど許せない。一つ一つのことにいちいち文句を言う人間ではありませんが、私はプライドの高い人間です。プライドとお金ならプライドを取る。今の仕事は土砂降りの中で泥の中に札束落とされて、それを拾えと言われているような気分になります。
ただね、昔はこうではなかったのですよ。みんなが愛する働きやすい工場でした。そのことに対する恩を忘れて、会社の悪口を言ってはならないなと思います。私の前任者の日本人の女の子は、新人である私が外部の人間の目で会社の問題点を指摘すると、怒りました。
あの場面を懐かしく思い出す。
新人はいわばまだ外の人間、その人間が悪口を言うことに対して怒る人がいる。そのくらい彼女は会社を愛していたんですね。
どうしてあんなに働きやすかった会社がこんなことになっちゃったんだろうと、それを思うと残念でならないのです。
仕事はできるけど、口が立つだけに生意気な私のような人に対しても、皆さんすごく親切でした。日本人、中国人関係なく、会社が好きな子がたくさんいる、いい工場だったのに。
生意気なことを言って上司に怒られたあの日が懐かしい。
ひどいことは確かにあった。だけどいいこともありました。
私はですね、会社を愛するようなタイプの人間ではありません。私は物質的なものよりも人の精神性を大切にしたい人間ですから、組織というものには懐疑的なのです。ただ、私が愛すると言えば、人。
人、人、人、会社というのは結局、人の集まりなんです。
この会社はみんなのものです。私だけのものではない。だから、悪く言ってはいけない。一つの側面を取り上げてつらつらと悪く言ってはいけない。この現在の状態は一過性のもので、いつか良くなるようにと願います。
そんな綺麗事では世の中渡っていけないとローカルの子に言われたことがある。確かにね。
この会社も積極的にこういったパワハラ的な問題を放置したいような会社でもないと思ってます。ただ、方法論を持っていない。21世紀は体系。会社は体系が重要だと骨身に染みて思う。それがですね、秦の始皇帝の時代では法であったのではないかと。
人と人はほっておけば争うものです。
盤を任されたプレーヤーは駒と駒をぶつからせてはならない。もしも、その二つの駒がどちらも必要なのであれば、です。駒と駒がぶつかり合うのをただ手を出さずに高みの見物をすれば、どちらかの駒が弾き飛ばされて盤からいなくなるのは必至です。
その程度の予測もできない人にプレイヤーを任せてはならないでしょう。
社員に長く働いてもらいたかったら、一生懸命給料を上げればいいか?それはそうなんでしょうけど、お金だけでもないでしょう。人の尊厳を傷つけるような言動や行動は、会社にとって一円の得にもならない。待遇がどうこう以前に、安心して働ける環境を真剣に作るべきです。
利益さえ上がっていれば、その中で働く人の心と体の健康が保たれなくても平気なのですか?
こういうことに対する軽視には心底嫌気が指します。お金を与えれば人を過労死するほどこきつかっても構わない。
現代の日本には、こういう貧しさの側面もあるのだとわかってほしい。
私たちには変えなければならない思考と習慣が確かにあります。
汪海妹